飲食トレンド:乱立する“屋台村” 空き地利用の無認可店舗

1994.05.02 51号 1面

気軽な雰囲気と目の前で調理される楽しさで、一大旋風を巻き起こした“屋台村”だが、最近はその“屋台方式”にあやかった類似店が増加の一途をたどっている。一時のブームこそないものの、投資コストが安く済む簡易店舗の居酒屋として新しく業態化している。だがひとくちに“屋台方式”といっても運営方針、立地戦略など形態はバラバラ。屋台のイメージが一人歩きして実態がつかめないのが現状だ。結果としてメディア主導の屋台報道が繰り広げられ、業界として明確なPRポイントが打ちだせない。今後、一つの業態として定着させるには、展開のスタイル、コンセプトをすみ分ける必要がある。

乱立する屋台方式の店舗を分析すると、四つのカテゴリーで構成される。

ビルインを基本とし、独立採算の専門屋台がテナント別で一フロアに集合。それを運営会社が管理する関西型(人情屋台派)。

屋台は運営会社の直営。店員も全て社員で組織する関東型(一龍派)。

空地利用として簡易テントで期間限定で展開する屋台もどき型(不動産屋派)。

屋台の良い雰囲気を既存店舗に取り入れた折衷型(屋台村新派)。

もちろんこれらの要素を各種折りまぜた店舗もある。

特に最近の傾向として目立つのは“屋台村もどき型”だ。売れない土地の税制対策で、空地利用と称して不動産屋が手掛けるケースが多い。永続的な営業観念がないため、許認可を取らない店舗もある。当然味やサービスの質も落ちているといえよう。そんな折から、本来の屋台らしさを追求する既存店は業態イメージが悪くなるとして事態を深刻に受けとめている。

屋台村の先駆者である(株)一龍グループの三浦愛三社長は「悪質な店舗は自然に淘汰されるのが常だが、まだ出店は増える傾向にある。状況が長引けば優良店だけでスクラムを組む必要がある」と団体発足を示唆する。

一方で、マスコミの報道姿勢がそうした乱立の引金になっているのも事実だ。屋台と名がつけば猫も杓子も取り挙げる無節操な報道は、店の宣伝にこそなれ店舗のアイデンティティを雲らせる要因になりかねない。

ともあれ“屋台”を巡る各店の動向はさまざまで、方向性は有力チェーンを除き、まだ手探りの状態。衛生面への懸念、許認可権など不透明な部分もはらんでいる。

関西ではすでに淘汰の時代とささやかれる節もある。業態定着か、自然淘汰か、はたまた業態拡大か。生残りをかけた各店の動向を追ってみた。

(2、3面に関連記事)

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