「聞いて効いて」カレー再発見フォーラム、脳への影響

2000.06.10 57号 15面

東洋医学の観点からカレーをとらえると、カレーと漢方薬には共通している点が多い。カレーの身体への有用性について研究を行っている、東京大学医学部生体防御機能学の丁宗鐵助教授は「漢方薬は、生薬(植物・動物・鉱物などの天然物の中で薬効を有するもの)を複数組み合わせて成り立っているが、この漢方薬と、スパイスの集合体ともいえるカレーには、類似した要素が多く見られる」と語る。

「カレーを食べると、脳血流量増加に極めて有効に働く可能性が示唆された。また、体温上昇など身体生理諸機能についても優位性が確認されている(実験は、普段冷え性のほかに病気を持たない健常者六名を被験者とし、材料にはハウス食品の「ジャワカレー」と市販の粥を用いた。どちらも三七℃、一〇〇ミリリットルを噛まずに服用し比較した)。

このほか、カレーによってもたらされる脳血量の増加が、実際に脳の機能にどのような影響を与えるかをとらえる実験も進めている。一例としては、カレー摂取三〇分後に、脳の視覚野における血流が増加し、その結果として、視覚野の機能が高まることが確認されている。また、眼底の血流循環、脳波の変化にも影響を与えることが分かった。

このように東洋医学的に見てもカレーは興味深い食品である。今後、高齢者のQOL(日常生活上の動作)を高めるための食事や病院食としてのカレーの可能性が期待できるのではないかと展望している。しかし、あくまでもカレーは食品。薬効を期待するあまり、カレーばかりを大量に食べ続けるのは本末転倒だ。どんなに優れた食品でも、食べ方を誤れば病気を誘発する原因になる。カレーを食事としておいしく食べることを最優先し、健康機能はその副産物として意識すべきである。

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