19年度チーズ総消費量、5年連続最高を更新 健康・外食定着など背景に

 農林水産省が17日に公表した2019年度(19年4月~20年3月)の「チーズの需給表」によると、総消費量は昨年度を上回る前年比1.5%増の35万8229tとなり、5年連続で過去最高を更新した。ナチュラルチーズ(NC)輸入量も昨年に引き続き最高記録を更新し、同2.6%増の28万6938t。NC輸入量のうち、プロセスチーズ(PC)原料用も微増しており、健康志向や外食メニュー定着などを背景にした堅調な需要が見られた1年となった。ただし、第4四半期(20年1~3月)以降は新型コロナウイルス感染拡大により、ボリュームの大きい業務用需要の停滞があることから、特に今年度下期以降の動向が消費量の増減を大きく左右すると考えられる。(小澤弘教)

 19年度の総消費量は、NCが21万7718t(前年比3.5%増)、PCが14万0511t(同1.5%減)で着地。両カテゴリーとも直接消費用(PC原料以外)での伸びが見られ、特に輸入NCでは前年比3.8%増となった。

 背景には、一昨年のカマンベールやブルーチーズに関する健康報道によるベースアップがあるとみられ、昨上期は反動で前年同期比減となったものの、市場の底上げが図れているとの見方が強い。また、外食などでのチーズの定着も、裾野拡大に大きく寄与してきたといえる。

 国産チーズ生産量は、NCが同2.2%減の4万4396t。PC原料は同7.0%減となり、合わせてPC生産量も微減となったが、直接消費用は同1.9%増となった。

 乳業大手3社のチーズ部門における20年3月期通期決算でも、各社強みを生かしたチーズカテゴリーで堅調な伸びが見られた。

 雪印メグミルクは前年比1.6%減の746億円と減収となったものの、食べ方提案など新たな価値の訴求に向けたプロモーション活動を展開し、市場優位性の高い商品群は好調に推移した。昨下期にはPCカテゴリーに新商品を投入。「6P」のアレンジレシピ「とろっピ~」のTVCM投下は高好感度を獲得し、売上げ増に寄与した。「さけるチーズ」も引き続き市場拡大を図っている。

 森永乳業は同0.5%減の475億円。パワーブランドとして育成を進める「クラフト フレッシュモッツァレラ」に一口タイプを投入したことでプラスオンとなり、シリーズ全体で2桁増を達成した。明治は同2.4%増の374億円。「明治北海道十勝」がブランド全体で7.0%増と伸ばし、カマンベールのラインアップ強化が増収に貢献した。PCの「スマートチーズ」も2桁増とけん引しており、特に「和風だし」は海外のチーズコンテストを受賞するなど評価が高まっている。

 ただし、迎えた今期は新型コロナウイルス禍の影響がチーズ消費にも色濃く影響している。家庭用はNCのシュレッドやPCのスライスなど、調理用途製品が引き続き好調を維持しているが、業務用分野では苦戦が続く。輸入量も大きな伸びにはならないとの予想もあり、各社は販路開拓・食べ方提案など、新たな生活様式にマッチした需要創造策に取り組んでいる。

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