パネットーネかパンドーロか…イタリアで人気を二分するクリスマス菓子

イタリア伝統のクリスマス菓子パネットーネは、最近では日本でも人気だ。本場イタリアからの輸入品のほか、日本で製造したパネットーネも好調で、順調に市場が拡大している。一方、本家本元のイタリアでパネットーネといえば、もともとミラノの伝統菓子だ。イタリアの各都市にそれぞれ独自の伝統クリスマス菓子があったが、現在ではパネットーネ、そしてヴェローナの伝統菓子パンドーロがイタリア全土で主流となっている。今回は、イタリアのクリスマスの伝統菓子について紹介する。

お祝いの伝統菓子パネットーネ

本来、キリストの生誕を祝う宗教行事であるクリスマス。カトリックの総本山であるバチカン市国のおひざ元イタリアでは2000年近い歴史のある伝統行事だ。クリスマスイブの24日には家族が大勢で食事をし、真夜中25日0時からの教会のミサに出かけるのが毎年の習わしだ。

翌25日の昼食はキリストの誕生を祝う盛大なもので、食後にはクリスマス限定の特別なお祝いの菓子を食べる、一年の中でも最大級のイベントである。

ミラノの伝統菓子「パネットーネ」

クリスマスの伝統菓子の特徴は、日持ちがするところにある。パネットーネは卵やバターをぜいたくに用いた生地に、レーズンやドライフルーツをたっぷり加え、天然酵母を使って長時間発酵させて作られる。じっくりと発酵させた独特の柔らかい食感と日を追うごとにおいしく変化するドライフルーツの味わいが魅力である。

クリスマスシーズンに家族や友人宅に招かれた時の手土産としても人気で、エピファニアという1月6日の祭日までのバカンスシーズンを通して、ずっとおいしく食べられるのが特徴である。

地方ごとにあるクリスマス菓子

パネットーネは「イタリアの伝統菓子」いわれるが、イタリア人的にはミラノの伝統菓子である。15世紀末、当時のミラノ領主スフォルツァ家のクリスマスの晩餐の時に偶然生まれたといわれている。

だからといって、500年もの間イタリア中でパネットーネだけが食べ続けられてきたわけではなく、それぞれの地方ごとにそれぞれの伝統菓子がある。

たとえば、現在のイタリアでパネットーネと同様に人気のあるパンドーロは15世紀のヴェネツィア共和国が起源ともいわれる。公式には19世紀末のヴェローナで、メレガッティという菓子職人がレシピの特許を取得した記録が残っている。星形をした甘くて柔らかいパンドーロは、すぐに大成功を収めたといわれる。

フィレンツェで有名なトスカーナでは、メディチ家のパンペパートというお菓子をもとにしたパンフォルテや、リッチャレッリというアーモンドと卵白のサクサクしたお菓子がクリスマスの定番である。

トスカーナ地方の「リッチャレッリ」

また、ローマではパンジャッロという古代ローマ帝国に起原を持つともいわれるナッツ類がいっぱい入った伝統的なクリスマス菓子がある。

ウンブリア州出身の年配の友人は、ハチミツとナッツを混ぜ合わせたものを月桂樹の葉で包んだお菓子が子どものころのクリスマスの定番菓子だったと話してくれた。

イタリアのクリスマス菓子として日本ではパネットーネだけ有名だが、郷土愛の強いイタリアには、地方ごとに長く守り続けてきた伝統の味がまだまだ残っているのである。

CMで人気が上昇したパンドーロ

現在のイタリアでパネットーネと並んで、またはそれ以上に人気があるのはパンドーロである。

19世紀末にトリノのサボイア家がイタリア統一を成し遂げたことにより、北イタリアでは産業が発達した。ミラノのパネットーネとともに、パンドーロも大量生産され、イタリア中に広まっていったのである。近年、TVCMを効果的に使用したことも人気が出た要因だろう。イタリア在住20年の筆者も、毎年同じCMの音楽を聴くだけで、クリスマスが近いことを実感させられる。

「パンドーロ」は黄金のパンの意味

クリスマスの期間中、人が集まると「パンドーロ?それともパネットーネ?」という質問が、必ず繰り広げられる。子どもたちに圧倒的に人気なのはパンドーロだ。イタリア語で「黄金のパン」を意味するパンドーロは、上から見ると星形をしていて、まわりは雪のように粉砂糖で覆われていてかわいらしい。

バターと卵をふんだんに使い、シフォンケーキのように軟らかく、よりしっとりしていて、そして甘い。パネットーネのようにドライフルーツが入らないのも人気の理由である。ドライフルーツは好みが分かれるので、最近ではドライフルーツ抜きチョコレート入りなどのアレンジパネットーネも売られるほどである。

クリスマスの特別なお菓子パネットーネはおいしくて日持ちがするので、近年、日本ではイタリア高級ブランドのブルガリをはじめ、ラグジュアリーホテルのベーカリーでも比較的高額で販売されている。パンドーロもパネットーネ同様、日本でも人気が出る要素を多く含んでいると思われる。パンドーロの今後の日本進出が期待される。(フードライター 鈴木奈保子)