10月増税 軽減税率対応、実務レベルで準備を 省庁呼び掛け

総合 ニュース 2019.04.24 11868号 01面

10月の消費増税に伴う軽減税率(複数税率)の導入が5ヵ月と迫る一方、必要とされるレジ改修も見込みの3分の1と準備不足に危機感をにじませる省庁関係者もいる。そうした最中の18日、安倍晋三首相に近いとされる自民党の萩生田光一幹事長代行が6月日銀短観の数字を見ての「違う展開」の可能性に言及、翌19日の報道に菅義偉官房長官、麻生太郎財務相が予定通り実施と相次いで否定した上で萩生田氏本人も同日中に「政府とは話していない」と“火消し”した一連の政界発言の“観測気球”は、軽減税率対応への準備が求められる事業者を弛緩(しかん)させかねない。関係する省庁は事業者へ実務レベルでの着実な準備を呼び掛けている。(川崎博之)

萩生田氏の「違う展開」への言及が飛び出した18日に先立つ17日、中小企業庁はレジメーカーやシステムベンダーとの「消費税軽減税率対応への強化・加速化に向けた特別会合」を開催していた。今後、レジスターや商品マスターの改修需要が急激に高まることを見込んで、レジメーカーやシステムベンダーに対し万全の顧客サポート体制の構築と早め早めの対応に向けた営業体制の強化を要請したもの。レジメーカーやシステムベンダーの営業活動を通じて中小企業・小規模事業者に軽減税率導入時に対応が必要となるレジ改修を促すのが狙い。そのため1094億円へ積み増した平成30年度(19年度)補正予算で補助率や対象事業者、補助対象を拡充した「レジ・システム補助金(軽減税率対策補助金)」の周知徹底を図ることにしている。

1094億円へ積み増した予算は、経済センサスなどの調査統計やレジスターなどの販売実績、レジメーカーやシステムベンダーへのヒアリングによって想定した需要約30万件から積算した。ただ、これまでに受け付けた補助金の申請は約9万9000件と想定需要の3分の1の水準にとどまる。「まだ3合目。申請が直前に固まると(レジメーカーやシステムベンダーの)エンジニアも対応できない」(中小企業庁)と危機感もにじむ。

●適用税率の判定示す

財務省も実務レベルでの周知徹底に努めている。日本食糧新聞社が17日から19日に開催した業務用食品専門展示会ファベックス2019の会場で19日、軽減税率制度への準備について講演した財務省主税局税制第二課の加藤博之課長補佐は、菅官房長官、麻生財務相が示したように政府の方針に何ら変わりはないとして、準備を進めるに当たって軽減税率制度への理解を深めるよう呼び掛けた。

加藤氏は、役務の提供のあり・なしから取引(販売)時点で行わなければならない標準か軽減かの適用税率の判定で、テーブル・椅子がある店舗が「飲食はご遠慮下さい」など掲示しても、それだけでは飲食の「実態なし」を担保しないために苦悩する実務者の存在を明かした。それを踏まえ、顧客への注意の促しなどを店舗オペレーションへ組み込むなど飲食の「実態なし」の状態を維持しようとする事業者が努力を示すことは対応の一つとの考え方を示した。

実務者の苦悩は、店舗としては店内の椅子やテーブルがイートインの設備としてあるわけでないので「飲食はご遠慮下さい」と掲示して販売時点では軽減税率で消費税を預かるつもりだが、掲示だけでは店内の椅子やテーブルでの飲食実態がないと見なされないため、飲食をさせていないことをどうすれば担保できるかに自信を持てないことに由来する。

これとは別に、リベートの適用税率の判定も、役務の提供のあり・なしがリベートの目的から分かるため、リベートの授受の際の軽減か標準か適用税率を決めることができる。目的の双方の認識の相違は整理して解消する必要があり、契約書などの書面に目的の記載がなければ明記を薦めている。

それに関連して、加藤氏は、そのための契約書変更の際、印紙税の対応をどうすれば良いかの質問が多数寄せられているとし、印紙税の取り扱いについての考え方を示した。それによると、今般の対応は、リベートの性質・性格やリベートの額の計算方法について、あらためて確認することが想定されるため、印紙税の課税対象の文書(7号文書)の「重要事項」に該当せず、基本的には印紙税の課税対象にはならないという。

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