胃心伝真=失われた味

総合 コラム 2020.01.29 12005号 01面

 すべての仕事を終えた京都出張。晩秋の日は短く、四条大橋の下を流れる鴨川には夜の気配が漂う。寺社仏閣の拝観時間には、間に合わない。急ぎ東京に戻る必要もない。失われた店を訪ねることにした▼京都を旅行してから30年。数百年の歴史を持つ多くの老舗は健在だが、町中で、地元の人々の胃袋を満たした店、文化としての厚みを支えてきた店が、突然に、あるいは、感謝を伝える言葉を店頭のはり紙をあいさつ代わりに姿を消す▼薄く大ぶりのビーフカツが名物だった洋食の「ムラセ」、千切りキャベツを乗せた冷やし

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