米粉などグルテンフリーパスタがイタリアで需要増 ヘルシー派にも人気
1日1回はパスタを食べるイタリア人。ところが、イタリアでも小麦アレルギーの人が増えているという。だからといって、パスタを食べることをやめられないのがイタリア人。各メーカー、グルテンアレルギーでも食べられるグルテンフリーパスタの開発に余念がない。最近では、スーパーや食材店では、かならず従来の小麦原料のパスタの横に、グルテンフリーのパスタも並んでいる。イタリアで人気のグルテンフリーの材料を紹介する。
パスタ大国イタリアで小麦アレルギーが増加
食の国イタリアを代表的する料理と言えば、パスタ。小麦を原料とするパスタはイタリアでは長い歴史があり、小麦にいたっては、今から2000年も前の古代ローマ時代でも主要な食料として、すでに栽培が行われていた。本当に、1日1回はパスタを食べるというのが平均的なイタリア人の食生活である。ところが、最近ではイタリア人の小麦アレルギーが増えているというのである。
ISTAT(イタリア国立統計局)によると、1980年代には人口に対して約2.9%だったのが、現在では約12.7%と約3倍も増加している。その証拠に、現在約58%のレストランがグルテンフリーのメニューを設けており、グルテンフリーの食材は、年間3億2000万ユーロもの売上げがあるという。
出典:La crescita impressionante delle intolleranze e delle allergie alimentari

トウモロコシや豆もパスタに
では、食にこだわりのあるイタリア人が、従来の小麦のパスタに代わって、どんなものを食べているか紹介しよう。
<米粉パスタ>
まず、もっとも人気なのは米粉パスタだという。人気の理由は、コメと同様にデリケートな味わいのため、どんなソースともよく合う点である。また、食感がアルデンテにできるということも大切なポイント。カロリーも従来のパスタと変わらないので、抵抗なく食べられているようだ。
<トウモロコシパスタ>
イタリアの中部以北では、元々トウモロコシは小麦に次いで伝統的な炭水化物である。高価な小麦の代わりに、とうもろこし粉を練っておかゆ状にした「ポレンタ」という料理を食べてきた。トウモロコシパスタは見た目も鮮やかな黄色が特徴。米粉とブレンドしていることも多い。

<豆パスタ>
次いで、人気なのが豆パスタである。インゲン豆やレンズ豆、ひよこ豆にグリーンピースなど、イタリアの食卓に欠かせない豆を原料に作られている。そのため、豆独特の味がしっかりとしている。伝統的な小麦のパスタよりも炭水化物は少なく、タンパク質は豊富とあって、ヘルシー派やベジタリアンなどに人気である。
<キヌアパスタ>
スーパーフードとして人気の高いキヌアを原料にしたパスタ。他のパスタに比べて値段は高いが、その栄養価の高さに定評がある。また、デリケートな味わいなのでいろんなソースと合わせることができる。
<そば粉パスタ>
イタリア北部の山地で、元々食べられていたそば粉のパスタ。小麦アレルギーの代替パスタとして、再評価されている。以前は、日本のそばのように小麦をつなぎにしていたが、アレルギーフリーとして、米粉やトウモロコシ粉とブレンドされている。素朴な味わいが特徴である。
春雨やコンニャクにも注目
イタリアでもグルテンフリーのパスタが増えている背景には、小麦アレルギーの増加だけが原因ではない。アレルギー以外にも、自己免疫疾患の1つでグルテンベースの食事ができないセリアック病や、セリアック病ではないがグルテンに対して敏感な反応を示すグルテン不耐症の人も増えている。アレルギーでなくても、グルテンを消化しにくい体質の人が一定数、存在するのである。
精製した従来の小麦パスタに比べ、豆類やキヌアといったグルテンフリーの食材は、はるかに栄養価が高い。こうしたパスタはオーガニック栽培であることも多い。ベジタリアンやビーガンなど食や原材料にこだわる人々の間で高く支持されている。

グルテンフリーという点で、このほか大豆を原料とした春雨や、日本のコンニャクといったイタリア人にとってエスニックな新しい食材も注目を集めている。
日本でも、小麦アレルギーだけでなくヘルシー志向で食への関心の高い人が増えている。イタリア料理のパスタは日本でも人気であるから、グルテンフリーパスタ市場も、今後どんどん拡大していくことが予想されるので、動向に注目だ。(フードライター 鈴木奈保子)