ふじのくに総合食品開発展2021

◆ふじのくに総合食品開発展2021:静岡県最大規模 豊富な農芸品「食材の王国」

総合 2021.02.05 12183号 10面
川勝平太 静岡県知事

川勝平太 静岡県知事

◇川勝平太静岡県知事に聞く

豊かな自然の下で育まれた多彩で高品質な農林水産物が生産される静岡県、農林水産物は439品目にも上る。豊富な食資源を生かした「食の都づくり」構想は国内外からの関心を引きつけ、県内産業を活性化させる関係するすべての人々を幸せにする取組みだ。その一環として2月9日から「ふじのくに総合食品開発展2021」を開催。静岡県内の農林水産業者、食品加工業者らの販路開拓による所得向上を目的とする。会期は3月8日まで。今年は史上初のオンライン方式を採用した。商談会公式サイトから出展者へのサンプルや見積もり依頼、オンライン商談の申し込みが可能。主催は静岡県を含む8団体からなる、ふじのくに総合食品開発展実行委員会。開催を間近に控え、商談会の開催意図や抱負を川勝平太静岡県知事に聞いた。(立川大介)

–「食の都づくり」構想の12年の歩みと成果については。

川勝 本構想は私が知事就任時(09年)に、本県が国内でも圧倒的な食材数を誇り、また、その品質は非常に高く、いわば農業の芸術品「農芸品」と呼ぶにふさわしい食材の宝庫「食材の王国」だと判明したことが始まりです。大地の恵みを大切にしない文化は滅びるという先人の教えもあります。そのため、われわれは本県の多彩で高品質な農芸品や加工品のブランド化を図るとともに「文化・食育・学術・人材育成・情報発信・産業」の六つの分野に「おいしく」「楽しく」「美しく」「賢く」いただく視点を取り入れ、既存の組織・ネットワークなどを活用して各地域の特色を生かした「食の都」づくりを推進。ひいては、本県産農林水産物の需要創出と消費拡大につなげ、国内外の憧れを引きつける「食の都しずおか」を目指しています。

まず、本構想の推進役を担う優れた料理人を表彰する「ふじのくに食の都づくり仕事人」制度では、現在までに493人を表彰しました。「仕事人」は「食の都しずおか」の「教授」として、全世代への食育や食文化の振興に貢献しています。また、国籍や宗教を問わず、誰もが安心して最高の食を楽しめる「食の都」を実現するため、ハラールをはじめとする多様な食文化に対応した環境整備を進めています。そのほか、本県独自の認定基準に基づき、国内外に誇る価値や特徴を備えた農林水産物を認定する「しずおか食セレクション」(現178品)や、本県の魅力を生かした新たな加工食品を表彰する「ふじのくに新商品セレクション」(現142品)を立ち上げ、本県の食材や加工品の付加価値向上に取り組んでいます。

–コロナ禍で川勝知事が提唱された「バイ・シズオカ」「バイ・ふじのくに」「バイ・山の洲(くに)」構想とは。

川勝 東京一極集中は人口減少による地方の疲弊を招きましたが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う生活スタイルの見直しから地方回帰の流れが見られる今こそ、東京一極集中を是正し「ポスト東京時代」の地域づくりを進める必要があります。

その上で「バイ・シズオカ」は、GDPの5割以上を占める個人消費の動向に着目し、新型コロナで影響を受けた人々が、お互いに買い支えて個人消費を上げる、いわば「幸せの経済学」の実践です。県を越えた移動が制限される情勢下で、県民が「しずおか 手しお屋」(JA静岡経済連)といったECサイトを通じて県産品を積極的に購入するなど、三密に配慮した「非接触・遠隔型」の取組みから段階的に推進することで着実に県内経済の回復を図っています。

富士山を共有する山梨県との連携事業「バイ・ふじのくに」は、20年5月に長崎幸太郎山梨県知事に快諾いただきスタートしました。この取組みは、実施しない場合と比較し、約1.5倍の経済波及効果があると試算されています。具体的には地域企業や農業団体と連携して、量販店での即売会や学校給食への特産品の提供、両県産品の詰め合わせセット「ふじのくに愛情パック」の通販など、相互の財やサービスの活性化に力を注いでいます。さらに20年11月には前述の取組みを深化させた相互経済交流事業「バイ・山の洲(くに)」に山梨・長野・新潟県から賛同を得ました。4県では総人口がオーストリア相当の約900万人、GDPでは38兆円でノルウェーに匹敵する一大経済圏となります。国土の縦軸に新たな広域経済圏を形成し、域内完結型のサプライチェーンを構築することで、利他と自利で支え合う共同社会を作り上げるとともに、「山の洲」が日本全体を活性化する中核になることを目指しています。

–「ふじのくに総合食品開発展2021」への意気込みは。

川勝 本県は、製造品出荷額17.5兆円(2018年度)で全国4位を誇るものづくり県です。食料品や飲料などを合計した食品関係の製造品出荷額は2.2兆円で、豊富な素材と優れた加工技術があります。その食品関連産業の事業間取引を支援するため09年から開催するのが同商談会です。いまや県内最大規模の食品関連展示商談会として定着するだけでなく、富士山静岡空港を核とした地域交流で友好関係を結んだ北海道、鹿児島県などの県外企業や米国ネブラスカ州、韓国、モンゴルなどの海外企業との経済交流の場を提供するなど、個々の事業者とバイヤーとの商談にとどまらない国際的な商談会へと成長しました。

今年は情勢を踏まえオンライン方式を採用し、会期を1ヵ月としました。コロナ禍において、関係するすべての生産者や事業者を支えられる商談会となることを願っています。また、これまで日程や距離の都合で参加がかなわなかった事業者も参加が可能になりました。この機会にぜひ、全国の皆さまに「ふじのくに総合食品開発展」に御参加いただき“とっておきの逸品”を発掘していただけることを期待しています。

※取材は1月8日、リモートで実施

川勝平太氏(かわかつ・へいた)1948年8月16日生まれ、京都市出身。72年早稲田大学第一政治経済学部卒、75年同大学院経済学研究科修士、85年オックスフォード大学博士。90年早稲田大学政治経済学部教授、98年国際日本文化研究センター教授、2007年静岡文化芸術大学学長、09年静岡県知事就任、現在3期目

●「ふじのくに総合食品開発展2021」2月9日~3月8日まで開催

https://www.fujinokuni-fpd.jp/

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