2020年4月度、外食動向調査 フードコンサルティング

2020.07.06 497号 05面

 ●売上半減が新常態化!? 月次の開示見送りを投資家はどう見るか

 前回の3月度では、「まさに総崩れの様相」と書いたが、4月度は「過去最大の売上減少」となった。さらに5月はより悪化している可能性が高いはずである。もちろん、この事態はコロナによる緊急事態宣言を受けた営業自粛によるものだが、前号からの約1ヵ月間で「Withコロナ」が今後も長期にわたって続くことが定着した感がある。

 そこで、各社の業績数値は一覧表に譲るとして、今号ではこの「Withコロナ」が外食企業の経営にどのような影響と変化をもたらすのか、可能な限り考えられる内容を挙げてみたい。

 緊急事態宣言は明けたものの、いわゆる「三密」といわれる「密閉、密集、密接」を回避することは、今後も長期にわたって続くことになる国民的な課題になったとみていいのではないか。これを外食に当てはめると、次のような負担の重い対策が求められている。

 「密閉」を避けるには、頻繁な室内換気が必要となり、地下の物件や窓の少ない物件、奥に細長い物件で営業している飲食店の場合は、業務用エアコンの増設や空気清浄機の導入など、新たな設備投資が発生する。

 「密集」を避けるには、客と客の間隔を確保する必要性から席やテーブルの間引きが必須となり、これは直ちに売上減少につながるものである。床面積やフロアのレイアウトにもよるが、多くは席数ベースで3~4割減となるとみられている。

 「密接」対策としては、向き合って座らない、横並びでも1人分空けるなど密集対策に近いが、例えば4人利用客の場合、従来は4人用テーブル1台で足りたところ、対面での着席を避ける必要から4人用テーブルがさらにもう1台必要となってくるのである。しかも対面がダメとなると、お互いに話しにくくなる上に居心地も決して良いものではないため、このお店にまた来ようという気持ちにはならないはずである。

 つまり「三密」対策を取るということは、飲食店にとって客席の大幅削減+顧客満足の低下=売上半減=赤字経営を招くものである。さらに密集対策も必要な店舗では、想定外の投資も発生することとなる。そのうえ、消毒用アルコールや洗剤、マスク類などの感染症予防グッズの購入負担など、この事態に耐えられる体力のある外食チェーンは一体どれほどあるであろうか。

 ロイヤル(ロイヤルホスト、てんや)による70店舗閉鎖のニュースを聞いたとき、正直「さすがだな」と感じた。従業員の立場からすれば「とんでもない!」となるが、今後長く続くであろう新常態における外食経営では、まずはできるだけ身軽になることと、手元キャッシュの確保、それと並行して新たなビジネスモデルへの転換は待ったなしなのである。

 特に、ロイヤルのように上場企業ならばなおさらであり、短期から中長期にわたるリスクを早めに把握し、そのリスクに対する打ち手の明示と実行スケジュール、想定される損害額や投資負担、それらが収益に与える影響と、事業がどのように変わっていくのかまで、可及的速やかに投資家に開示する必要があるのである。

 一方で、4月度から月次売上動向の開示を見送った外食チェーンが増えてきている。月次売上動向に関しては、証券取引所への開示義務はないものの、投資家が外食企業の経営現状を把握する際の重要な指標となっている。

 そのため、開示を見送ったチェーンは投資家に真摯に向き合う姿勢が乏しいのか、あるいは前月だけでなく、今後の先行きも相当厳しい状態にある可能性を感じるのは筆者だけではないはずだ。

 月次売上動向を開示しない、できないというチェーンは、これからの新常態において生き残りが厳しくなる=株式市場からの資金調達が難しくなるので、負債額や金融機関との関係にもよるが、重い上場維持コスト負担を考慮すると、早めの上場廃止というのも現実的な選択肢ではなかろうか。

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