メニュートレンド:掘って食べる山盛り明石焼き

2021.02.01 504号 01面
(写真奥)=吸盤から揚げ 600円(税抜き)、(手前)=ふわふわ明石焼き 1,200円(税抜き)

(写真奥)=吸盤から揚げ 600円(税抜き)、(手前)=ふわふわ明石焼き 1,200円(税抜き)

メレンゲ状態の卵焼きがふんわり

メレンゲ状態の卵焼きがふんわり

ぶつ切りのゆでタコ、卵黄4個分、ちぎったはんぺん、泡立てた卵白を加える

ぶつ切りのゆでタコ、卵黄4個分、ちぎったはんぺん、泡立てた卵白を加える

鉄皿に盛り、ぶつ切りタコを表面に埋める

鉄皿に盛り、ぶつ切りタコを表面に埋める

オーブンで焼き上げると1.5倍ぐらいに膨らむ

オーブンで焼き上げると1.5倍ぐらいに膨らむ

 タコは食材としての実力は十分ながらも、これをメインに据えている和食店は少し珍しい。東京・千駄木の「三忠」はタコ料理を掲げた異色の店だが、名物料理の明石焼きがまた独創的だ。山盛りの明石焼きを複数人でシェアし、山を掘り進むようにスプーンですくいながらだし汁につけて食べるという、味わいこそ明石焼きながらも、見た目、提供法、食べ方は従来の明石焼きとは一線を画す、新タイプのグルメである。

 ●4個分の卵をふんわり

 「三忠」は海鮮料理が自慢のごく普通の和食店としてスタートしたが、ある時、生のタコを仕入れたのを機に、佐藤由之店主はタコの面白さと魅力に目覚めたという。その後、タコを使った料理が徐々に増え、気づいたらメニューの約半分がタコ料理という一風変わった和食店になっていた。「“タコ料理店”というのは珍しくて、人を呼び込む力があるようです。単に『おいしいものを食べに行こう』ではなく、『タコでも食べに行こうか』の方がちょっと楽しくて、来店の強い動機付けになる(笑)」と、佐藤店主は話す。

 そして、タコを掲げる同店の名物料理が「ふわふわ明石焼き」だ。どう見ても明石焼きとは思えないあっと驚くその見栄えと、ふんわり食感、絶妙なおいしさは、一度味わったら誰かに紹介せずにはいられないインパクト抜群の一品だ。作り方は、卵4個を使用し、卵白をミキサーで3分半ほどをかけて丹念に泡立て、卵黄、手でちぎったはんぺん、ゆでたタコのぶつ切りを加えてさっと混ぜる。これを油を引いて熱した鉄皿に山盛りにし、表面にもぶつ切りタコを埋め込み、オーブンで5分ほど焼き上げる。卵だけで作ると味が物足りないことから、はんぺんを混ぜている点も気が利いている。このはんぺんのおかげで味に塩味と深みが加わり、食感のアクセントにもなっている。

 同メニューは過去にメディアでも何度か取り上げられたことがあり、そのたびに若い層を中心にお客が殺到するという。「テーブルに運ぶとわっと盛り上がる。でも、こればかり頼まれちゃうから、最近は取材を断っていますよ」と佐藤店主は苦笑する。

 ●店舗情報

 「三忠」 所在地=東京都文京区千駄木3-1-17/開業=1988年/坪数・席数=27坪・36席/営業時間=17時30分~23時、土日祝17時~23時/平均客単価=5000~6000円/1日平均集客数=40人

 ●愛用資材・食材

 「シビ花」 京都鰹節(京都市南区)

 素材の味を引き立てるまろみ

 風味豊かなマグロの削り節。同店では「ふわふわ明石焼き」のだし汁に、厚切りカツオだしと合わせて使用している。「カツオのだしだけでは味が強く、味のバランスを取るためにマグロのうま味も欠かせません。同品はまろみがある上品な味わいで、他の素材の味を上手に引き立てることができる。やわらかなうま味が染みますよ」と、佐藤店主は言う。

 規格=500g

 【写真説明】

 写真1:吸盤から揚げ 600円(税抜き) 「コリコリしたタコの吸盤が好きな人は意外と多い」と佐藤店主。タコを大量に扱う同店だからこそ提供できる一品だ

 ふわふわ明石焼き1,200円(税抜き) 日販10食以上売り上げる名物料理。だし汁にもひと工夫加え、細切り紅ショウガを入れている

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