新型コロナ:溝渕雅男弁護士が解説 資金不足への対策

総合 ニュース 2020.03.16 12026号 02面

新型コロナウイルスの影響で一部家庭用食品が異常需要の対応に追われる一方、外食市場を中心に出口の見えない消費減に陥っている。現在、好調なカテゴリーでも従業員に罹患(りかん)者が出た場合、風評被害を含め、経営へのダメージは計り知れない。そこで、新型コロナによる業績不振などを理由とする資金不足に備えるべく、事業再生や事業承継などの企業法務に詳しい溝渕雅男弁護士(大阪市、共栄法律事務所)に食品企業を念頭に「金融機関に対する返済の猶予」について解説してもらった。(服部泰平)

●返済猶予要請も 金融機関との信頼関係が重要

新型コロナによって事業に大打撃を受け、資金繰りに苦しむ中小企業が増えている。自粛要請で会合が相次いでキャンセルされるなど、外食産業を中心とした食品業界も例外ではない。

政府は特別な資金貸付制度を設けるなど、新型コロナの影響による資金ショートを回避するための方策を講じている。

各制度によって要件などが異なるため、まずは取引金融機関、日本政策金融公庫、信用保証協会などに、制度利用の可否を相談すべきである。

上記貸付制度による融資を受けることができない場合などには、既存の借入金の返済猶予を求めることも検討する必要がある。

リーマン・ショック後、中小企業の連鎖倒産などを防止するため、期間限定で中小企業金融円滑化法が制定された。同法の制定により、資金繰りが苦しくなった中小企業は、金融機関に対する元本返済の猶予(返済期間のスケジュールを再調整するため、「リスケ」と略される)を広く認めてもらえるようになった。同法は2013年3月をもって終了したが、その後も、事実上、緩やかにリスケが認められてきた。

麻生太郎金融担当大臣は6日の談話で金融機関に対し、新型コロナの影響拡大を踏まえた事業者の資金繰り支援を要請した。事業者としては、さらにリスケに応じてもらいやすくなっている。

経営者の中には金融機関にリスケ要請をすると、たちまち事業停止に追い込まれてしまうのではないかなど、過度の不安を抱えている方もいる。また、金融機関に対してネガティブな情報を意図的に隠すケースも少なくない。何でも話せば良いわけではないが、金融機関との信頼関係を構築することが重要である。

事業者と金融機関との間ですれ違いが生じ、本来であれば事業再生が可能であった企業が破綻することも珍しくない。

金融機関とどのようにコミュニケーションをとるべきかということも含め、専門家の力を借りるなどしてこの非常事態を乗り切る必要がある。

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