マッチで偲ぶ外食史:銀座フランス屋 東京タワーよりも年上の洋食レストラン

2020.05.04 495号 14面
※マッチは筆者のコレクションです

※マッチは筆者のコレクションです

 ●創業90年を超える三笠会館が生んだ、東京タワーよりも年上の洋食レストラン

 「銀座フランス屋」は東京タワーが竣工する前年、1957年に誕生した洋食レストランだ。洋食の老舗である三笠会館が47年に現在の銀座本店を開業してから、約10年を経て立ち上げた最初のカジュアルレストランである。1号店は、東京・銀座の数寄屋橋ショッピングセンター(現在は「銀座ファイブ」と改称)に出店した「スキヤ橋店」。このブックマッチの内側、店舗リストの一番上に記載されているのが「スキヤ橋店」だが、現在すでにこの店は存在していない。

 洋食業態の印象が強い三笠会館だが、創業は大正15(1925)年に歌舞伎座前に出店した甘味店なのだという。かき氷やしるこなどが人気の繁盛店であったようだ。戦後、銀座並木通りに「三笠会館」を開業し、本格的な洋食レストランとして歩み始める。当時の三笠会館の看板メニューの一つが「若鶏の唐揚」だ。居酒屋の定番料理であり、近年また惣菜や定食などで人気が高まっている鶏の唐揚げは、三笠会館によってポピュラーになったヒットメニューだったのだ。

 「銀座フランス屋」は、そんな・銀座の洋食レストラン・という三笠会館のアイデンティティーを受け継ぎつつ、誰もが気軽に利用できるカジュアルな洋食店として展開した。写真のマッチは、掲載されている店舗やその電話番号から91~92年ごろのもの。このマッチには15店の店舗が掲載されているが、現在は2店舗を残すのみだ。老舗の威容も、時代の変化とともにその姿を変えるのだろう。

 (イートワークス代表 入江直之)

 ※マッチは筆者のコレクションです

 編集協力:株式会社イートワークス(http://www.eatworks.com/)

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら