滋味真求:「ログハウス自然館」埼玉県・毛呂山 うまい卵は毛呂山に
『卵』。値段の面では最優等生だが、価格に反して味は年々まずくなる一方の食材。ヨード卵だ、ビタミン入りだ、高原タマゴだなどと種類は豊富だが、買う段になると選ぶのに迷うほど。
しかも食べてみると水っぽかったり、魚粉臭や油脂臭かったり、本来の卵の味がしない。それではと知人の紹介で養鶏農家からじかに分けてもらったが、たしかに新鮮な卵だが魚粉臭くていただけない。それもそのはず、農家といえども昔のように自家製の飼料を食べさせているわけではなく、飼料工場のエサをそのまま与えるのだから。
ところがうまいものは探してみるもの、おいしい卵にめぐりあった。ハイキングや散策コースで有名な、埼玉県西部の鎌北湖に近い毛呂山町に「前田養鶏場」という農園があり、ここで生産される鶏卵は卵本来の味? というのも変なものだが、黄身のしっかり盛り上がった昔ながらの風味のある、うまい卵である。
経営者の前田圭一さんにうかがうと、前田さんは脱サラで、三十年ほど前から養鶏を手がけている。
「大量生産によるコスト切り下げという経営よりも、小規模でも納得のいくものを飼い、より安全性の高い鶏卵を生産していく」という理念のもとに、価格には目をつぶり、飼料工場お仕着せのエサではなく、たしかな原料を選び、自家配合の純植物性の飼料を与えているとのこと。
なるほど従来の養鶏場は欧米スタイルの大規模経営、大量生産によるコストダウンにより、安全性や品質面よりも価格競争に走り、味や風味は二の次となってしまった。
まあそうした企業努力もあり、卵の価格は年々安くなり、価格の面では食品界の優等生となったわけだが。といっても前田養鶏場の卵は、風味、品質面からいっても納得のできる値段である。
同養鶏場入口にカナディアン・ログを用いた「ログハウス自然館」があり、一階の直売所では産みたての新鮮卵や、地元でとれた有機野菜、自然食品などを直売している。二階レストランでは、同養鶏場特産の鶏卵を用いたうまいオムレツや有機野菜の料理が食べられる。
同養鶏場ではフランスの高品質の食材認定制度である、赤ラベル規格と同等以上の高品質鶏肉を生産すべく、フランスから赤ラベル種の鶏を輸入し、現在数百羽の食鶏を試験的に飼育している。
昨年のクリスマスには同レストランで、赤ラベル種の鶏肉ローストをメーンディッシュとしたクリスマス・ファミリーディナーを開催し、大好評を博したとのこと。近々ここで赤ラベル種の鶏肉が常時食べられるようになる。楽しみなことである。
ログハウス自然館の新鮮卵直売は、一〇個入りパックが二八〇円。二〇個入りパックが五五〇円。ほかに割安な五キログラム入り、一〇キログラム入りがある。贈答用品として三〇個入りのきれいな化粧箱が一五〇〇円。送料は別なので問い合わせのこと。
所在地=埼玉県入間郡毛呂山町葛貫二六〇。交通=東武越生線・武州長瀬駅下車。関越自動車道路・鶴ヶ島インター下車。