酒類流通、RTD成長に期待と不安 物流改善など対応急務

酒類 ニュース 2020.07.17 12083号 01面
価格力を強みに、成長を続けるRTD。縮小する酒類市場で一人勝ちの様相を呈している

価格力を強みに、成長を続けるRTD。縮小する酒類市場で一人勝ちの様相を呈している

 酒類の総消費が縮小する一方、缶チューハイなどRTDアルコール飲料市場が快進撃を続けている。価格の安さや商品開発の多様化が若年層を中心に支持され、ビールなど他の酒類カテゴリーの消費が流入する格好で市場を拡大。10月に実施される第一段階の酒税率改正ではRTDは対象外のため、市場拡大へさらに拍車がかかることが確実視されている。卸など酒類流通業はRTDの成長に強い期待を込める一方、商品の低価格性がもたらす市場全体の価格下落や物流費増大による収益悪化を懸念するなど、一抹の不安を抱えているのも実情だ。=18日付臨時増刊号「酒類流通の未来を探る」で詳細を掲載(篠田博一)

 RTDの19年度販売実績は本紙推計で2億3000万ケース(前年比12%増)と大幅な伸びで着地し、市場規模はこの10年間で倍以上へ拡大した見込み。アルコール度数が7~9%と高い「ストロング系」商材が店頭売価100円前後で買えるなど、1缶で酔えるコスパの高さが消費拡大を支える。メーカー各社が飲みやすさや多様な味わいの提供へ向け、商品開発に力を入れているのも市場活性化の大きな要因だ。

 今年は外出自粛や料飲店の休業などで家飲み需要が急増する中、RTDの消費拡大へ一段と拍車がかかった。「オンライン飲み会の浸透でこれまで飲酒習慣のなかった層にも消費の裾野が広がり、この新たな飲用シーンを最もけん引したのがRTD」(大手卸)とみている。

 さらに10月の酒税率改正では最大の競合相手である新ジャンルの税額(350ml缶)が現状の28円から10円増額される一方、RTDは28円のまま据え置かれる。RTDは新ジャンルに店頭売価で1割前後の価格優位性を発揮するとみられ、消費のシフトが急速に進みそうだ。

 RTDの税額はビール類の酒税一本化が完了する26年まで据え置かれるため、「要冷カテゴリーにおけるRTDのシェアは現在25%とみられるが、最終的に30%超まで拡大するだろう」(同)と大幅に規模を広げることが必至の情勢だ。

 若年層の酒離れなどで酒類消費は96年をピークに減少を続けており、いまだ歯止めがかからない中で、RTDの成長は数少ない明るい話題といえる。とりわけ今期は新型コロナ禍で業務用市場が壊滅的とあって、酒類卸は新カテゴリーの快進撃に歓迎の意向を示すが、半面、拡大を続けるRTDが市場へ及ぼす影響に不安ものぞかせる。

 これまでも酒類流通業は商品単価の下落と物流費上昇の板挟みに合い、収益力を著しく低下させてきた。RTDの最大の強みである低価格にビール類など他のカテゴリーが引っ張られ、市場全体の価格水準がさらに引き下がることは死活問題となるからだ。

 このため酒類卸各社は税改正以降の市場の変化を想定し、RTDの物量増大を見据えた仕組みの再構築に着手。小売業にはケース単位での発注や配送頻度の適正化を促進し、ピースピッキングやバラ納品の改善など物流負荷の軽減へ努めていく。「RTDはすでにケース単位での取引が妥当との認識が必要」(同)と強調する。

 加えて、メーカーコラボ型の新たな切り口を持たせ、150円前後の高価格帯で売れる自主開発RTDの投入へ力を入れるなど、市場課題に対応した戦略の構築を急ぐ。

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