三仙茶・年末年始の脾胃を助けてくれる不思議なお茶
年末から年始にかけては様々な集まりがあり、誰しも暴飲暴食になりがちな季節だ。日本人は元々、胃腸が決して強い民族ではないといわれる。それなのに、最近のパーティーシーズンの“ごちそう”は、タンパク質や脂肪たっぷりの胃にもたれるものばかり。お疲れ気味の胃腸をきっちりサポートしてくれる中国のお茶を、日本で活躍している北京出身の中医師、張振東氏の子供の頃の思い出話から紹介したい。
「小さな頃の思い出としてこんなことを覚えています。祖父の書斎には、大きなガラス瓶があって、その中には赤褐色の甘酸っぱい蜜がかかった大粒の食べ物が入っていました。おいしい料理がたくさん出る祭りや祝日になると、孫たちはそれをもらって食べるのが楽しみでした。満腹になった時、それを食べるとお腹が気持ち良くなりました。また逆に食欲がない時でもそれを食べた後はご飯やおかずがおいしく感じられました。しかし当時はそれが何であるか、よくは知らなかったのです」。
少し大きくなって張氏はそれが『大山〓丸』という名前であることを知る。三仙(麦芽・サンザシ・神曲)に蜜と砂糖をかけて作られたものだ。中医学では素晴らしい効果を持つものに“仙”の字をよくつける。
仙の字には“病から人を救う”という意味と“速やかに”という意味があるそうだ。
「お祭りの日、子供たちのお腹の具合を気遣う食べ物としては彼らが好きな甘い味の大山〓丸があって、そのほかに生薬として『焦三仙』というものもありました。“焦”は表面だけ軽く炒って黒褐色にするという意味。こうすることによって三つの生薬の性味は存在させながら健脾作用(胃腸の機能を高める)をさらに増加させる。正月や祭りの前に、どこの家庭でも焦三仙を一週間分用意するのです」。
焦三仙がなぜ、食べ過ぎのお腹をすっきりさせるのかというと、この三つの生薬がそれぞれ私たちが取り過ぎてしまった栄養素をダイレクトに消化促進するからだ。つまり、(1)パン・麺類などの小麦粉が元となっているでんぷん質は麦芽が、(2)肉・油脂などの動物性タンパク質などはサンザシが、(3)野菜・酒・コメなどの穀類は神曲が消化を促進し、全体として食物全般の消化を助ける。
一般の胃腸薬は、制酸薬と消化薬の二つに分けられる。焦三仙はどちらかというと消化薬系だが、消化薬が主に胃液を出させる効果を狙っているのに対し、焦三仙はそれだけではない。中国では、摂取した食物の量の割に脾胃(消化器系)の働きが落ちていて、十分に消化しきれずに食物が残留してしまう状態を「食滞」という。特に高齢者になると、脾胃の働きが落ちて食滞が長く続き、胃の痛みや食欲不振、体力消耗を訴える例が少なくない。焦三仙は、現在の症状改善だけでなく、そうした「もともと脾胃の働きが弱い」とか「何らかの原因で弱くなっている」人の臓器の問題に対しても働きかけていくという。
現在日本では、この焦三仙をお茶にした『三仙茶』が販売されている。高タンパク、高脂肪、高カロリーのオンパレードとなりがちなこの季節、分包タイプの三仙茶を持ち歩いて、脾胃のフォローに努めたい。