メニュートレンド:「つけカルボナーラ」 パスタを差別化してキラーメニューに

2014.09.01 426号 27面
つけソースの具は玉ネギとベーコン、エダムパウダーチーズと黒コショウを混ぜ、万能ネギをトッピング。麺にはエダムチーズ、白ごまを絡め、糸唐辛子をアクセントに

つけソースの具は玉ネギとベーコン、エダムパウダーチーズと黒コショウを混ぜ、万能ネギをトッピング。麺にはエダムチーズ、白ごまを絡め、糸唐辛子をアクセントに

JR常磐線・地下鉄千代田線・日比谷線の北千住駅から徒歩3分という立地。駅前大通りから1本横道に入った飲食店が並ぶ通りにある

JR常磐線・地下鉄千代田線・日比谷線の北千住駅から徒歩3分という立地。駅前大通りから1本横道に入った飲食店が並ぶ通りにある

 「オステリア ヨシ」の露木慶典店長は、ピザやパスタを提供するイタリアン居酒屋、今でいうところの「バル」の店長を10年務めた後、2009年、29歳で独立。店長と厨房を10年間任されてきた経験から、自分の店も当然、はやるものと予測して開業したものの、結果は惨憺たるものに。「世の中、これだけイタリア料理の店があるわけですから、ただ“おいしい”というだけのパスタではウリにはならないと気が付いたんです。他店にはないもっと他の要素がないとお客さんは来てくれません」とメニュー開発に挑んだ結果、誕生したのが「つけカルボナーラ」だ。

 ●飲んだ後の締めのパスタを狙う この店でしか食べられないメニューは強い

 前の店の売上げを知っていた露木店長は、自分の店を開くにあたり、来客数や客単価を予測して、売上げの見込み額を計算した。「かなり控えめに見積もって、現実的な数字を出したつもりだった」が現実は厳しく、売上げは予想の半分以下。売上げを上げるために、ワイン飲み放題のキャンペーンをしたり、営業時間を変えたりもしたが、焦れば焦るほど空回りしていった。

 悪戦苦闘する中で、露木店長は「どこの店でも食べられるようなメニューを出していては、お客さんは他の店に行ってしまう。うちの店のオリジナルメニューが必要だ」と、いわば店作りの原点に立ち返った。「○○が食べたいからあの店に行こう、この店にきたら必ず○○を食べる……というメニューを持っている飲食店は強いですよね」とメニュー作りが始まった。

 着想のスタートは、締めのラーメンからヒントを得た“締めのパスタ”。「うちの店で飲んだ後、締めのラーメン感覚で食べられるパスタを作ろうと考えました」と露木店長。ラーメンのような汁物系をパスタで作ることを考えて、まず思いついたのが「スープパスタ」。イタリア料理のだし汁の「ブロード」を鶏がら、豚骨、野菜などで作り、野菜のブロードを使ったミネストローネのスープパスタをメニュー化した。ところが「思っていたほど注文が出なかった」ことから、次のメニュー開発に取り組むことに。

 「日本人がイメージするパスタといえばナポリタン、ミートソース、そしてカルボナーラの3種が一般的」と考え、この3種のパスタの王道からオリジナルメニューを模索しているときに、偶然、品質のいい鶏卵と出合いカルボナーラを選択。「パスタがスープに浸っているスープパスタだと重くなるのでは」と思案していたときに、ひらめいたのが「つけパスタ」。これならカルボナーラの濃厚なスープでもしつこくない。さらに、スープパスタは他にもあるが、「つけパスタ」なら差別化をアピールできる。

 苦心したのが、つけ用のソースに「カルボナーラ感」を出すこと。卵を2個にしたり、卵黄だけにしてみたが、卵が勝ち過ぎて味のバランスが悪い。試行錯誤を繰り返した結果、現在の全卵1個を鶏がらスープでのばし、生クリームでまろやかさととろみを出したソースにたどり着いた。

 残ったソースは、つけ麺のスープ割りに倣い、鶏がらスープで割って飲み干すことができるのもメニューのウリ。締めのラーメンならぬ“締めのパスタ”として、着々と浸透しつつある。

 ●店舗情報

 「オステリア ヨシ」 /所在地=東京都足立区千住3-35-1、電話03・3881・8929/開業=2009年10月/営業時間=午前11時~午後4時、6時~翌午前0時、無休/坪数・席数=15坪・24席/客単価=昼1000円、夜2700円/1日の平均来客数=昼約20人、夜約30人

 ●愛用資材・食材

 「めいらく エダムパウダー1kg」 スジャータ めいらくグループ(愛知県名古屋市天白区)

 オランダ産エダムチーズを100%使用。程よい塩分とコクがあり、パスタ、グラタン、焼き菓子などさまざまな用途に使える。「香りが引き立っている点が気に入っています。ソースに混ぜるだけではなく、パスタに絡めることで、お客さんがチーズの香りと味をより一層楽しめるようにしています」。

 規格=1kg

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