ラーメン特集 問題抱えるチェーン 指導不十分など本部への不満山積

1995.04.03 73号 8面

ラーメンが大衆食として定着する過程で、FC(フランチャイズチェーン)の果たした役割は大きい。初期投資を低く抑え、素人でも調理可能なマニュアルを供与、脱サラによる店舗展開を容易にした。ラーメンFCは飲食FCの草分けでもあり、FCの概念を普及させた意味で貢献度は高いといえるだろう。しかし、そんなラーメンFCにも旧態依然としたやり方を改善する機運が高まっている。かねて指摘された問題点への取り組みが活発化、また、改善を目的に新たにチェーンを発足させる動きも目立つ。最近のラーメン業態はどのような問題克服に迫られているのか‐‐。

FC加盟は、素人が新たに店舗を持つための有効手段だ。ところが問題点は多い。オープン時に、ザー(フランチャイズ本部)の指導はあるにせよ、その後の管理体制には不満の声が以前から叫ばれていた。十分な商品開発が行われないことや販売促進のバックアップが少ないこと。また、満足な指導が受けられないことなどだ。これはザーが食材供給一辺倒で自らの利益確保だけに走る姿勢や、保証金、加盟金を稼ぐためだけに、いわゆる開店屋になり下がっているザーが後を絶たないことに端を発する。

例えば、ザーは食材を卸して利益を稼ぎたいためにオープンを加速させるが、物流の整備や商品開発が遅れている事例がある。結果として食材を日持ちさせるため防腐剤を大量に混ぜて品質低下を招いたり、食材の代替措置の頻発で均一な味を崩したりする破目となる。また、開店屋に限っては本部の営業マンにフランチャイジー(加盟店)を募る厳しいノルマが課せられている事例もある。

まともな立地マーケティングもしないまま口でごまかして開店に至らせる悪質なケースもあるという。こうした結末はフランチャイジーが泣き寝入りするか、チェーンを脱退するしかない。

もちろんすべてのチェーンがそうではないが、こうした事例が業態イメージのマイナス要因となっているのは事実である。下調べを十分にしないまま加盟するフランチャイジーにも責任があるといえるだろう。本部に払うロイヤリティー、仕入れのマージンを惜しむあまり勝手に脱退して独自展開を行うジーも後を絶たないが、原価計算のことしか頭になく、サービスやメニューの品質低下でつぶれてしまう店舗も多いという。脱退のパターンも大体決まっている。売れ過ぎて自信過剰となってザーに反抗したり、努力しないまま売れない責任をザーに押しつけたりと、自分勝手このうえないジーは山ほどいる。

ラーメン業態をさらに発展させるためには、ザーとジーの歩み寄りによる協調路線の確立が急務といえよう。とくに最近の外食には低価格志向が定着し、かつてラーメン業態の売り物であった値ごろ感も色あせ始めている。物件も上昇して初期投資が低いとする感触も弱まっている。

大衆の支持と優れた収益面に依存した体質では、今後の展開に支障を来たしかねない。いかにすれば消費者に受けるのか、どのような合理化を図れば利益が生まれるのか、双方が明確な青写真を持って真剣に取り組む時期に差しかかっているといえるだろう。

最近伸びているFCはそうした問題を克服したチェーンに限られているようだ。生麺、もしくはたれ、のいずれかに偏っていた食材供給を改め、生麺、たれ、がらスープにいたるまでのすべてを自社開発し、三位一体となったこだわりの時を供給するチェーンなどだ。

当然自社工場、物流システムを整備し、安定した品質と供給を施している。「とん太」「珍珍珍」「らーめんランド」チェーンなどはその代表例ともいえるだろう。これらの元気のいいチェーンは、別チェーンから独立したものもかなりある。共通する脱退理由は、「本部に負担する部分を差し引けば、さらに消費者に良い味、サービスを還元できる」とした前向きな姿勢に起因する。そのための合理化、商品開発には労をいとわないとする方針だ。

過渡期を迎え新時代へ突入するラーメン業態で、次世代を担いそうな新興チェーンの取り組みが注目されるところだ。未開発な部分が多いだけに、やり方次第ではさらに飛躍する可能性もはらんでいる。

いま、ラーメンチェーンが外食では一番面白い。

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