特集・コーヒー 来るファストフード・ファミリーレストランのコーヒー革命

1995.02.20 70号 10面

低価格コーヒーショップチェーン店は利便性と値ごろ感ある主力商品のコーヒーに加えて軽食類もオリジナリティーを出しながら充実、首都圏中心の商圏を地方都市へと全国的に業態を広げつつある。この勢いにOL、サラリーマンなどの浮動客を取られたファストフード(FF)、ファミリーレストラン(FR)はおりからの低価格ニーズに応えるべく商品の一つ一つをローコスト・高品質の側面から見直し、コーヒーにも新たな取り組みを始めている。

「コーヒーはこれまで脇役だったが、コーヒーを飲まれるお客様は固定客につながる確立が高い」とコーヒーをグレードアップして回数券を発売、予想以上の反響を呼んでいるのは首都圏のオフィス街に出店展開しているファーストキッチン。スタンダードなコーヒーの品質見直しのほかに、昨今のエスニックブーム、イタリアンブームの影響から消費者のカプチーノ、エスプレッソなどグルメコーヒーの要望も高くなっており、ロッテリアや森永ラブは一部店舗で実験を行っている。

一方、食事客を主力とするFRにも変化が見られる。新業態のスカイラークガーデンではアイドルタイムの喫茶利用掘り起こしの一環として紅茶とともにグルメコーヒーを揃えた。ジョナサンもグルメコーヒーを実験中で「ケーキと数種のコーヒーからチョイスして、ワンコイン(五〇〇円)で提供可能なのはFR」と現在のコーヒーよりワンランクアップの客層を狙って準備中だ。

喫茶業界としては喫茶店の減少に歯止めがかからずにいるが、コーヒー全体の消費量は家庭用レギュラーコーヒー、オフィスコーヒーサービス市場、缶コーヒー部門などの需要で増えており、このコーヒー人口をいかにFF、FRが取り込めるかが低成長の一つの鍵である。

多種多様なマシーンが出ているので、その中から利用頻度、機能性、ニーズに合わせて選んでもらっているというのが現状。

新たな動きとしては「OCS用に開発した抽出はドリップ式、保温はポット式としたマスターが業務用に使われるようになった」(ラッキーコーヒーマシーン)、「ホテルや事業所給食業界に普及しつつあるリキッドタイプのコーヒーとマスターが、味が均一、ロスがない、ゴミが出ないなどからFFでも使ってもらっている」(UCC上島珈琲)など、機能性に注目して従来からあるが、これまでFF・FRが使っていなかった機種を導入する例もある。

新機種としてはやはりエスプレッソの抽出と蒸気機能を揃えたマシーンが多く「小型でタンク式、エスプレッソ抽出と蒸気が出、時間当たり五〇~六〇杯使用の機種を昨年秋から輸入販売を開始した」(ラッキーコーヒーマシン)、「泡だてたミルクをエスプレッソコーヒーにのせたカプチーノが、ボタン一つで自動的にできるマシーンを輸入販売するのに先がけ、今回のホテレスショーで紹介する。機能付加の割には省スペース」(FMI)などグルメコーヒーマシーンはこれからますます改良されたものが出てきそうな気配だ。

一方では「FF・FRのコーヒーは杯数そのものが出ないから投資もできないのでジレンマにある」という見方もあり、各チェーンは飲料部門の戦略をどうするか、ひいてはメニュー戦略と飲料戦略とのバランスなど、商品すべてから見たコーヒーの位置づけをどうするか、グルメコーヒーは一過性の流行なのか定着するものなのかなど検討材料は多々あるようだ。

いずれにしても、FF・FRにコーヒーの高品質、バラエティー化の機運が高まっていることは確かだ。

FF・FRがコーヒーにてこ入れし、均一化、品質の向上、スピーディーなサービス、メニューのバラエティー化を図ろうとした時に一番のネックになるのが、現在のコーヒーマスターや備品では“帯に短し、たすきに長し”ということである。

ニーズの多様化に対応して人気のエスプレッソやカフェラッテなどのグルメコーヒーマスターを利用しようとすると、機械が大型になるため、機能を追求して計算しつくされた厨房には納まらない。加えて従来の万単位の機械が物によっては三〇〇~四〇〇万円とケタ違いに高額になるため、コーヒーの主力がスタンダードコーヒーであり、選択肢を増やすという動機だけでは踏み切れないのが現実だ。スタンダードコーヒーにしても味の向上を検討した時に独自の味、提供方法を考えた場合、大手はメーカーと共同開発できるが中小は既存商品から選別することになり、独創的なアイデアを反映することはむずかしい。

また、中堅のFFを中心に味の向上、サービス向上、環境面から紙コップを陶器に移行するチェーンが増えている。ここでも「カップソーサーの破損率は一年で一〇〇%、マグカップは六〇~七〇%」(ファーストキッチン)と強化カップを望む声が強い。陶器を導入することにより必要になるのが洗浄機だが「口紅や茶シブは落ちにくく、一度手洗いしてから機械で洗っている」(FFチェーン)、「人手はかかるが手洗いの方が仕上がり、効率からみてベスト」(明治サンテオレ)と手洗いをしているチェーンもある。

陶器に替えたいが洗浄機を置くスペースなどの点で替えることができないケースも多い。特にグルメコーヒーマスターの価格と省スペースを望む声が大きい。

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