関西版:シンワオックス、食の総合企業としてグローバルな展開へ
大阪で大人の夜遊び場所の代名詞にもなっている新地から、歩いて程よい距離に8月末、「オーセンティックモダン」をコンセプトにデザインした堂島ホテルがリニューアルオープンした。重厚な外観を生かしながら、内装を大がかりに改装。「時代を経て磨かれ選び出された現代性」をコンセプトに、目を引くデザインの「THE DINER」が、通行客の足をエントランスに誘う大阪の新しい導線を作り出している。
このホテルの仕掛け人が、大阪の外食企業で今、気になる動きをしているシンワオックス(株)だ。「篭もり」をコンセプトに、こだわりの播州百日どりで「創作鶏料理」を提供する「地鶏ごちそう処 とりひめ」をはじめ、セレブ感の漂うジャパニーズダイニング「本町蔵人」「銀座蔵人」といった和・洋・中など直営18業態58店舗を運営していたオックスと、畜肉を中心とした食品卸業のシンワがこの8月に合併。消費者の顔が直接見えない食材卸側の不満と、多業態展開で消費者のニーズをつかみながら多品種少量の食材調達効率化が課題だったオックスで、相互補完できると考えた。“食”を取り巻くさまざまなチャンネルが増え、今後もグローバルに展開していくことが狙い。
フードサービス・ホテル事業本部を取り仕切る代表取締役副社長の今田輝幸氏は「合併した後も店舗運営における基本姿勢は変わらない」と語る。調理人を経て、不動産、インテリアの設計業に携わり、カラオケ店などの運営をしてきた今田氏にとって、外食店とは「立地特性からマーケットを掘り起こすこと」が焦点。「消費者感覚を敏感にとらえ、マーケットに受け入れられなければ存続は難しい」としている。
この今田氏の信念を証明したのが「本町蔵人」。大阪のオフィス街に立地し、ビルの1階と地下1階に300席あり、フロアごとに使い分けることができるジャパニーズダイニング。土・日に人の流れがなく、サラリーマン商圏で大衆的ではない出店計画を見て、今田氏の周りは誰も賛成しなかった。だが、オープン3年を超えても激戦区の中でこの店は好調な業績。同社の外食業態の中で最もハイレベルな店舗として君臨し、現在は東京の銀座と大阪のヒルトンプラザウエストに「銀座蔵人」が加わった。昼は4000円のコースを中心に主婦層、夜は接待・デート仕様で1万円ほどの客単価となった。
「情報があふれ、消費者ニーズも多様化し、おいしいことは当たり前の時代。外食の成功はニーズと人材、これに尽きる」。外食産業では今深刻な人材不足となっているが、同社ではさほど問題視していない。「繁盛店をたくさん持ち、発信し続けることが人材を集める原理原則。仕事に対する価値観が変わってもさまざまなステージがあり、確実にステップアップできるシステムがあれば人材は育つ」。また「一番輝けるフィールドで仕事をすることがモチベーションを保つ最大の秘訣」と付け加える。
「中国本土など、アジア地区での事業拡大、また、商社機能の確立など、これからも挑戦したい事業はたくさんある」と今田氏。「“食”にまつわる総合企業として成長し、消費者ニーズに応え続けることが、お客さまも従業員もハッピーにできる」と信じ、さらなる発展を目指している。