ワッフルにチキンもあり…「あまじょっぱい」がウケる理由は

「あまじょっぱい」食べ物が人気だ。人気のきっかけになったメニューは、ベルギーワッフルの上にフライドチキンが載っていて、その上からメイプルシロップをかけたもの。「少し甘いワッフルに塩気のあるフライドチキン、さらに甘いメイプルシロップ」という甘、塩、甘の3段重ねだ。メニューに加える飲食店の増加に加えて、家庭でも作るようになり、「ワッフルチキン」で検索すると、その人気ぶりに“キワモノ”ではないことがわかる。

「あまじょっぱい」は世界的な伝統?

そのほかにも「ホイップクリームをのせたハンバーガー」や「チョコソースをかけながら食べるピザ」など、新感覚のメニューを提供する店が続々と増えている。松山市の豚カツ専門店「清まる」では、はやる以前のなんと10年近く前から豚カツがのったパフェを出していた。

抵抗感を持つ人もいるかと思うが、どのメニューも恐る恐る食べてみると案外に「おいしい!」という感想ばかりなのも、あまじょっぱいメニューの強みかもしれない。

メイプルシロップをかける「ワッフルチキン」

おいしいと感じるのは実は理にかなっていて、世界中のどの国においても「あまじょっぱい」味は普遍的なアイドル的な味ともいえる。日本でも、今までたくさんのあまじょっぱい味を味わってきた。ブリの照り焼きや焼き鳥のたれ、すき焼き、納豆のたれ、そばの汁、ウナギのかば焼きなどの和食のほか、ソース類は概して「あまじょっぱい」。それらは海外でも人気で、照り焼き味は「TERIYAKI」と表記される。

甘味においても、みたらし団子、塩キャラメル、塩大福など、甘さに塩分を混ぜたものも人気だ。北海道や新潟では「納豆に砂糖をかけて食べる」人が道・県民の20%前後いるとされ、香川県では、かつおだしの雑煮のもちの中に甘いあんが入っていて、混ぜると「あまじょっぱい」味になる雑煮で正月を祝う。

例えば、アジアの地域で韓国のコチュジャンは、甘辛い味が特徴の定番調味料だし、焼肉のタレもあまじょっぱい。西洋の料理では、乳製品と蜜類は相性が良いので、チーズたっぷりのピザにはちみつをかけて食する。また、ピーナツバターは北米人の生活必需品に違いない。

甘味+塩味は無敵

そもそも糖質と塩分は、そのどちらもなくてはならないものとして、「生命維持のため」に人間は本能で欲している。その本能で欲する甘味と塩味が両方あるのだから、無敵だ。世界中の人がこの味を好むのも無理はない。甘い菓子とポテトチップスを交互に食べると「やめられなくなる」などと言われるのはそのためだ。

また、甘味と塩味を同時に口に入ると、お互いの突出した部分が緩和され、まろやかさとコクが出るので、おいしく感じやすいのだ。

香川の「あん餅雑煮」

甘味と塩味を合わせる手法は調理においても昔から使われている。汁粉に少量の塩を入れると甘さが一層引き立ってあんはおいしくなる。バターコーンは、トウモロコシの甘さにバターの塩分と油脂を加えることで人間が好むバランスになる。

心理的な抵抗を好奇心に変えるには

その一方で、「あまじょっぱい」味に対する“新規参入者”に関して、抵抗感を感じるのはなぜなのか。

人間は、意識や経験から外れたものに対して、脳が拒絶するよう働く。特に食に関しては、体に取り入れるため防御の意識が高い。拒否することでリスクを回避するからだ。しかし、食の本能が貪欲に働いたり、他人が体験して「おいしい」と言っていることで安堵し好奇心が生まれるなど、拒絶から興味へ変わることも多い。

不二家とヤマザキビスケットがコラボした「チップスターチョコレート」

売れる食を作るには、その客が持つ防御をいかに解放することができるかにかかっている。そうして私たちは、食べるメニューの幅を今日まで広げてきたのだ。

例えば、ステーキなどの肉料理とホイップクリームは実は相性が良い。私は子どもの頃から新しい味を作ることが楽しみだったため、実際に試していたのだが(笑)、まろやかになっておいしかった記憶がある。その理屈でいえば、現代のハンバーガーにホイップクリームをのせるメニューは「アリ」なのだ。

新しさを感じるのだが、実は背景には普遍的なものが土台にある、というのが近年のヒット食の共通項の1つといえるだろう。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)