現代ライフデザイナー考 健康は事実を知ることから

1995.10.10 1号 13面

9月8日、厚生省は9月末日までに満百歳以上になる高齢者は、六三七八人、昨年に比ベ七八五人増でこの調査を始めてから二五年連続で増え続けている、と発表した。

◆百歳以上は10万人に5人余

名簿を初めて公表した一九六三年は一五三人、三〇〇〇人台に達したのが六年前だから百歳を超える人が急ピッチで増え続けていることがわかる。それでも人口一〇万人当りの百歳以上のお年寄りの割合は五・一人であるから、百歳まで生られる確率はかなり低い。

一方、九四年労働省の「労働者健康状況調査報告」では、従業員五〇人以上の企業の労働者一一三一万人の定期健康診断で何らかの異常がある「有所見者」は三四・六%でこちらも年々増え続けている。

有所見者・即病気という訳ではなく、精密検査によって治療が必要かどうか診断されるが、一見健康そうに、見えても徐々に正常値から離れ、放置しておけばいずれ自覚症状がでてくる。

いわゆる成人病といわれる種々の疾患は自覚症がはっきりしてくる段階ではすでに手後れで完全な健康を取り戻すことはむずかしい、とされている。

成人病は別の見方をすれば、老化に伴う必然でもあるが、それでも遺伝的形質と環境の集積で発症年齢が大きく異なることは長く知られている通り。

百歳まで元気で生きられるかどうかは遺伝の要素もきわめて大きいとはいえ、実際に高齢でも元気で活躍しておられる方の長年にわたる生活環境はおよそ成人病が発現しにくいよう要素が揃っているようである。

いずれにしても、遺伝というのは受精の瞬間に決定してしまう訳で自分ではどうにもできない。従って生れてしまったあとはその人の遺伝形質にとって最適な環境を選ぶことが最も合理的な健康づくりである。しかしながら若くて健康である時に自分がどのような遺伝的特質があるか、わかる人はいない。せいぜい自分の両親やその兄弟あるいは祖父母などの状況を見て類推するぐらいしかない。

◆生活環境を最適に保つ

これに対して、主要な環境因子である食事・身体運動・ストレスコントロールなどに関する近年の科学の進歩は著しい。科学というと何やらむずかしそうに思われるが、個人が実行することはそうむずかしいことではない。

食に関しては栄養素のバランスということだけでなく、食物中に含まれる非栄養成分にも体調を良好に保つ色々な成分が発見されている。これらの特殊な機能を有する成分のうち、その効果が実証されたいくつかの加工食品は厚生省より特定保健用食品としてその機能をわかりやすく表示することが認可され、市販され始めた。

運動についても運動処分といった考え方が定着し、一人ひとり年齢、性別、体格、仕事などを考慮した最適運動量が算出できるようになった。運動といっても何もスポーツウェアに着替えてするものだけでなく、通勤途上でのウォーキングなどでもよい。健康を維持するに必要な最小運動量が確保できることが重要なのである。運動不足病では健康な長寿は全く期待できない。

◆運動には抗ストレスの価値が

先の労働省の調査で、「仕事でストレスを感じる」という労働者の割合は五七・三%と以前より増加の傾向にあると発表されている。近年の技術革新により日本人の肉体的労働は大幅に減少し、代って精神緊張を強いられる職種が増加の一途である。抗ストレスという意味でも意図的に何か運動することは価値がある。

ともかくまず自分にとってどんな情報が必要なのか「知りたがり屋」になって欲しいものである。

次号に続く

(フィットネスコンサルタント・山田昌彦)

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