緊急事態宣言延長 取引業者さらに苦境 飲食店、時短営業の影響深刻

卸・商社 ニュース 2021.02.05 12183号 01面

 政府が2日、10都府県で緊急事態宣言を1ヵ月延長したのを受け、外食取引業者の先行きがさらに厳しさを増しそうだ。宣言が再発令された先月7日以降、飲食店への時短営業要請のあおりで、業務用卸や酒類・食材メーカーなどの売上げが激減。政府は延長に伴い飲食店取引業者に支払う一時金の引き上げなども実施するが、業界実態にそぐわない支援策と疑問の声も強い。各社は新規販路の開拓や一層の経営合理化などを模索し、自助努力で難局を耐えしのごうと必死だ。(篠田博一)

 前回の緊急事態宣言では一斉休校や外出自粛、飲食店休業などの影響で食品スーパーに客が殺到。過剰な買い占めによるサプライチェーンの混乱が発生したが、「今回は店頭で欠品が起きた事例はほとんどなく、物流センターに社員を派遣するなどの対応にも迫られなかった」(大手食品卸)。小売業が事前に在庫を厚めに持ったことや消費者の購買行動に冷静さがみられたことで、家庭用チャネルは大きな混乱もなく推移した様子だ。

 一方、飲食店など外食産業向けに商品を納入する業務用市場は、過酷な状況に陥った。1日6万円の協力金で飲食店が営業時間短縮の要請に応じた影響を受け、「1月の売上げは4~5割減になる見込み。居酒屋など夜が主体の業態向けはもっと悪い」(首都圏の外食主体卸)、「個人飲食店向けの1月売上げはほぼ全滅」(外食事業を手掛ける大手食品卸)など悲鳴が上がる。

 業務用卸には高齢者施設や社員食堂などの業態へ供給を行う企業もあるが、「デイサービスの休業状態に加え、大手企業のテレワークの実施などが事業所給食に影響」(給食主体卸)し、外食以外でも売上げ減を強いられる厳しい状況だ。

 緊急事態宣言の延長で対象地域における飲食店の時短営業が継続することから、「先の見通しが全く立たない」(外食卸)と深刻な声も聞かれる。政府は延長に伴い、取引先支援の一時金を40万円から60万円へ増額する方針を示したが、業務用流通の業界規模や実態を考慮すれば、あまりにも少ない額だ。

 日本外食品流通協会(外食協)はこれに先立ち、1月25日に農水省へ業界支援を求める要望書を提出。政府の支給要件や額が実態に即さないとし、改善を求めていた。支援の見直しが早急に進むかは別として「世間に飲食店だけでなく、納入業者の苦境が理解されるきっかけにはなった」(外食協)と語る。

 業務用卸は今後も売上げ回復の見通しが立たない中、販管費のさらなる削減へ雇用調整助成金の活用や時短営業などの合理化を模索。業務用比率の高い酒類や冷凍食品メーカーも飲食店の支援を模索しつつ、宅配や日中消費への提案強化、巣ごもり消費で堅調な家庭用へ新たな手を打つ動きが強まっている。

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