メニュートレンド:コースで昆布の魅力を発信 肉類や醤油など使わず味を構築
昆布らぁめん 1,152(いいこぶ)円(税込み)+ワンコンブ制 ワイングラスで、羅臼昆布・真昆布・利尻昆布の昆布水を試飲。ラーメンには、おぼろ昆布、タケノコ、鶏むね肉のチャーシュー、炙って刻んだ油揚げなどをトッピング。昆布佃煮のミニおむすび付き
●40代以上に好評の“あっさり系”
京都は、さまざまな店がしのぎを削るラーメン激戦区。2023年にオープンした「昆布と麺 喜一」は、「ラーメンは提供するが、ラーメン店ではない」という異色の店だ。コース仕立てでラーメンを出すというユニークな提供方法で、昆布の魅力を発信。昆布店の挑戦は評判を呼び、“あっさり系”ラーメンを求める客で営業日は毎回満席の人気である。
同店があるのは、1902年創業の「五辻の昆布」本店2階。一枚板のカウンターが据えられたスタイリッシュな店内は、おしゃれな割烹という雰囲気だ。営業は3部制で、各回10席の完全予約制で運営する。
「現代の日本では、料理でだしをとらず、食卓が洋風に変化するなど、消費者の昆布離れが進んでいます。『昆布の価値を再確認してもらいたい』という思いから、ラーメンでのアプローチを考えました」と、代表の久世章斗さん。来店者は40~50代が多く、6割が女性客という。
コースでは、まず水出しの昆布水3種類を試飲し、味・香り・色の違いを体験する。次は、目の前でのおぼろ昆布の手削り実演と試食。迫力ある作業と美しいおぼろ昆布の姿を目の当たりにした客からは、感動の声が上がるとか。
メインの「昆布らぁめん」は、料理人として活躍する知人からアドバイスを受けて考案したメニュー。鶏や豚などの肉類や油、醤油、みりん、塩を使わずにスープの味を出しているのが特徴だ。
逆浸透膜浄化装置で生成した超軟水を使用し、ベースには、真昆布・羅臼昆布・利尻昆布をブレンド。鰹節など4種類の魚介節、スルメ、貝、木の実、茶葉から水出しでだしを抽出して塩分を調整し、スープを構築している。「らぁ麺とうひち」に特注した和そば感ある全粒粉麺が、あっさりしたスープにマッチする。
価格は、ラーメン代金に、1階の店舗で好きな昆布商品を購入して課金する“ワンコンブ制”。昆布らぁめんは、昆布の啓蒙と共に自社商品のファンを増やす役割も果たしている。
●店舗情報
「昆布と麺 喜一」
経営=いつつじ/店舗所在地=京都市上京区五辻通千本東入る西五辻東町74ー2 五辻の昆布本店2階/開業=2023年5月/席数=10席/営業時間=11時~14時((1)11時~(2)12時~(3)13時~の3部、完全予約制)。不定休/1日平均集客数=30人
●愛用食材・資材
「利尻昆布」 稚内漁業協同組合(北海道稚内市)
昆布3種をスープに活用
同店では、ラーメンスープのベースに、真昆布・羅臼昆布・利尻昆布の3種類を活用する。「醤油やみりんを使っていないので、味を安定させておいしく仕上げるのが苦心する点」と、久世代表。味の出方が繊細でぶれやすいため、だしをとってからの工程やスープの温め、提供するタイミングなど、日々研究しているという。