カナダ大豆協会・市場開拓担当マネージャー、ニコール・マケラー氏に聞く 持続可能性重視の施策で日本での存在感高まる【PR】
豆腐や納豆の量産品の多くは原料原産地として「アメリカまたはカナダ」などと表記されている。食品用大豆の輸入量は、カナダ産がアメリカ産を上回る年もあり、ほぼ同等。2023年に、SOY CANADA(カナダ大豆協会)は「カナダ産大豆持続可能プログラム」を開始した。第三者機関が検証し、改善することを重視したもの。同プログラムは持続可能な農業イニシアチブプラットフォームの農場持続可能性評価(FSA)に基づいている。
FSAは農場全体の持続可能性を評価し、採算性、財務状況、社会的責任、環境保護などの観点から総合的に評価するもので、世界的に広く認められている。まず農場が自己評価を行い、第三者の認定検証機関が監査を行う。業界が主導し、メンバーの輸出業者は、各生産農家の評価に投資し、検証された大豆をユーザーに提供する。
同プログラムと、アメリカの大豆サステナビリティ認証プロトコルとの違いは、カナダでは輸出業者が検証に投資をする点と、プログラム開発から検証まで業界がコストを負担している点だ。同プログラムの使命は、関心を持つ日本企業に検証済みの持続可能な大豆を提供すること。カナダの大豆業界は日本企業と協力し、製品に使用できる食品用大豆の安定供給に尽力する。
カナダ大豆の生産活動における取り組みと、日本市場拡大への展望をカナダ大豆協会・市場開拓担当マネージャー、ニコール・マケラー氏に聞いた。
日本は食品用大豆で最大市場
カナダ大豆協会は、カナダ大豆の全国組織として2014年に設立された。カナダ産大豆の開発、生産、取り扱い、加工、輸出に関わるあらゆる段階の情報を包括的に蓄積・共有している。会員は、種子開発会社、カナダ全土の3万戸の大豆農家、輸出業者、加工業者、業界関連会社が含まれる。2023年のカナダの大豆生産量は700万tで、前年比7%増だった。このうち112万tがNon-GMO(非遺伝子組み換え)の食品用大豆で、前年比微増だった。生育期の天候が良好で、ほとんどの地域で収量が上がったため。2022年には430万tを輸出、2023年は生産量が増加したことで輸出量は470万tに達したと推定される。112万tの食品用大豆のうち、ほぼ全量が輸出される。
日本はカナダ産大豆の総輸出量では第4位、食品用大豆の輸出では最大市場で、豆腐、豆乳、味噌、納豆、醤油などさまざまな製品に加工されている。
カナダでは、古くから灌漑(かんがい)を行わない生産で、中でもオンタリオ州、ケベック州では50年にわたって大豆を生産してきた。降雨量が生産に適し、生育期の夏は好天に恵まれる理想的な環境で、高品質で持続可能な生産を続け、日本のユーザーから信頼を得てきた。
各地の気候的条件の違いにより、タンパク質含有量の異なる大豆が生産でき、加工用途によって使い分けできる。含有量が中程度の品種は醤油に適し、高いものは豆腐、納豆に適している。
持続可能な農業で優位性発揮
カナダ大豆の優位性は、生産農家の意識が高く革新的で、最新の技術を駆使して効率的に生産できることだ。肥料、除草剤、殺虫剤といった生産資材は最小限に抑えながら高い収量を上げられる。GMO、Non-GMOの生産は農家自身が決める。Non-GMOの生産は管理の作業量が増えるため、農家はプレミアム価格を得て管理コストを相殺している。農家は特に食品用大豆生産に誇りを持っている。確実な管理で、ユーザーが高品質な大豆製品を作れるように努力している。
また、カナダIPハンドリング認証制度を設けている。これはカナダ政府が管理し、品質、トレーサビリティを農場から最終ユーザーにわたるまで網羅する世界でもまれな制度。
さらに2023年には「持続可能性検証済み大豆」の供給を開始した。バリューチェーンを通して最新技術で生産量と加工能力を上げると同時に将来の世代のために、大気、水、土壌の質を維持するよう努めている。
加えて、信頼性のあるインフラ網を整えている。近代的で高速・高容量の穀物エレベーターを全国に整備し、農家が生産した高品質な大豆の品質を維持したまま国際市場まで運ぶことができる。
カナダの大豆生産地域はさまざまで、それぞれの地域で気候が若干異なる。そのため、各地で栽培される品種も異なり、多品種が生産できる。食品用大豆品種データベースでは、ユーザーが希望する品質基準に見合った品種を検索することができる。
カナダ大豆協会の今後の活動に期待
カナダ産食用大豆の日本向け輸出量は、ここ5年間ほぼ横ばいで推移している。輸出先として日本は重要な市場とあって、カナダ大豆協会はさまざまな活動を実施している。全国豆腐品評会には「カナダ大豆賞」を設けている。2月にはカナダ大豆協会が訪日しセミナーを開催。カナダの大豆農家と、日本の大豆食品メーカー、輸入業者、卸業者などが出席し、カナダの大豆業界について情報収集した。農家が、2023年産の作柄の振り返りや持続可能な取り組み状況、2024年の生産量予測について語った。懇親会では日本とカナダの参加者が直接交流した。セミナーとは別に日本の5社の豆腐、納豆、豆乳などのメーカーと情報交換し、カナダの大豆状況について説明した。
2024年からは電子ニュースレター「SOY TALK」を年4回配信。生育状況、イベントなどの情報を提供する。
引き続き、活発な情報交換と高品質な食品用大豆の増産に期待が寄せられている。