新型コロナ影響:乳業業界 給食用から家庭用・加工乳へ 切り替え2万t模索

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ目的で、安倍晋三首相は2日から全国の小中学校や高校などに春休みに入るまでの臨時休校を要請した。その結果、学校給食用牛乳(学乳)の供給が全国規模でストップすることになり、酪農乳業界は家庭での飲用や加工用への切り替えを模索している。

農林水産省「牛乳乳製品統計」によると、昨年3月の学校給食用牛乳の生産量は2万2135tで、Jミルクが昨年10月に発表した需給見通しでもほぼ前年並みの生乳生産量が予想されていることから、今年も同等量が供給されると考えられる。

通常、3月は下旬から春休みに入るが、今回一斉休校によって約2週間の前倒しとなり、行き場を失うことになった。

これを受け、乳製品工場などに学乳に振り分けられるはずだった生乳を加工処理されることとなった。乳業メーカーによると、家庭用バター、チーズ、牛乳などに仕向けられる。

ここで問題なのが、加工向け量が増え、バター生産に向かうと、合わせて脱脂粉乳も増加し、すでに積み上がっている在庫がさらに増加する。都府県では学乳を中心に事業活動を行う中小乳業メーカーも多く、今回の事態が経営状態に与えるダメージは小さくない。加えて、加工用は飲用よりも安価であり、事態の継続は酪農家経営にも響いてくる可能性がある。

ただし、今回は自然災害時と異なり、物流などのサプライチェーンは通常通り機能しており、小売売場での大きな混乱は起きていない。

「巣ごもり消費」のニーズからか、ヨーグルトの需要が高まっているようだが、余乳をいかに廃棄せず処理するか、業界一丸となった取組みが急務となっている。(小澤弘教)

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