2021年5月度、外食動向調査 フードコンサルティング

2021.08.02 510号 05面

 ●さみだれ式「緊急事態宣言」と「まん防」の影響

 日本フードサービス協会による2021年5月度の調査結果によると、協会会員企業の売上げは前年同月比19.8%増となったが、先月同様に、昨年5月は緊急事態宣言による事実上の外出禁止状態にあったことから、いわば「反動増」と言える数値となった。

 しかしながら、緊急事態宣言やそれに続くまん延防止等重点措置(まん防)の影響により、営業時間の短縮やアルコール提供は19時まで、入店は1回につき2名までなど、アルコール業態に加えディナー業態も事実上の営業休止に近い状況が続いており、ファストフードを除き客数の落ち込みは大きく、コロナ前の2019年5月との比較では19.8%減となった。

 ●ワクチン接種に期待

 わが国でもようやく5月からコロナワクチン接種が全国的に本格化しだした。このワクチン接種が進めば、感染者の増加も抑えられ「まん防」解除も見えてくるとの期待感を抱く関係者も多いようだ。しかし、そもそもコロナワクチンは、ファイザーにしてもモデルナにしても、コロナ感染者の重症化を防ぐ効果を主目的とした医薬品であり、接種すればその後は二度とコロナに罹患しない効果まではないようだ。

 事実、海外の報道では、ワクチン接種後に変異株に感染するケースも報告されており、ワクチン接種が進んでも引き続き警戒されていることからも、ワクチン接種をすればマスクを外して大勢で飲み会ができる=外食需要が復活することには、当面の間はならないとみて対策を練った方が良いのではなかろうか。

 ●有望市場は給食か

 コロナ禍が始まって以降、外食業界、とりわけ甚大な影響が続いているアルコール業態を展開する企業を中心に、悪戦苦闘しながらもさまざまな取り組みが現在進行形で続いている。

 コロナ前から続く「から揚げ」ブームの取り込みや、換気の徹底でコロナ影響を受けにくい(本当か?)と言われている焼肉業態への参入、ファストフードの安定性を取り込むべくハンバーガー業態への参入など、外食の枠内で展開を進める企業に加え、弁当惣菜の中食業態の開発、出店やキッチンカーの展開はもはや珍しくなくなり、今年に入ってからは、いわゆる「ゴーストキッチン」への参入も増加している。

 さらに、某大手居酒屋チェーンは「給食」にまで参入するというから驚きだ。だがしかし、考えてみれば「給食」はランチ提供であり、本来は外食企業の得意とする事業領域なはずだ。

 「給食」と表現するから何となく別分野の話に聞こえるが、実態は工場や学校、病院、オフィス、官公庁のランチ提供サービスであり、メニューを絞り(多くは3種類程度)、1食250~500円程度の低価格で提供されているサービスが一般的なようだ。しかも、設備は委託者が用意するため投資負担がほぼなく、給食業者はメニュー開発と調理スタッフを用意すればよいのである。

 これなら外食企業でも参入は可能でなかろうか。もちろん、既存の給食事業者は大手が強いことに加えて、提供価格から分かるように収益性は低く、数ヵ所程度の受託案件だけではもうからないが、少なくとも赤字に陥ることはないだろう。

 コロナの影響が当面続くことや、今後の状況次第で外食はコロナ前には戻らないとの見方がある中では、いま抱えているスタッフやメニュー開発能力などを生かせるビジネスとしては、外食に最も近い事業領域ではなかろうか。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら