新型コロナ:道内食品界を直撃 本紙北海道支社緊急調査

総合 統計・分析 2020.03.09 12023号 02面

【北海道】新型コロナウイルスの感染拡大を受け、道内食品業界で影響が広がっている。訪日外国人客の激減に加え、感染を恐れる生活者の自粛ムードが追い打ちをかけ本道経済を直撃、収束の見えない状況に危機感を募らせている。日本食糧新聞社北海道支社では、道内食品業界製配販3層に感染拡大による売上げへの影響や対応策、今後懸念される事態など緊急アンケートを実施し回答を寄せてもらった(判断時点は2月下旬~3月上旬、回収企業数は70)。

●2月売上げ、過半が前年割れ

道内で感染者が急増した2月の売上げは、前年同月比で実績を下回った企業が54%となり、前年並みを除き前年実績を上回った企業数(25%)の2倍に及んだ。今後の業績見通しについて「やや悪化」「悪化」「とても悪化」を含め、実に92%の企業が悪化すると予想した。中でもホテル・旅館、観光、外食、学校給食など関連産業への影響は甚大で、感染拡大長期化の懸念もささやかれる。

感染拡大による『2月売上げへの影響』(グラフ(1))については、「前年比10%増以上」が4%、「同1~9%増」が21%、「前年並み」20%、「1~9%減」42%、「10~29%減」9%、「30%減以上」3%、「未回答」1%となった。影響では「家庭用は前年以上を維持したが、外食、学校給食など業務用の落ち込みが大きい」(乾物)、「内食化傾向で、加工食品、冷凍食品の需要増」(食品卸)、「2月後半の小中学校臨時休校後、急激に売れ出した」(小売)、「観光客減少による土産店、外食販路のほか、催事中止による量販店での売上げ減。通販など宅配販路は増加傾向」(水産加工)と、外食、観光産業などへのダメージの大きさがうかがえた。一方で内食傾向の強まりで、量販店やドラッグストアでの加工食品、冷食など買いだめ需要が高まった。

『今後最も懸念される事態は』の問いに対して、「原料、資材の遅れによる製造への悪影響と物流環境の悪化」(調味料)、「物流面、商品供給体制の維持と対応」(食品卸)、「社員の感染による事業障害」(飲料)、「生産工場でのクラスター感染」(菓子)、「外出を控えるなか消費の落ち込み、風評被害」(菓子)、「中国協力工場の再開めどが立たず、欠品の恐れ」(水産加工販売)、「企業活動の低下」(食品卸)など社員の感染懸念や原料、物流面の影響など心配する声が相次いだ。

『感染予防対策、勤務態勢など』に関しては、「テレワーク、時差出勤、消毒対応の実施、対策本部立ち上げ、BCP見直し」(食品卸)、「手洗いの徹底」(小売)、「トイレ内の消毒徹底、見学施設の縮小」(酒類)、「3月2日から事業継続に最低限必要な要員のみ出社、それ以外はテレワークを実践」(飲料)、「マスク着用、生鮮品のバラ売り販売、試食の中止」(小売)、「商談、出張の見直し」(調味料)、「スライドワーク、全体会議の中止・延期」(菓子)、「2月27日から管理職以外は在宅勤務。管理職も午前11時~午後3時勤務。陳列、商談、出張禁止」(菓子)、「出張、会合参加の自粛。TV会議対応の強化」(全国卸)、「4月オープンする工場改装前日に予定していたレセプション中止を決定。見学スペースの縮小」(酒類)、「会議の中止・延期。出張見直し、宴席中止」(食品卸)といったコメントが寄せられた。テレワークや時差出勤、不要不急の商談や出張、会議の中止など、感染防止に取り組む姿が浮かび上がった。

『2020年道内景況感見通し予測』(グラフ(2))に関しては、9割を超える企業が悪化と予想。「消費低迷で販売単価が下がり、利益率も低下」(水産)、「各種イベント中止・延期に伴う行楽需要の減少の一方で、中食頻度アップはチャンス」(菓子)、「消費増税の影響が残る中でのコロナウイルスの影響は計り知れない。旅館・ホテル、飲食店の倒産、廃業など増加を懸念」(酒類)、「増税も含めて節約志向はさらに強まる」(小売)など、先行き不安と危機感を募らせている。(長島秀雄)

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