家庭用ごま油、新局面に 安定から成長拡大

 家庭用ごま油の成長速度が上昇している。かねて安定基調が続いていた同市場だが、ここ数年大きく規模を拡大。背景にあるのは、そのまま楽しむ「生使い(生食)」の拡大・浸透で、競合の垣根を越えた提案戦略が実を結んでいる。19年は300億円を突破し、今春は新型コロナ禍での内食増でさらに拡大。食用油屈指の“いぶし銀”市場が“主役級”への本格転換へ重要な局面を迎えている。

 同市場は、これまでも加熱用途(炒める・揚げる)など中華系食用油として高い認知を保有。ドレッシングや天ぷらなど中華以外の用途も含め、安定勢力として売場を確保していた。一方で食用油に対する健康的価値の見直しや生食用途の拡大によって近年、規模を急速に拡大。料理メニューにそのままかけて楽しむスタイルの広がりを背景に、消費シーンを拡大させている。

 この状況下、春先の需要拡大はこれまでを上回る勢いでトライアルを喚起。純正品・調合品ともに裾野を拡大し、家庭内でも本格的な“プロ(外食)の味”が楽しめる調味料として、注目を集めた。レシピサイトでの登録数も増加し続けており、消費シーンの喚起・拡大が進んでいる。

 家庭用食用油ではキャノーラ油などこれまでの汎用(はんよう)油に加え、高価格帯に属する高付加価値油の構成比が大きく上昇。その筆頭株は400億円を大きく超えるオリーブ油だが、ごま油はこれに続くストロングナンバー2の座を固めつつある。

 重要局面となる今秋は、リピート定着で通年での需要増も期待大。メーカーも万全の体制で臨む考えで、大手の生食提案は依然反響を重ねており、専業メーカーでは最大手・かどや製油の新工場稼働など供給力を強化中。濃口や純白など伸びしろ抜群のジャンルもあることから、両翼での活性策が軌道に乗れば、市場は新局面を迎えることになりそうだ。=関連記事11面(村岡直樹)

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