大豆ミートのバリエーションが日本でも拡大 タンパク質ブームが追い風に

その食品やメニューが大衆化しているか、一般家庭に入り込んでいるかなどを見る身近な指標の1つが、コンビニとファストフード店での展開、そして大手食品メーカーの参入だ。前回のコラムで大豆ミートのメリットや課題について書いたが、上記の観点から見ても、市場は確実に広がっているといえるだろう。国内・海外における代替肉(植物由来・培養肉)市場についての調査では、2030年には1兆8723億円に達すると予想された(矢野経済研究所)。牛肉・豚肉・鶏肉に続く「第4の肉」として、今後、定着するのだろうか。今回は、企業参入の視点から見てみる。

前回のコラムはこちら
可能性が広がる大豆ミートの強みは 「使うメリット」の訴求が普及の鍵

巣ごもりでタンパク質に注目

プロテインブームや「国民全員アスリート」(筆者造語)ブームなどによって、タンパク質が注目され、あわせて大豆タンパクにも注目が集まってきた。ベジタリアンではなくても、タンパク質を積極的に摂取したい人にとって、大豆タンパクは利便性が高い。

より多くのタンパク質を定期的に摂取するためには、タンパク質が摂取できる食品の種類が豊富なほうがいい。飽きないようにしたいし、経済的な方がよいというのが一般消費者のニーズだ。さらに、大豆ミートは、食感や味わいは食肉に似ていながら、食べても罪悪感が出にくい。こうしたメンタルの側面からも、消費上昇に拍車をかけていると考えている。加えて震災やコロナなど、巣ごもりの際の助け舟として、より一層人気となってきている。

コンビニ各社も市場参入

大豆ミートを扱う食品は、コンビニでも売り出している。セブンイレブンはプライベートブランド惣菜商品に、大豆ミートを使用したハンバーグやボロネーゼペンネなど4品を投入した。このうち興味深いのは、ハンバーグの2商品の原材料には牛肉も入っている点だ。やはり、日本人が大好きな「肉汁」を出させたほうが売れると判断したのだろう。ミンチタイプに関しては、しっかり味を入れることで「肉汁」は特に求められないため、大豆ミートだけで商品化できている。

セブンプレミアム「大豆ミートと牛肉のハンバーグ トマトチーズソース 185g」

またローソンも大豆ミートを使った唐揚げやおにぎりなど4品をシリーズ化。ファミリーマートでは、そぼろご飯やから揚げなどで展開中だ。同社は、Twitterを通してマーケティング調査を行っており、将来性について模索しているようだ。

食品メーカーも商品を次々と

食品メーカー各社の参入も目立っている。湖池屋がスナック菓子に、エースコックがカップラーメンに、大塚食品が「ZEROMEAT」シリーズに、またマルコメでは、「大豆のお肉」をシリーズ化。素材そのものの商品に加えて、「ダイズラボ」として調理品も販売している。

さらに、伊藤ハムは「まるでお肉」としてこちらもシリーズ化した。プリマハムもマルコメとの提携で「Try Veggie」シリーズを出している。すなわち、食肉の専門メーカーが「食肉ではない」商品を打ち出す時代になったのだ。そのほか味の素も大豆ミートを開発するスタートアップ企業「DAIZ」に資本参加している。

大豆ミートを使った商品が広がっている

参考記事:
似たモノ商品徹底比較:進化する代替肉食品 継続には“おいしさ”重要 – 日本食糧新聞電子版

ハンバーガーのバリエーションも広がる

最も大豆ミートを一般的に使いやすいメニューは、ハンバーガー形状だろう。なぜなら、パンやソース、野菜類など大豆ミート以外の具材が口の中に同時に入るため、大豆特有の匂いなどは気にならなくなる利点がある。さらにバーグ型によって、冷凍保存も可能で製造工程にも有利に働く。もちろん、大衆に愛されるメニューであることも前提だ。

ファストフードの各店でも、ハンバーガーに見立てた大豆ミート利用が増えている。フレッシュネスバーガーやモスバーガー、ドトールでメニューを見つけることができた。また、米国マクドナルドが自社製造の大豆ミート使用のバーガーを「マックプラント」として2021年に発売すると発表したため、ますます市場が広がることが予測できる。

ハンバーガーに見立てた大豆ミート利用が増えている

参考記事:
話題の植物肉バーガー4品を比較検証 さらに増す代替肉の社会的価値 – 日本食糧新聞電子版

日常に大豆食品がある日本

日本の大豆ミート市場はこのまま右肩上がりになるのだろうか。そもそも日本では、大豆食品を長年食べてきた。宗教上の問題などの絡みではなく、また諸外国の考えるベジタリアンの感覚とも異なり、家庭の日常に納豆に豆腐、油揚げなど常に大豆食品があった。

さらに大豆ミートが注目される背景の1つとして環境問題もあるわけだが、日本の場合、環境に対しての国民意識が決して高いとはいいがたいのではないかと筆者は感じている。そのため、今はまだ大豆ミートに新しさを感じて話題性があるが、今後見慣れてきたときにどうなるかが鍵だろう。一方で、食肉が主体の他国に比べて劇的な変化はないものの、自然な形で選択肢の1つとして外食や家庭に浸透する可能性もある。

食糧難が深刻化し、大豆ミート使用が志向の1つで選択されるのではなく、必然として食べざるを得ない地球にならないよう、われわれが食生活を見直すことも必要だと感じている。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)