72候を楽しむ漢方スローライフ(110)麦秋至る

2019.05.01 286号 08面
サンマのしそ巻き焼き

サンマのしそ巻き焼き

 輝く太陽の下で(小満末候 5月31日~6月4日頃)

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 麦が熟し、たっぷりと黄金色の穂をつける頃。麦を収穫するこの時期を、“実りの秋”にちなみ“麦秋”と呼び習わします。春が過ぎ、気づけば汗ばむ陽気の初夏。太陽の光をいっぱいに浴びて、草木も動物も虫たちも、すべての命がキラキラと輝き出す季節です。

 ●「五月病」を見逃さない

 新年度のスタートからひと月ほど経ち、溜まった心労から気分が憂うつになる「五月病」。“ただの疲れ”と見過ごしがちですが、やる気が起きない、不眠、食欲不振などの症状を感じたら“こころの不調”と考えて。症状が重くなる前に、積極的なケアを心がけましょう。

 漢方では、体内の「血(けつ)」は精神を安定させ、「気」は心身のエネルギーになると考えます。臓器では、血を巡らせる「心(しん)」と、気・血を生み出す「胃腸」が精神の状態と関わります。そのため、過労や心労で体内の気・血を消耗し、心と胃腸の機能が低下すると、五月病などの精神トラブルが起こりやすくなるのです。

 ●胃腸と心を元気に

 “こころの不調”を改善するには、消耗した気・血を養い、心と胃腸を健やかに保つことが大切です。特に、気・血を生む胃腸が弱いと心身のエネルギーや栄養が不足して、ますます元気を失ってしまうことに。腹八分目、温かい飲食など、日頃から胃腸をいたわる食生活を心がけましょう。

 気持ちをリラックスさせて、体内の気の巡りを整えることも心がけて。長い人生を考えると、いまの悩みはほんの通過点。それくらいの気持ちで、少し肩の力を抜くことも大切です。

 食材は、血を養い心を整えるサンマ、イワシ、なつめ、小麦粉、胃腸の働きと気の巡りを整える青じそ、梅干し、オクラ、大根などがおすすめです。

 ◆ハレの日薬膳レシピ:サンマのしそ巻き焼き

 気を補い、気の巡りをよくする食材で気うつを解消しましょう

 エネルギー253kcal たんぱく質11.7g 塩2.2g(1人分)

 <材料・2人分>

 ・サンマ(またはイワシ)………………………2尾

 ・塩・こしょう……………………………………少々

 ・セロリ(葉付き)………………………………30g

 ・青じそ……………………………………………4枚

 ・梅干し……………………………………………2個

 ・なつめ……………………………………………2個

 ・オクラ……………………………………………2本

 ・小麦粉……………………………………………大さじ1

 ・サラダ油…………………………………………適宜

 ・大根(おろす)…………………………………100g

 ・きんかん(またはゆず)………………………少々

 <作り方>

 (1)サンマは3枚におろし、塩・こしょうをする。

 (2)梅干しは種を取り、包丁でたたいてペーストにする。なつめは湯につけてやわらかくして、種を除いて細かく切り、梅干しのペーストと混ぜる。セロリは4cm長さの拍子木に切る。

 (3)サンマの身の方に青じそをのせて、その上に(2)のペーストをのせ、セロリを芯にして端からしっかりと巻き、つまようじで止めて小麦粉を薄くつける。

 (4)フライパンに油を熱し(3)を入れ、表面に焦げ目をつけるように転がしながら焼く。中まで火を通すためにサンマを立ててフライパンの表面から5cm位まで水を注ぎ、フタをして蒸し焼きにする。中まで火が通ったら取り出す。

 (5)(4)を器に盛り、セロリの葉、大根おろし、スライスしたきんかん、ゆでて斜め切りしたオクラを添える。

 レシピ=篠原淑子(東京栄養士薬膳研究会)

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 24節気72候は、古代中国で始まった暦が日本でも取り入れられ、風土気候に合わせ明治まで使われていました。日々の中に少しずつ感じられる季節の移ろいを、楽しみましょう。

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