ホロ酔いガイド 仕入先酒販店の選定の方法

1992.05.18 4号 19面

仕入の仕方のもう一つのポイントは小売酒販業界の構造変革を知っておくこと。それを知らないと、酒屋のやってくれるサービスの中味がわからなくなる。今から一〇年前までは、料飲・外食系の取引先酒販店は業務用酒販店か一般酒販店であった。

それからの一〇年の間にはまず酒ありコンビニエンスストアができてきて、その数現在約一万店。この店は一般消費者相手に一般食品・惣菜・弁当・雑貨と合わせて酒類を売る店なので、酒販の品揃えは少量・限定品種型。従って料飲・外食系のお店の取引先になれない。次いで昭和60年代モータリゼーションの変化と共に、消費者側に自動車という配達機能が備わり、合わせて消費者の流動性も高くなったので、まとめ売りの環境が整い、その条件を利用して低価格大量販売の商法が酒類業界でも成立することになり、このような変化のもとで、チラシ広告を宣伝手段とした酒ディスカウンターが現れるようになった。駐車場一〇台以上、店舗面積五〇坪以上の本格派は全国で約二〇〇~二五〇店。その他条件の不備な酒ディスカウンターまがい(いつつぶれるかわからない)が全国に六〇〇~六五〇店程度ある。

これらの店はウイスキー・ブランデーの並行物の品揃えが特に充実していて、価格は標準小売の三〇~五〇%安、ワインはフランス・ドイツを中心に品揃えが充実している。少ない店でも三〇〇アイテムはある。日本酒と焼酎はナショナル物を中心の品揃えで価格は一五~二〇%安(但し地方銘酒は値引なし、品薄商品はかえって高い)。ビールは一五~二〇%引き。但し、いずれも現金持ち帰りが条件であり、配達サービスはない。宅配便のサービスはある(有料)。品揃えは合計三千~五千アイテム。最低でも一般酒販店の三倍以上の豊富さである。

お店としては以上の条件を勘案して必要なものについては仕入先の一つに選んでおくことも有利である。ただし配達サービスがないことと、商品説明をしてくれないことを念頭におくこと。もう一つ重要なことは、本格派のディスカウンターを選ぶこと。「まがい」は商品内容とロットについて信用上心配が残る。

酒販店第三の業態は専門店型酒販店。今から十数年前地酒ブームを契機に日本酒とワインとを中心に専門性の高い酒販店が台頭した。著名な例としては日本橋の酒類問屋岡永が日本名門酒会を作ってこれを支援育成する等、一部の先進的問屋の支援もあって成長し、現在全国で約三千余店の規模。これらの店では全国の優良銘酒や世界の名だたるワインが品揃えされている。彼等は商品の品質管理体制を整え(各種セラー冷蔵倉庫等)商品知識にも明るく、品質判定力も高い。品質と味を訴求する形の料飲店・レストランがターゲットとする仕入先である。その代わり、取引は現金、遠距離は配達しない等サービス力に限界がある。

これに在来からの業務用酒販店。これは配達サービス・資金力・ナショナル酒ブランド商品の品揃え力の三点に優れているのが特徴で、価格も若干の弾力的対応力を持っている。全国で約七千店。

これらの他一般酒販店が約一一万店。料飲・外食業者としては酒販店の業態変革を理解し、自店が求めるサービスは何かを考え、取引先酒販店を選定することが必要である。

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