食品産業文化振興会、杉山大志氏が講演 CO2濃度の上昇で収穫物増加を期待

杉山大志氏

杉山大志氏

 日本食糧新聞社主催の食品産業文化振興会は7日、東京・八丁堀の食情報館で講師にキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志氏を迎え、「地球温暖化と食糧」のテーマで開催した。コロナ禍で会合が制限される中で三密を考慮し、講師を含めWebセミナーとして開催された。

 地球温暖化の要因といわれるCO2濃度の上昇について、「悪いことばかりではなく、植物の光合成の効率がアップし、ひいては収穫物の増加が期待できる」とした。「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は台風やハリケーンが強くなったといっていない」とし、「災害による経済損失は増えているが、それは危険な場所に住むからだ」と強調した。

 環境省によると地球温暖化で気象災害リスクが高まり、気候変動から気候危機に移行していると環境白書で発表した。IPCCによると世界の温度は1880年から2012年の間に0.85度C上昇し、CO2濃度も上昇して400ppmに近づいている。仮にCO2濃度が産業革命前の2倍の560ppmになったときの温度上昇は1.5~4.5度Cと振れ幅が大きく、その内訳ではCO2による赤外線吸収で1.2度C上昇し、水蒸気と雲による増幅が0.3~3.3度Cの上昇と不確実性を含む。

 講師の杉山氏は、地球温暖化の3分の1は食料起源(農業、森林開拓、農産物の物流)にあると指摘し、その問題解決に有効な手段としてバイオテクノロジーがあるとした。CO2を資源としてとらえ、「CO2濃度を現在の2倍にするとさまざまな果物・野菜・作物の生産量が2割上昇するという実験結果があり、逆にCO2が欠乏すると収量が減少する」と紹介。さらに、バイオテクノロジーを活用することで、CO2施肥効果の高い植物を開発して「植物の光合成の増大によってCO2を取り込み、根からの肥料吸収が良くなり作物が元気になって病気が減り、収穫物の品質向上・収量アップが期待できる」と語った。(宇津木宏昌)

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