地産地消しよう!地元の食材・食文化を食卓に

2005.12.10 125号 2面

世界各国のおいしいメニュー、優れた食材がいつでも簡単に手に入る今日。一方で私たちは食材の旬や地域の食文化を見失いつつある。そこで、地元でとれたものを地元で消費することから食のあり方について考え直そうという「地産地消」運動が各地で広がっている。「農林水産業から日本を元気にする国民会議」事務局長の慶應義塾大学グローバルセキュリティー研究所・吉田誠氏に聞いた。

「ひと昔前、地産地消は当たり前でした。海辺・山辺・川辺など土地土地の風土や農林水産業にもとづいた食文化が発達し、山一つ越えれば、全く別の味・食習慣がありました。

しかし流通や加工技術がめざましく進歩した昭和50年代から、日本の食文化は全国画一化しつつあります。ファストフードの普及が進めば、世界画一だとの指摘もあります」。

外食・中食の需要が増し、規格化された農産物が歓迎され、いつでもどこでもキュウリやレタスを食べることが当然に。施設栽培や輸入野菜が増え、食料は安定供給できるようになった。結果、日本人の食卓と農業の距離は離れ、伝統食が消えつつある。

また、「もったいない」という考え方も薄れている。「冬でもボイラーを焚いて夏野菜を育てたり、遠隔地から食べ物を輸送することは、エネルギーをとても大量に使い環境にも影響を与えます。このような社会的無駄がどんどんふくれあがっているのです」。

それを示す指標の一つが「フードマイレージ」。「フードマイル」とは、畑から食卓まで食材を運ぶ輸送距離のこと。そして食料輸送が環境に与える影響の大きさが「フードマイレージ」だ。2000年の日本のフードマイレージは、約5000億t・キロメートル。世界1位の無駄遣い大国だ。人口が倍の米国に比べ約3・7倍、1人当たりでは約8倍と試算される。

フードマイレージを小さくする=環境に配慮した生活をするために、私たちができることの第1歩、それが、土地のものを食べることなのだ。

「地産地消が当たり前だった頃には、畑と食卓は近い関係でした。食べる側も、旬や調理・保存法や農の知識を豊富に備えていました。旬の時期に、漬物や干物を作っておくなど、農のサイクルが生活のサイクルと連動していたのです」。

とはいえ現代人の生活は地産地消だけでは成り立たないのが現実。「生産履歴や旬、安全情報など自分の口に入るものに関心を持ちましょう。地元の食情報入手や生産者との交流に取り組みつつ、ほかの土地で穫れたものもバランス良く取り入れていただきたいですね」。

◆イオンの地産地消

地場産の野菜・果物が、生産者の顔写真ともに並ぶ青果コーナー。イオンでは、地元で穫れる優れた野菜・果物を豊富に揃え、地域の活性化、地元のお客様との交流を大切にしている。

◆フードマイレージとは

「人間はなるべく近くで収穫された食料を食べるべき。遠くで穫れたものに頼るほど、輸送に伴う環境汚染を多くする」とイギリスの消費運動家ティム・ラング氏が1994年から提唱し始め、欧米の消費者団体や環境団体から支持されている主張。輸入相手国の輸入数量(t数)に、相手国からの距離を掛け、「トン・キロメートル」単位で表示する。

◆農林水産業から日本を元気にする国民会議

「田園からの産業革命」をスローガンに、日本の社会・経済の再生と活性化のためには農林水産業の再生・復活が必要不可欠として、民主導の具体的プロジェクトを実践し新たな農林水産業を改革する国民運動を推進しているネットワーク。

事務局=慶應義塾大学グローバルセキュリティー研究所 http://www.pastral-gsec.jp

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