2022年5月度、外食動向調査 フードコンサルティング

2022.08.01 522号 05面

 ●2桁増も気になる動き

 日本フードサービス協会が発表した外食産業市場動向調査によると、5月の外食売上げは前年同月比20.4%増で6ヵ月連続の増加。客数(前年同月比12.5%増)、客単価(7%増)とも大きく伸びたことが寄与した。前半はゴールデンウイーク期間であり、晴天が続いたことから外出する人も一気に増えた感がある。表にある通り、昨年好調だったため反動減的な数値となった「KFC(ケンタッキーフライドチキン)」や「NATTY(ダンダダン餃子)」、営業自粛要請に従わなかった「グローバルダイニング(ラ・ボエム)」を除けば、ほとんどの業態で前年比100%超えとなった。

 行動制限の撤廃やインバウンド受け入れ再開の動きも、外食活性化の起爆剤となる期待が高まる中、他人事とは思えない気になる動きが起きていたため、少し触れてみたい。

 ●「スシロー」の景表法違反(おとり広告)問題

 まさか、あのスシロー(株式会社FOOD&LIFE COMPANIES)が、という気分である。ニュースでご存知の方も多いと思うが、ウニやカニなど人気の食材を使ったキャンペーン商品について、実際には在庫がなかったり、商品供給をやめていたにも関わらず広告を出し続けたことで、お客さまを誤認させたとして、消費者庁から再発防止を求める措置命令が出されたのである。

 また、子会社の京樽でも原材料の産地を誤って表示したほか、一部のスシロー店舗で生ビール半額キャンペーンの開始前から店内にポスターを掲示し、それを見て注文したお客さまからクレームが入るトラブルもあり、回転寿司最大手かつ勝ち組外食チェーンと認知されているあのスシローが、と首を傾げざるを得ないトラブルが立て続けに起きているのだ。

 誰もがスマホを持っている時代であり、SNSなどで簡単に情報を共有できることから、「せっかくお店に行ったのに品切れだった」とか、「先週も品切れ、今日も注文できない」など、キャンペーンと実態が異なる事例が多発し、不審に思ったお客さまが消費者庁にタレ込んだ、というのが実情かもしれない。

 スシローといえば、親会社トップの水留浩一社長を筆頭に優秀な経営陣を誇る優良企業であるが、組織の拡大に伴い、現場との意思疎通がうまく回らなくなっているのか、あるいは直近のコロナ禍によるさまざまな影響、特に離職による人手不足が影響しているのであろうか。

 いずれにしても、他人事とせずに、特に現場(店舗)とのコミュニケーションの在り方、頻度などは、現場スタッフの士気にも大きく影響を与えることから、できるだけこまめなフォローを心掛けたい。

 ●「フジオフード」の是正勧告

 「まいどおおきに食堂」などを展開するフジオフードは、アルバイトスタッフが制服に着替える時間を労働時間としては認めず、賃金を支払わなかったことから労働基準監督署の是正勧告を受けていた。労基署は、着替え時間は労働時間に該当するとして、過去2年分の対象時間の賃金を支払うよう同社に命じたが、同社が支払わなかったことから、労基署に相談したアルバイトスタッフを支援していた「首都圏青年ユニオン」という労働組合が記者会見を行い、ニュースになったものである。

 この聞き慣れない「首都圏青年ユニオン」という労働組合だが、個人でも失業中でも加入でき、過去には「ゼンショー(すき家)」の労働条件改善闘争や「日本レストランシステム(洋麺屋五右衛門)」の未払い賃金闘争を勝ち取ったと主張しており、共産党および同党の支援組織がバックについているようだ。

 労働時間の扱いは、労使ともにやっかいな問題であり、「タバコ休憩」や「休憩時間中の接客従事」など、事細かに突き詰めていくと現場が回らなくなる可能性も高いことから、線引きが曖昧なことは周知の事実だ。

 特に外食は人手不足が常態化しており、今いるスタッフや登録しているアルバイトの稼働率を維持する、あるいは上げていくことが、人手不足の緩和には最も現実的である。

 現場のわがままを受け入れるのではなく、普段からパートアルバイトを含めた現場スタッフの不満や要望を拾いつつ、改善ロードマップを提示するなど、今できる事と、これから順次改善していく内容に分けて示すことで、会社も努力していることを理解してもらう工夫も必要だ。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら