10月1日から軽減税率 小売・外食、価格対応に苦心 ポイント還元で消耗戦危惧

総合 ニュース 2019.09.30 11950号 01面
食品は消費税率8%に据え置かれるが、酒類は税率10%に。増税前の駆け込み需要を狙う

食品は消費税率8%に据え置かれるが、酒類は税率10%に。増税前の駆け込み需要を狙う

あす10月1日から消費増税に伴う軽減税率とキャッシュレス化推進のポイント還元策がスタートする。酒類を除く食品は税率8%で据え置かれるが、外食は10%に引き上げられる。複数税率の導入で小売や外食では価格の対応に苦心する。その上、ポイント還元も対象となる中小の事業者と対象外の大手との間で公平さを欠く。ポイント合戦による値下げ圧力が強まり、消耗戦を危惧する声も多い。(山本仁)

軽減税率では酒類を除く食品と週2回以上発行の定期購読の新聞が税率8%に、外食を含めてそれ以外は10%になる。有力な食品スーパー(SM)各社の話によると、駆け込み需要で日用雑貨は前年同月比で2桁の伸び、酒類も前年を上回る水準で推移しているというが、企業によってバラつきがあるようだ。

軽減税率の導入で外食扱いとなる店内飲食の対応も求められる。イートインコーナーがあるコンビニエンスストアやSMでは支払時に店内飲食する旨を申し出るようにポスターで掲示する。一人一人の客に従業員が確認するのは物理的に困難だが、一部の客は申告しない可能性もあり、利用者間で不公平感を招く恐れがある。

テークアウトができる外食企業も価格対応に苦心する。店内飲食の本体価格を下げて、持ち帰りの税込み価格と統一するチェーンがある一方、本体価格を変えずに税率10%の店内と8%の持ち帰りで税込み価格を別にするチェーンもあり、判断が分かれた。

ポイント還元策は現金以外のキャッシュレスで決済すれば、中小店で5%、コンビニエンスストアなどフランチャイズチェーンで2%が還元される。追い風になる中小のSMが加盟するシジシージャパンでは電子マネー「コジカ」で83社約1200店、クレジットカードで138社約1900店が対象となる。全日食でも1000店で還元が実施される予定という。ポイント還元をてこに新規客を獲得し、支援策が終わる来年6月までに固定客にできるかが問われる。

一方、ポイント還元で価格競争の激化を懸念する声もある。還元策に対し、小売4団体は官主導による過度な価格引き下げ競争を通してデフレの再燃を招きかねないと大きな憂慮を示し、経済産業省に抜本的な見直しを求めた。

日常消費の回復に力強さを欠く中、小売も増税対策を打ち出している。SM最大手のライフコーポレーションは10月1日からの10日間、開店から午後2時までにスマートフォン決済「PayPay(ペイペイ)」の利用で、購入額の10%を還元する同社限定のキャンペーンを行う。マルエツとカスミは9月中旬から店内販促対象商品を2社合計で4100品目に拡大し、節約志向に備える構えだ。

増税を前向きにとらえる見方もある。EDLP(毎日低価格)で顧客の支持が高いオーケーの二宮涼太郎社長は「10月以降、今まで以上に価格にシビアになる。追い風と考え、新しいお客さまに来店してもらえる機会にしたい」と話す。

増税を機に人件費を含めコストが高止まりした中で価格競争による消耗戦を強いられれば、企業間の優勝劣敗が進み、業界の淘汰(とうた)・再編を大きく促す可能性がある。

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