外食史に残したいロングセラー探訪(81)北極星「チキンオムライス」

2013.11.04 416号 08面
一番人気のチキンオムライス。卵に包まれたライスは、ケチャップを入れたら火を通し過ぎないのもポイント

一番人気のチキンオムライス。卵に包まれたライスは、ケチャップを入れたら火を通し過ぎないのもポイント

 今や誰もが知るオムライス。このわかりやすい名前は、大阪の洋食屋「パンヤの食堂」で誕生した。1925年、大正時代の洋食が珍しかった頃の話である。卵が高価な時代、卵1個でオムライス3人分を作っていた。ケチャップライスのグリーンピースが透けるくらいだったという。薄く焼くのも、技術だった。その後、店名を「北極星」と変え、今もなお多くの人に愛されている。

 ●商品の発祥:オムライスの名付け親

 先代の北橋茂男さんが、1922年にパンも売る洋食屋「パンヤの食堂」を始めた。常連客に、胃が悪いため、いつもオムレツとライスだけを注文する小高さんがいた。浅草のフランス料理店で修業した茂男さんは、いつも同じでは飽きるだろうと、玉ネギとマッシュルームを炒めてケチャップライスにしたものを、薄焼き卵で包んだ料理を提供。すると、小高さんがとても喜び、料理名をたずねた。茂男さんが「オムレツとライスを合わせて、オムライスでんな」ととっさに答えたことが、オムライスの誕生といわれている。

 ●商品の特徴:伊勢エビオムライスが話題に

 薄焼き卵のオムライスが現在のスタイルになったのは、30年ほど前。人通りが少なかった大阪・堀江に出店する際、現社長の北橋茂登志さんが「変わったことをしないと、わざわざ人が来てくれるわけがない」と「伊勢エビオムライス 3千円」を打ち出した。話題を呼び、メディアへの露出もきっかけとなって、人気店に。手応えを感じ、オムライス専門店を決意した。

 「おいしさの秘訣は、隠し味の日本酒と甘口の醤油。強火で手早く作ることがコツ」と、茂登志さんは話す。ライスは、隠し味によってまろやかさを出し、ケチャップは入れすぎず、作り置きはしない。

 ●販売実績:80%はチキンオムライス

 現在のスタンダードメニューは、チキン、キノコ、エビなどの10種類。カキやマツタケなど、季節限定が加わる。心斎橋本店では、1日300食くらい出るうちの7~8割がチキンオムライスという。土日には行列ができ、台湾、香港、韓国などからガイドブックを片手に訪れる外国人客は、全体の4分の1ほどにのぼる。

 同社では、ボランティア活動として、小・中学校でオムライス教室をし、作り方を指導している。茂登志さんは、「オムライスは、おいしさとやさしさを包む料理。おいしいオムライスを多くの方に楽しんでほしい」と語る。「続けたいですし、店のもんにもそうあってほしいと思っています」と語る。

 ●企業データ

 社名=北極星産業(株)/本部所在地=大阪市中央区難波3-5-17/店舗数=レストラン・オムライスの店・10店、ラーメン店・1店、居酒屋・1店/事業内容=飲食業。本店は、1950年に、昭和数寄屋造りの名人といわれた平田雅哉氏によって建てられた。中庭があり、落ち着いた雰囲気。

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