旬の食材:タラ メニュー提案=タラのみそ鍋、野菜焼き

1995.11.10 2号 6面

ラストオーダーの料理を出し終えると急いで仕度をし、上野駅23時23分発青森行特急「はくつる」の女性専用レディースカーに飛び乗った。行く先は津軽だ。

古い友人である津軽出身の夫婦が隣に引越して来てからは、遠い青森なのにいつも身近で、秋になるとしばしば送られてくる特産品のおすそわけを期待して、ワクワクしていた想い出がある。しかし魚となると、昔食べた話だけで、食材が揃わないと東京のとは味が違うと強調して、ごちそうになることが出来ないまま何十年も過ぎてしまった。

けれど特徴のある郷土料理の殆んどは寒い時の健康を考えての料理で、流通が盛んになった現在なら取り入れられる、またぜひ取り入れたい物がある。

食材探しとまだ見ぬ北の国は早朝の魚茶センターから始まった。むつ湾でしか採れないシーズンの蟹は、量は少ないがあちこちの店に並んでいる。新しくなったこの魚市場は明るく、清潔で広い。また分かりやすく品物を並べている。直径15センチもある様なタコの足が何本も並んでいる。目当ての鱈はどの店の台の上にも載っていた。鱈の頭・アラ・内臓が一山五〇〇円で量はバケツ一杯ある。置き方は無造作だ。何時も捨てる部分の内臓がそのまま盛ってある。鮮度がいいのでツヤがあり、きれいで嫌な臭いもない。刺身用の身、姿のままのもの、メスの真子やオスの白子(タツともいう)がどの店も主流を占めていた。

市場の横の道には屋台風の食堂があり、目当てのじゃっぱ汁とむつ湾の蟹を注文すると、店の主人は市場から蟹をつかんできて蒸してくれる。便利な商売で感動した。

じゃっぱ汁は大根・人参・里芋・きのこのさもだし・ねぎを鱈のアラと内臓、白子を入れ煮こんだもの。味噌味がしみこんでいるのを、アツアツで大丼で食べる。

各家庭で各々個性があるというが、冬へ向かう身体のための優しい栄養料理になる。家の中は空気も暖房で乾いて、身体が芯から冷える寒い日が続く。冬へ向かっての簡単な健康法は骨の中まで水々しくすることが必要。ところが、寒すぎて水分を摂りたくないので、意識をしないとどうしても身体は水不足になる。そうなると肌はカサカサで白っぽくなり、春頃にはやっかいな、ぎっくり腰にまでなる原因を作ってしまう。

私は具が沢山入ったその上濃い目の味の味噌汁を毎日食べることをおすすめする。鱈は身の方は脂肪が少ないので成人病予防の良質の蛋白源になるし、加熱することによってアミノ酸ができて、体内で発ガン物質の生成を抑えることも研究によって分かっている。

春から元気に遊ぶため、冬は身体作りをする必要がある。冬の食材には、身体を温める七味唐辛子やビタミンCを多く含む、ゆず・レモン・ダイダイの酢を合わせて食べるともっと効果が加わる。

(自然食もてなし料理人 田村匡世)

○メニュー提案

◆タラのみそ鍋

●材料=タラの生切り身300g、白子200g、はくさい、春菊、ブロッコリー、大根、人参、里芋、ねぎ、豆腐、出し昆布、田舎みそ50~80g、酒かす30g

●作り方=野菜は洗って好みの大きさに切る。白子は流水で洗って、一口大に手で切りわける。タラは一口大に切っておく。

鍋に水800cc、出し昆布、酒かす、大根、人参、里芋をいれやわらかくなったらみそをいれ、味をみてから他の材料をいれ汁と共に器に盛り、七味唐辛子をかけたり、ゆずを絞ったりして食べる。

◆タラの野菜焼き

●材料=タラの生切り身100g4枚、春菊、三つ葉、ねぎ、唐辛子、大根の葉を各少量、みそ100g、卵黄、みりん50cc、オリーブ油30cc

●作り方=タラは軽く塩をする。野菜、卵黄、調味料をカッターにいれ細かくしてボールに入れ、オリーブ油を加えまぜ魚の上にのせ、オープンで焼く。220度Cで7~8分。

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