食品・酒類大手30社19年度業績 マイナスインパクト相次ぐも底堅い成長を維持

総合 決算 2020.06.10 12063号 01面

本紙は独自基準に基づき、食品・酒類メーカー19年度業績(19年11月~20年3月期)における売上高上位30社のランキングをまとめた。1部上場で売上高に占める食品・酒類構成比が5割以上、または加工食品2000億円以上の企業が対象。加工食品やアルコールを主体に扱う大手メーカーを網羅・比較するため、これら基準を適用した。19年度の食品業界は値上げや増税、自然災害の多発など消費面のマイナスインパクトが相次ぎ、期末には新型コロナウイルス感染拡大に伴う未曽有の事態が発生。例年になく劇的な変化に揺さぶられた年となったが、海外事業や主力商品の拡大などに支えられ底堅い成長を維持。恒常的な人手不足や原料費の上昇など厳しい収益環境ながら、過去最高益を更新したメーカーも相次ぐ。(篠田博一)

●過去最高益の更新も

19年度は別表の通り、15社が増収を確保。決算期変更など一部イレギュラーな要素もあるため18年度との単純比較はできないものの、30社合計の売上高は21兆5184億5500万円(前年比0.8%増)のほぼ横ばいで着地した。

26%の最大の増収幅を示した日清製粉G本社は、豪州子会社や中食サプライヤーのトオカツフーズの新規連結効果が寄与。同社に続く高い伸長率を示したのが、日清食品HD(4.0%増)、東洋水産(3.7%増)の即席麺大手。国内外の成長に加え、新型コロナ影響による内食需要の増大で第4四半期の国内即席麺事業の大幅な伸びが寄与した格好だ。同様の傾向は他社のパスタやプレミックス、冷凍食品分野などでも顕著。ニチレイの第4四半期の家庭用冷食はピーク時20%超の伸びを示し、同事業を通期7.6%増へ押し上げた。

酒類・飲料大手は海外事業がHDの決算に大きく影響を及ぼす構造だが、昨年の相次ぐ天候不順は夏季商戦など国内事業に逆風となった。アサヒグループHDは主力のビール類の苦戦で酒類事業が3.5%減、一方でキリンHDはビール類が2年連続プラスも酒類トータルでは0.5%の減収。酒類の総市場が停滞する中、減収には低価格のRTDや新ジャンルがシェアを高めた影響も出ている。

営業利益では明治HDが初の1000億円台を突破したのを筆頭に、キッコーマンや森永乳業、ハウス食品G本社などが過去最高益を更新。そのほか、即席麺や食肉加工大手が軒並み2桁の増益を確保したのが、19年度の主立った傾向だ。昨年実施した価格改定や主力品の拡販、生産面の合理化効果のほか、海外事業の収益改善・回復などによる。

明治HDの営業増益は8期連続、売上高・利益とも食品カテゴリー首位に立つ。キッコーマンは好調な海外事業が利益の7割を担う構造となり、森永乳業は高付加価値な機能性ヨーグルトの拡大やPM改善の推進などが増益寄与。ハウス食品G本社はグループ横断の調達・生産体制の最適化で増益を果たした。

20年度は新型コロナ影響による業務用市場の落ち込みや海外事業の不振、節約志向の長期化など、極めて先行きが不透明だ。各社は内食需要を掘り起こす取組みやEC対応の強化、低価格志向の広がりを見据えた合理化徹底などに努める方針だ。多くの企業は新型コロナの影響が不確定なことから、現時点で見込める通期業績予想を開示しているが、すでに日本ハムが中計の定量目標を見直し、キユーピーも今期業績を下方修正するなど影響は発生。キッコーマンは21年3月期予想を非開示。マルハニチロは第2四半期予想のみ示し、通期では合理的算定が可能になり次第、速やかに開示するとしている。

◆大手30社決算トピックス

https://news.nissyoku.co.jp/news/tanakak012209235

◆大手30社新型コロナによる影響と見通し

https://news.nissyoku.co.jp/news/tanakak012305260

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