主要乾物は特需後も堅調 だし取り需要に商機 巣ごもり深まり多様化

農産加工 ニュース 2020.09.09 12111号 11面

 乾物市場はコロナ対策の内食増で春先から需要を伸ばし、緊急事態が解けた特需以後も堅調に推移している。調理用途で伝統乾物以上に伸ばしているのが加工品のつゆの素といった液体・粉末調味料。だし取りで競合して圧倒される面も見られ、今後の伸びしろになりそうだ。(吉岡勇樹)

 海苔や削り節をはじめとした主要カテゴリーはおおむね3~4月に特需のピークを迎えた。コロナ対策は2月末の政府の休校要請から始まり、外出自粛、緊急事態宣言と続いた。家庭内食は3月から前年比2桁増と急伸。常温保存できる加工食品の消費も急増し、乾物も備蓄需要を得た。

 海苔は増えたご飯食のお供として実用が進んだ。月次推移でも前年割れはなく、緊急事態が解かれた5月以降も好調。前年同期の値上げの裏年という影響を全く感じさせない。外出自粛で失った弁当需要を補い、上回って、ご飯周り商材の代表格という地位を強固にした。嗜好(しこう)品から必需品へ価値を高めている。市場規模で海苔に続く削り節は、鰹節を小分けにしたかつおパックが拡大。冷や奴やおひたしなど副菜のトッピング用途で伸ばした。ワカメは前年夏から販売を増大していただけに反動減がみられる。

 ごまと昆布も順調だが、気がかりなのが煮干し、椎茸といっただし取り向きの乾物。4~5月だけ好調で市中在庫を回転させ、ヘビーユーザーの二重在庫で終わった感がある。高実績の削り節や昆布でも内情は同じ。調理用のかつおパック、塩昆布を成長させた半面、だし用の花かつおや混合節、昆布そのものは春以降が不調。煮干しも内実は即食タイプだけ伸びている。加工度と簡便性を増したつゆ、風味調味料にだし取り用途を奪われている。

 つゆは今期、乾麺の月次からも明らかだが、ストレートといった麺用途で絶好調。さらに濃縮タイプの調理用途も主要各社揃って好況だという。トライアル向きの中容量・濃縮500mlの伸長率がおよそ20%増と抜き出ている様子。原料にこだわったアッパー商材や白だしのさらなる好業績も伝えられ、若年層をはじめとしたノン・ライトユーザーの市場誘引が見られる。

 つゆ一本で煮炊き、炒め物の味わいが決まる基本価値は料理ビギナーにも最適だ。調理機会は高止まりしたままで、健康的な生鮮食材の味わいを低脂肪で増す、だしの機能性は着実に浸透している。栄養十分な健康体づくりは当然、コロナ共存の自衛ニーズに合致する。

 使い勝手が良い半面、特に濃縮つゆは味付けが画一的になりやすい。自分で味付けできる、調味料・エキスなしのだしパック人気も今期のトピック。巣ごもりが深まれば調理と食材、調味料、だし用乾物の多様化も望めそうだ。

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