21世紀、宅配食サービスの行方(2)

1995.11.10 2号 3面

お昼のお弁当を独居老人宅に届けるボランティア活動が盛んだ。東京・練馬区の給食ボランティアグループ第二コスモスでは、毎週土曜日、地元の小学校の家庭科室を借りて二〇名ほどが集い、献立設定から材料調達・調理・配達を行っている。ボランティアといえば、先日の震災で注目度が高まり、中高齢男女の余暇調査「やってみたいこと」の上位。この給食ボランティアも五〇代主婦が中心だが、最近ではOL・学生・男性の参加も増えている。

今、宅配食業界全体に問われているのが食品の安全性。保健所の検査・講習などクリアすべき項目は多い。「家事歴三〇年のキャリアウーマンとして、この時ばかりは『食のプロ』という意識で厳しく取り組んでいます」と宍戸尚子さん。

昭和58年に活動関始した練馬区の場合、いまやボランティア二六団体、登録ボランティア六九七名、受給者一〇四九名(しかも待機者一八〇名)。独居老人の話し相手、安否曜認など、主婦感覚を活かした活動が実り、いまや区の民生委員の代役を果たすまでになった。さらに区では平成12年までに全希望者への週二回支給実施を目指している。

そもそも地域の老人との友愛活動を目的として始まったこの活動は、調理より配達の部分が大切だ。

しかしボランティア自身の高齢化が進み、配達役の人員不足が問題となっている。若年層の参加を促すために、有償化の声もあるが、行政側には今のところ具体的な動きはない。そこで一役買っているのが、男性と企業のパワー。退職者を始めとした男性の参加がここ数年非常に増えている。「男性の参加により、会の活動に幅が出た」と大好評。参加男性は「料理にはもともと興味があった。料理教室に通う感覚で楽しんでいる」「退職後の生きがい」「会社勤めをしながらも、地域とのつながりの薄さがいつも気になっていた。自転車で自分の街を配達に回り、多くの発見をしている」と意欲的。

また、もう一方、これからの給食ボランティア活動を支える力として期待されるのが、企業ボランティア。銀行の営業マンなどが、ランチタイムを利用して配食を手伝うシステム。「新たな市場拡大・顧客とのコミュニケーションなど、自らの営業活動にもっながる」

「ボランティアには前々から興味はあったが、時間がとれずできなかった。これなら、働きながらも無理なく参加できる」(西京信用金庫・井口さん)となかなかの好評で、参加を名乗りでる企業も多い。

◆仮設の孤独を救う ヤクルトレディ、声かけで安否確認

阪神大震災被災地区の仮設住宅で、独居老人の孤独死が相次いでいる。

川西市では阪神ヤクルト販売に支援を要請。これを受け同社では10月1日より独居老人の住む仮設住宅を訪問、無料でヤクルトを配りながら、声掛けをし安否樺認をしている。仮設住宅六二〇戸の居住者対象で、費用は半年問で約二六〇万円。仮設住宅がなくなるまで続ける予定だ。「自ら被災しながらも、自発的また精力的にこれに参加している配達員もいます」(ヤクルト本社広報部・神崎寛課長)

企業ボランティアの先駆者として数々の賞を受賞し、今や有名なヤクルトの愛の訪問活動だが、はじまりは郡山の一販売員の自発的な行為。それが仲間に、事業部に、支社に、全国に広がった。二四年の歴史の中には、危ないところを救ったという例も多々。訪問先で一声かけて応答がないと、次の家を訪ねても気になってまた戻って安否を確認してしまうという。「仕事と家事の両立、そのうえ奉仕活動と、販売員の努力は並みたいていではない」「介護で大切なのは継続。決して無理はしないことですね」と同課長は語る。

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