冷え体質から卒業してコロナも予防 管理栄養士が注目する「温活」食品

今年も引き続き新型コロナ対策や予防に注意する1年になるだろう。「免疫力アップ」、「ヘルシー食材」などが注目を集め、老若男女問わず自分の健康を保つために、日々の食生活の重要性を認識することが当たり前になってきている。さらに、寒さが本格的になる時期にはなんとなく疲れやすくなったり、体調不良が続く人が増えてくる。このような真冬の体調不良の原因の一つは、低い気温による「体の冷え」だ。「冷えは体質だから」と気にしない人も多いが、昔から「冷えは万病のもと」といわれる。

「冷え性」を侮るなかれ 低体温で免疫機能が下がると…

ガン、脳血管疾患、心疾患など生活習慣病のリスクを上げたり、感染症にかかりやすくなるなど、多くの病気の根源に「冷え」があるのではないかとも考えられ始めた。実際に、冬は脳卒中が増える時期でもある。「冷え体質」から卒業し、寒い季節を元気に乗り越えるための食生活のポイントや、外からの予防だけでなく、内側から体を温める食品や食材を紹介し、今後も続く感染症対策の食習慣のヒントにしてもらいたい。

私たちの体には体温を一定に保つ仕組みがある。気温が下がり体の熱が奪われ始めると、体温を保つために末梢の血流を少なくするので手足がひどく冷たいと感じたり、肩こりなどの症状がおこる。さらに、長時間寒い場所にいたり、不規則な食生活を送っていると、徐々に体内の中心温度が下がる低体温症になることもある。そのような状態になると、肝臓や腎臓など内臓が冷えてしまい、機能が低下し、糖尿病や動脈硬化につながる。

低体温になると血流が悪くなり、免疫機能を持つ白血球が体の隅々まで届かなくなるので、免疫機能が下がるのだ。免疫力が低下すると、ガン細胞やウイルスを攻撃できなくなる。その結果、ガンや感染症にかかってしまう。

「寒い季節だから、冷えるのは仕方がない」。そんな考えは改めて、冬でもポカポカと体温を維持するための生活に切り替えよう。

ロイシンが多い鶏むね肉とヨーグルト

冷えを防ぐ筋肉づくりに効果的な運動と食品は

低体温になる大きな原因は、筋肉量が少なくなっていることだ。熱は筋肉で産生されるので基礎代謝量が下がり、体温も下がる。コロナ禍で外出が減った今の状況では、これまで以上に運動不足になり、筋肉量が減っている人が多いはずだ。ステイホームで、気づけば低体温になる生活を送っている。

筋肉量を効果的に増やすには、ウォーキング、スクワットなど下半身を鍛える運動がよい。なぜなら、体の筋肉の約70%が下半身にあるからだ。そして運動をする時には、たんぱく質を摂取しよう。なかでも、筋肉づくりに効果的なアミノ酸「ロイシン」の摂取がおすすめだ。ロイシンには筋たんぱく合成の促進を行う効果がある。

ロイシンを多く含む食品は動物性が多く、普通の食事でも摂ることができる。マグロやカツオの赤身、鶏むね肉、牛肉の赤身、卵、ヨーグルトやチーズなど乳製品だ。植物性では、納豆、高野豆腐、きなこなど大豆製品に含まれる。

ヨーグルトと干し柿を混ぜたアレンジおやつ

効果的なロイシンの摂り方は、運動した直後から1時間以内だ。筋力トレーニング後45分以内にロイシンを摂取すると、筋肉量が増えたという研究結果もあるそうだ。

乳製品はカルシウムも含むので骨も強くできるし、飲み物や間食にも取り入れやすい。特にヨーグルトは、各メーカーが機能性を持たせたり、高たんぱく質、吸収されやすいなど新商品が出ている。ヨーグルトは冷蔵保存が基本だが、運動時に持ち運びしやすい商品などもニーズがあるのではないだろうか。

また、ヨーグルトをおいしく毎日食べるために、アレンジや作り置きのレシピなども活用してみたい。お正月に余った黒豆や干し柿などをヨーグルトに混ぜるのもおすすめだ。ほのかな甘さとヨーグルトの酸味の相性がよくて、おやつにも使える。

参照サイト:
筋肉をつける食べ物  日本介護予防協会

温活食材は、おやつや飲み物のちょい足しや味変に

<生姜>

体の中から温める食材といえば、「生姜」。生姜には体を温めてくれる辛み成分の「ジンゲロール」、「ショーガオール」が含まれる。生の生姜には「ジンゲロール」が多く含まれ、加熱すると「ショウガオール」に変化する。「ジンゲロール」は末梢の血流をよくして、熱を先端まで送るので、手足の冷えが気になる人におすすめだ。

一方「ショウガオール」は、体の中心を温める働きがあるといわれ、普段から体温が低い人は積極的に食べるとよい。生姜は生、チューブ、粉末、乾燥などさまざまな状態で売っているので、用途に合わせて使いこなすといい。

使いやすい粉末の生姜も発売されている

生姜を使ったお手軽ドリンクを紹介したい。生姜の辛みが気になる人や子ども向けには甘さをつけたいが、温活のポイントは「砂糖を避ける」。精製した砂糖は体を冷やすので、甘味は黒砂糖かはちみつを使おう。

・生姜豆乳オーレ
濃いめに入れた紅茶に豆乳を加え、おろし生姜、黒砂糖を入れる。

・ホットジンジャーレモン
お湯におろし生姜、レモン汁、はちみつをお好みで入れる。

どちらも簡単にできるので、食後の一杯や仕事の休憩中に飲んで体を温めてほしい。市販のスティックドリンクに生姜のちょい足しもおすすめだ。

はちみつにスライスした生姜を入れる「はちみつの生姜漬け」を筆者は常備している。そのまま食べても、お湯で割ってホットドリンクでも、料理に使ってもよいので、重宝している。市販のものもあるが、簡単なので一度は手作りしてみたい。

スライス生姜をはちみつに漬けただけ。使いやすさは超一流

<発酵食品>

次に、日本人の食生活に欠かせないのが発酵食品。この発酵食品にも体を温める効果がある。朝、一杯の味噌汁から始めるだけでも温活につながる。具材として使いたいのは、蓮根や人参、ごぼうなどの根菜類、ネギや鶏肉だ。炭水化物やネギ類、鶏肉には体を温める効果がある。

また、チーズやキムチなど日本以外で食べられている発酵食品もよい。キムチとチーズをトッピングしたもちピザは、簡単なのでおやつや小腹がすいた時に作ってみてはどうだろうか。

体温アップの食生活のポイントは、簡単に継続できること。そのためには、常温で持ち運びしやすい、飽きない、手軽などがキーワードになる。低体温の卒業をサポートする食材の形態や味のアレンジなどを改めて見直してみると、ヒット商品のヒントが見えてくるかもしれない。(管理栄養士 大山加奈惠)