旬のエキストラバージンオリーブオイルのイタリアでの楽しみ方は

秋にはフランスワインのボージョレーヌーボーが楽しみという方が日本でも多いはず。ところがイタリアでは、ヌーボー(イタリア語で「ノヴェッロ」)と言えばワインよりもオリーブオイルを指す。毎年秋になると、オーリオ・ノヴェッロが出るのをイタリア人は心待ちにしている。ここ数年、日本でも楽しめるようになったオーリオ・ノヴェッロの魅力について、イタリア在住オリーブオイルソムリエがご紹介する。

搾りたてオリーブオイルの魅力は

意外かもしれないがエキストラバージンオリーブオイルにはワインのように旬がある。なぜなら、他の植物油とは全く違い新鮮なオリーブの実を搾ったものだけを原料にしたフレッシュなオリーブジュースだからである。

イタリアではオリーブの木は初夏に花をつけ、9月から11月にかけて果実がたわわに実る。オリーブの実の収穫で大忙しの季節だ。

絞りたてオーリオ・ノヴェッロ

特に上質といわれるエキストラバージンオリーブオイルは、一つひとつ手摘みして収穫した実を、できるだけ早くフラントイオ(採油所)に運び、コールドプレスとよばれる低温抽出法によって27℃以上にならないように注意しながら作られる。ポリフェノールなどの栄養分やオリーブそのものの風味を生かすためには、収穫から24時間以内に搾ることが大切だといわれるからだ。

一年のうちで、オリーブの実の一番搾りであるエキストラバージンオリーブオイルの出来たてを楽しめる秋。毎年いろんな村や町で、オリーブの収穫を祝いオーリオ・ノヴェッロを楽しむ祭りが開かれる(2020年は新型コロナウイルスの影響で中止)。

ローマ近郊は古代ローマ時代からのオリーブの産地(リエティ県にて)

出来たてを新鮮なうちにおいしく使う

オーリオ・ノヴェッロの特徴は、本当に自然のままのフレッシュジュースであること。通常はオリーブの実や皮のかけらなどの残留物を高性能のフィルターでこすことがほとんだが、オーリオ・ノヴェッロはそれもしていないノンフィルター。

搾りたてのノヴェッロは、緑の色が濃く鮮やかで風味豊か。最近では実が完全に熟して黒くなる前のフレッシュな緑の状態で早摘み収穫するため、さらに鮮度の良さがはっきりと感じられる。

たっぷりのオリーブオイルに浸したパンのブルスケッタ

イタリアでは、オーリオ・ノヴェッロをトーストしただけのシンプルなパンの上にたっぷりかけて食べるのが定番の楽しみ方。ソムリエとしては、パンと一緒だとオイル本来の味が分かりにくいというのが本音だが、いわば収穫を喜ぶ昔からの風習。細かいことはいわず、大勢でおいしく、お腹いっぱい食べるのが醍醐味である。

ただ、微量の残留物が残っている可能性のあるノンフィルターのオイルは保存には適していない。出来たてを新鮮なうちにおいしく使うことをおすすめする。

栄養価が高いオーリオ・ノヴェッロ

オーリオ・ノヴェッロは新鮮な風味が楽しめるだけではなく、栄養価が高いところも大きな魅力。新しいオイルの香りが強く、苦くて少しスパイシーな味わいは、ポリフェノールによるものだ。細胞の老化を防ぐ効果のある貴重な抗酸化作用があると注目されている、オリオカンタールというポリフェノールの一種の特徴である。

世界的にも健康的な食事として高く評される地中海式ダイエットの中心的な食材で有名なエキストラバージンオリーブオイルの健康効果の成分が、ノヴェッロにはたっぷり含まれている。

オリーブの実を粉砕する伝統的な石輪。今では高性能な最新式な機械が使われる

このポリフェノールをはじめとする成分は、熱と光、空気に弱い性質がある。そのため、せっかくの効果を楽しむためには、なるべく生で使うのがポイントだ。前述のように、シンプルにトーストしただけのパンやステーキ、グリルした野菜や魚などの上に、直接たっぷりかけて食べるのがおすすめ。テーブルの上で食べる直前にかけるのはパフォーマンス性があるので、イタリア料理レストランなどでは、簡単に取り入れることができるはずだ。

日本ではオリーブオイルの消費量は年々増加している人気の食材である。ワインと違い、お年寄りから子どもまですべての人が楽しむことができるのが大きな強みである。イタリアからたくさん上質なオーリオ・ノヴェッロが空輸されているので、これからの発展の可能性が大いに期待できる。(フードライター 鈴木奈保子)