活気づく日本米輸出 おにぎりブームが追い風

農産加工 ニュース 2019.12.23 11988号 01面

日本米海外輸出が活気づいてきた。財務省貿易統計では、今年1~10月は前年比24%増の1万3311tと、20%台の伸び率を達成。17年は同19%増、18年同16%増と、直近の2年間は10%台が続いていた。巨大市場中国の規制緩和に加え、17年に国が立ち上げた「コメ海外市場拡大プロジェクト」に参加する戦略的輸出事業者の地道な努力によるものだ。(佐藤路登世)

規制緩和では昨年、中国向け輸出指定精米工場の認可が、兵庫県(神明ホールディングス阪神工場)と北海道(ホクレン石川工場)に広がった。加えて、東京電力福島第一原発事故に伴う輸入規制枠から、主産地新潟県が外れた。結果、尖閣問題以降前年割れが続いていた同国向けが昨年同76%の増加に転じ、今年1~10月も同75%伸長した。

日本米に対する現地評価も変化している。9年前からコメ輸出に取り組むクボタでは、「高くてまずい、供給が不安定、炊飯が複雑で難しいなど誤解が払拭(ふっしょく)されてきた」(アグリソリューション推進部高橋元部長)とし、同社ら戦略的輸出事業者の努力に加え、海外観光客の増加で日本米のおいしさや品質の良さを体感した人が、着実に増えてきたことが伺える。

「従来、日本米の採用はアッパークラスのレストランにとどまっていたが、直近ではミドルクラスにまで拡大」(JA全農輸出対策部宮川拓也統括課長)し、顕著な例が海外でのおにぎりブームだ。現に日本人(企業名=百農社国際有限公司)が香港で展開する、日本米を使ったおにぎりショップ「華御結(はなむすび)」は10月末現在で70店舗。年内に80店舗に到達し、200店舗展開も目前という。ただし5年連続の米価上昇、飼料用米生産振興に代表される需給均衡策に3年連続の不作も重なり、原料米調達難と内外価格差拡大のダブルパンチはますます強まっている。

大潟村あきたこまち生産者協会は、商社を通さず直接海外に販売し、現地米価格の2倍以下まで抑える仕組みを構築した。涌井徹社長は「輸出というより海外産直の発想」とし、秘訣(ひけつ)は「物流や決済システムの劇的変化にある」という。従来の補助金ありきの輸出から脱却し、自ら利益確保できる民間の知恵が不可欠だ。

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