飲食店成功の知恵(22)開店編 内装業者との契約

1993.05.17 28号 5面

《複数業者から合い見積り》 内装業者との契約に当たっては、まず工事見積書を取るが、これは最低三社、複数の業者に依頼して合い見積りを取るのが原則。こうすれば、開業が初めての素人であっても、ある程度まで客観的な比較、判断を下せるからである。

ただし、問題はこの見積書の内容だ。各項目を正確に記述、計算して出してくる良心的な業者ばかりではない、ということをあらかじめ知っておいてほしいのだ。したがって、単に総額の比較だけで発注してはいけない。

例えば、三社に依頼して三通りの見積書を取ったとする。この時最も注意してチェックしなければならないのは、それぞれの項目ごとの数量や種類、型式などについての見積り金額なのである。総額は一番安くても、ある項目が欠けているとか、他の二社にはない項目の記載があったりするのが普通で、単純に横並びで比較することはできない。必要なことは分かっていても、わざと見積りに載せないでおいて、受注後になってから追加、追加という「テクニック」を使う業者も少なくはない。そしてこの場合、大抵は結果的に総額が高めになってしまう。

また、材料の種類が明記されていなかったり、個々の数量を書かずに〇〇一式などと書いてくることもままある。

もともと仕事に対する姿勢がいい加減な業者もいれば、仕事が欲しいがために安めにして出す業者もいる。対策はまず、個々の項目についていちいち説明を求めることで、不審な点、理解できない点があれば、納得できるまでしつこく質問することだ。

そしてさらに、壁紙やイス、テーブル、厨房機器などの見本、あるいはカタログを見せてもらい、メートル当たりの単価、定価、卸価格、そして値引き率について、きちんと説明してもらう。買い叩くような態度で交渉してはいろいろと弊害が出るが、適正範囲内での値引きは一種の慣例、ということを知っておいてソンはない。むしろ良心的な業者なら、その熱意に対して好感をもってくれるはずである。

もう一つ、合い見積りを取る際で大事なことは、図面は一つに決めるということだ。つまり、同じ図面をもとに複数の業者から見積りを取るわけだ。最初、何社かの担当者と面談したとき、一番内容がいいと判断した業者に引かせるか、できれば専門の設計士に依頼するといい。図面がマチマチでは見積りの中身を正確に比較できないからだ。

また、図面を引いてもらう時は必ず、単に平面図だけでなく、絵柄にして描いたものを添えてもらうこと。キチンとしたカラーパースだとそれだけで何万円もかかるから、モノクロのフリーハンドのイラストでいい。図面を見慣れていないと、自分のイメージがちゃんと具体化されているかどうかを判断するのが難しい。

《3回目の支払い時に確認を》 契約とはおカネの支払いの約束事である。したがって、シビアな態度で臨まなくてはいけない。こちらが甘い姿勢なのに、業者を云々するのは筋違いというものだ。

注意するポイントは、支払い方法と引き渡し期日、そして材料や備品等の追加は絶対に認めない、という三点だ。

工事代金の支払い方法は、契約時、工事中途期、引き渡し時と三回に分けて、三分の一ずつ支払うのが一般的だが、最後の三分の一については、やり直し工事も含めて本当に工事が完了した時点で支払う、と明記しておくといい。払ってしまうと、やり直し工事もアテにならなくなる。追加を認めない旨(業者負担は別)、引き渡し日からの遅れについてのペナルティー(一日当たりの金額)も契約書に明記しておくと、トラブルを防げる。

フードコンサルタントグループ

チーフコンサルタント 宇井 義行

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