外食の潮流を読む(63)クローズタイムに「かき氷専門店」を営業し新事業のヒントをつかむ

2020.09.07 499号 12面

 東京・千葉で居酒屋などの飲食店を17店舗展開しているKUURAKUGROUPでは、銀座店、町屋店、北千住店、本八幡店の4店舗で、日中を活用して「かき氷専門店」を営業している。5月30日にオープンした北千住店を皮切りに、6月上旬までに順次開店したのだが、特に下町の2店舗ではウエーティングができるほどの繁盛ぶりだ。この営業は10月までを想定しているという。

 営業時間は12時から16時30分の4時間30分。商品は、「いちご」(880円・以下税込み)など定番商品6アイテムを揃えるが、期間限定商品の「まるごとメロン」(1280円)、「まるごとメロンミルク」(1350円)が目を引く。メロンの果肉を小さなボール状にくり抜いて、かき氷を盛り込んで側面にそのボール状のメロンを張り付けている。涼感とともにとてもインスタ映えする商品だ。メロンは1日6~10食程度を用意しているとのことだが、連日売り切れになるという。

 テイクアウトの商品に「まるごとメロン」はなく、「いちご」「マンゴー」「宇治金時」がイートインの商品よりもポーションを小さくし、2割安程度で販売している。

 氷は「純氷」(じゅんぴょう)を使用。これは水をろ過することで純度を高くし、ゆっくりと凍らせているもの。この氷はそれぞれの製氷業者で作られていて、製氷業者が異なっていてもクオリティーは共通している。

 同社の4店舗が秀逸なことは、「居酒屋がかき氷を売っている」というイメージを払拭して、「かき氷専門店」に徹底していることだ。ファサードののれんは既製品ではなくオリジナルのデザインを施したもので、ファサードの上にはたくさんの風鈴を付けて涼感を演出している。注目されるポイントは、まず、店舗が路面店であること。初期投資、ランニングコストが低いこと。そして労働負荷が低いことが挙げられる。

 1店舗当たりの初期投資が20万円で始めた取り組みだが、現状の営業ペースで8月度は4店舗で1000万円の売上げが想定されている。ランニングコストとしては「かき氷の原価」「人件費」ということから4店舗で300万円の利益を見込んでいるという。

 コロナ禍での飲食業界では、テイクアウト・デリバリーに取り組む事例が増えたが、KUURAKU GROUPでは、「店」という空間を有効に活用することを考えて「かき氷専門店」によって生産性を獲得した。

 同社としてはこのノウハウを「日本唯一無二のかき氷専門店チェーン」の構想につなげたい構えだ。さらに、この間培ったノウハウを生かし「かき氷専門店」のライセンス販売を展開していきたい意向。この売り方は労働負荷の少ない二毛作であり、居酒屋営業店舗の新しい働き方として提案していきたいとしている。

 (フードフォーラム代表・千葉哲幸)

 ◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら