業務用食品卸覆面座談会 外食産業の現状と24年展望 業界知り尽くす裏方が本音語る

2024.01.01 539号 12面
燻製風味の味付けうずら卵。「お酒のおつまみにぴったり。そのままでもトッピングとしても手間いらずで提供できる。居酒屋、バルなど飲酒業態に最適。スピードメニューの切り札として人気急上昇中」規格=2号缶(固形430g、常温)

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日東ベスト「まちのソース焼そば」 大量調理に最適  具材入りの冷凍焼そば。「宿泊施設が急回復してモーニングバイキングの提供が大変。ボイル調理で提供できる焼そばは重宝されている。定番メニューのため居酒屋

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馬肉をスライスし刺し身にして、真空パック後に冷凍。「生食用食肉の衛生基準を満たした馬肉は、まな板、包丁を使わず解凍して盛り付けるだけで高級感があり見栄えが良い。簡単に提供でき客単価をアップできる」規格

馬肉をスライスし刺し身にして、真空パック後に冷凍。「生食用食肉の衛生基準を満たした馬肉は、まな板、包丁を使わず解凍して盛り付けるだけで高級感があり見栄えが良い。簡単に提供でき客単価をアップできる」規格

 2021年の外食産業は、コロナ禍に振り回された一年だった。時短営業はもちろん酒類提供規制など、業界の根幹を揺るがすような規制が外食産業を苦しめた。10月25日には、すべての規制が解除されたが、コロナ禍の中でも「好調だった業態は」「その理由は」「原料高騰問題」「2022年の外食は」などについて、媒体・会社の垣根を越え外食・業務用専門紙・誌の記者に集まっていただき、語り合った。(司会・まとめ=日食外食レストラン新聞編集部、日本食糧新聞社本社で21年11月5日開催)

 ●値上げの対応で明暗 個店強く、チェーン店厳しい

 –2023年の外食市況は。

 A氏 ウクライナ問題をきっかけに食材、光熱費の高騰などが飲食店に重くのしかかった。あるラーメン店では光熱費が月額15万円だったのが30万円を超えた。しかし、周りの飲食店はメニュー単価を改定しているところが少ない。地方や郊外の消費者は、価格の変動に敏感で、A店が100円値上げしたら、じゃあ安いB店に行こうとなる。そういった現象を目の当たりにしているので怖くて値上げできない。

 結果、経費倒れになって、もうからない、赤字で維持できないということで閉店に追い込まれる。このような現象が現実に起きている。飲食店の倒産件数が過去最高という記事も目にする。それが実際にわれわれの得意先でも起き始めていることに危機感を感じている。打開策を考えても見つからない。企業が給与を上げて、個人の所得が増えたとしても、簡単に消費マインドが大きく変わるとも思えない。

 –卸の業績は回復しており、同様に飲食店も盛り上がっているように感じるが、そんな単純ではないと。

 A氏 価格の上昇に伴って、われわれも燃料代など経費が増えているので、会社を維持するために値上げをした。その結果、業績は改善した。だが、それを手放しで喜べる状況ではない。

 B氏 外食産業は、借入金の返済などの問題も出てくる。その辺の不安感は正直ある。

 しかし、コロナ禍で閉店した店舗は多いが、 今残っている個店はお客さんをしっかりつかんでいて、先は明るいという感じもする。

 値上げをきちっとした飲食店は売上げも順調に伸びている。厳しいのはチェーン店だ。チェーン店のお客さんと話をしたら、「ほとんど値上げができていないから、利益率が下がってどうにもならない」と言う。メニュー単価を上げられないため、質は落とさないが、例えばカキフライの2Lを使っていたところを、1Lに抑えて同じ個数にする。ちょっとしたごまかしだが、個数は同じだと。なぜ、価格を上げられないかというと、上げると他にお客を取られるという危機感からだ。

 C氏 地域差があると思う。地方ではメニュー価格を上げると、すぐに客離れが起きる。しかし、都内は周りも値上げしているので、あまり気にしていない。それ以上に感じているのが都内は再開発でビルが建ち、ザラ場の個店が減っていることだ。飲食店は、ほとんどがビルの中に入ってしまっている。卸が新規開拓しようにも、ビル中の飲食店は納入時間の問題や系列会社の関係で難しいというジレンマがある。

 それと、コロナが明けて外食で楽しもうという状況は、夏ごろまではあった。だが、秋からちょっと様変わりした。ウクライナ問題だけでなくイスラエルなど、海外状況の不安などから生活防衛意識が強くなってきたと感じる。

 一方、インバウンド需要は強く、宿泊費などは2、3倍になっている所もある。それで、宿泊施設の経営は成り立っている。だが、人手不足で満開にはできていない。飲食店も売上げを戻したくても、人手不足でできないというのも大きな問題だ。

 値上げは原料だけではなく、光熱費や物流費の上昇なども加わってくる。また、為替の問題もあるので、まだ2段階、3段階上がりそうな雰囲気もある。

 ●人手不足深刻化続く しわ寄せで「バ畜」の造語も

 –23年は、飲食店の人手不足が深刻だった。

 A氏 「バ畜」という造語が生まれるほど、アルバイトの人たちに人手不足のしわ寄せがいっているという話を聞く。今までは社員がいて、サポートでアルバイトが何人かいた。だが、社員は店舗の掛け持ちで、アルバイトに店を任せざるを得ないケースが増えている。本来の職務条件とは違うが、人手がないので、アルバイトも仕方がないと思ってやっているが、本来3時間、4時間のバイト希望のはずが6時間勤務で、学生だと勉強の時間を削ってアルバイトをしなければいけない環境だ。そして、続けられないから辞めてしまう。 実際に人手不足は深刻で、4、5店舗展開していた都心の飲食店では、ホールのアルバイトが集まらなくて2店舗しか稼働できないという所もある。

 B氏 時給は相当上がっている。さらに上げるためにはメニュー単価を上げ、人件費も 上げ、消費者も手取りが増え、経済が回っていくのがベストだが、そんなに単純ではない。

 しかし、外食産業は、コロナ禍の3年間は全滅で、アルバイトを皆切った。そこであらためて募集しても、「外食はあてにならない」という認識が根付いてしまったと思う。これは飲食店だけでなく、われわれ卸も同様だ。特に配送の人手不足は深刻だ。

 –人手不足対策で、どんな商品が売れたか。

 C氏 展示会では「人手不足対策商品」のコーナーは注目度が高かった。調理が簡単ですぐに提供できるフライドポテトは、22年はポテト不足だったこともあるが3倍ぐらい売れた。それと簡単に提供でき、客単価が上げられることから冷凍の馬刺し、明太子が好調だ。オペレーションが簡単で、客単価が上げられる商品の動きが良い。しかし、これらの商品がどれだけ人手不足に役立っているかというのは測れない。

 –23年は広島市の大手コントラクトが破綻し、学校などで給食が提供できなくなったことが起きた。集団給食市場の現状は。

 B氏 破綻した企業の理由はわからないが、コントラクト業界も厳しい。1年もしくは数年ごとに入札で委託業者が変わる。契約方法も人件費だけでなく、食材、光熱費まで給食会社が負担する場合、食材と人件費だけを負担する場合など契約条件はいろいろだ。集団給食はもともと安価で、それを10円、20円でも上げることは、一般外食以上に厳しい。給食業者はヒトが集まらないから、人件費を上げざるを得ないのでさらに厳しくなる。集団給食は、一定の食数が確保できるので安定しているように見えても内情は厳しい。

 23年夏ごろ、得意先の公共施設の給食を受託していた事業者は値上げが認められないために撤退した。行政が運営する施設でさえ値上げを渋る状況だ。しかし、不思議なことに、そこにまた新たな事業者が参入してくる。

 われわれ卸も取った取られたということはよくある。しかし、値上げラッシュの中、合わない仕事はやめようという流れになりつつある。

 C氏 行政関係は値上げが認められにくい。その一方で提出する書類が多く、規則も厳しい。以前は、公共施設と取引があることが、会社のステータスになったが、今はそういうこともなくなってきている。

 ●取引断る割り切りも 海外やインバウンドに期待

 –物流の2024年問題で卸や飲食店への影響は。

 A氏 関係者からいろいろ話を聞くと、卸業界への2024年問題の影響は限定的だろうという。大きく影響を受けるのは長距離輸送だ。運送屋とJRが協力してモーダルシフトを図るとか、今まで10t車で走っていたのが、トレーラーでけん引して、中継地点で付け替える。そうすると勤務時間が短縮されるなど、ある程度めどは付いていると聞く。

 長距離を走って稼ぎたいというドライバーが稼げないからという理由で離職してしまうと、思い描いた物流のシステムが構築できなくなる可能性がある。そういうドライバーが卸で働いてくれたら、われわれの人手不足が解消できるのだが。

 B氏 メーカーは積極的に共配を進めている。卸も同一エリアなら物流拠点を集約して、そこから各社が配送することがベストだとは数年前から考えている。M&Aではなく、ホールディング制にして共配をするとか真剣に考える時期だと思う。

 2024年問題に絡んで言うと、飲食店の「昼の納品はダメ」「休憩時間もダメ」などの要望を聞いていると効率的な配送が組めない。そういう所は「できません」と割り切らざるを得ない。

 C氏 当社は基本的に自社物流なので、人の確保が課題だ。

 B氏 今までメーカー便は翌日着だったが、中1日になってきた。

 C氏 中2日とかも出てきた。

 B氏 休みが絡むと1週間かかる場合もある。

 C氏 ゴールデンウイークや年末年始などの長期休暇の場合、1週間分の荷物を入れなければならないとなると倉庫のキャパや配送の人員などの問題も出てくる。

 –2024年の展望は。

 C氏 コロナなどの感染症がなければ、外食は引き続き好調を維持すると思う。しかし、国内外でいろいろな問題を抱えているので何が起きるか分からない。平和を願うばかりだ。

 また、値上げラッシュが落ち着くことも願っている。これ以上、上がると予想がつかない。

 B氏 日本食は、海外でブームになっている。海外の人が日本に来れば日本食を求めるからインバウンドへの期待は大きい。 当社は輸出もしているが、香港向けに日本の調味料の輸出がすごく伸びている。おそらく香港経由で中国本土の飲食店向けに流れていると思うが、メード・イン・ジャパンでなければダメだと言う。日本食は、海外でこれからも伸びていくことは間違いない。国内市場は縮んでいるけれど、輸出はますます伸び、海外市場は有望だ。

 しかし、あまり暗いことを政治やマスコミで言わない方がよい。値上がりして、生活が厳しいのが実態かもしれないが、期待も景気も盛り上がるような発信も必要だ。

 A氏 不安感の大きな要因として円安があると思う。130円ぐらいで落ち着くと環境も変わるのではないか。飲食店もこれ以上の値上げをかなりの確率で回避できるだろう。

 それとインバウンド需要。観光立国を目指すために観光地の皆さんが頑張っている。日本の伝統文化などを発信して、経済を回すことが大切だ。われわれも観光地に行っておいしい食事を食べて、外食産業に役立つアイデアを考えよう。

 <プロフィール>

 ▽A氏(63歳)=中華を中心に幅広い飲食業態を得意先に持つ。食を絡めた新たな地域活性化事業を進展中

 ▽B氏(52歳)=首都圏の飲食店、給食などの業態を得意先に持つ。首都圏業務用食品卸のまとめ役として信頼が厚い

 ▽C氏(56歳)=首都圏・関東エリアの幅広い業態を得意先に持つ。新規開拓の陣頭指揮を執り、コロナ禍前より得意先軒数は増加している

 ●A氏おすすめ

 天狗缶詰「味付うずら卵 スモーク味」 スピードメニューの切り札

 燻製風味の味付けうずら卵。「お酒のおつまみにぴったり。そのままでもトッピングとしても手間いらずで提供できる。居酒屋、バルなど飲酒業態に最適。スピードメニューの切り札として人気急上昇中」規格=2号缶(固形430g、常温)

 ●B氏おすすめ

 日東ベスト「まちのソース焼そば」 大量調理に最適

 具材入りの冷凍焼そば。「宿泊施設が急回復してモーニングバイキングの提供が大変。ボイル調理で提供できる焼そばは重宝されている。定番メニューのため居酒屋、飲食店などでも採用が広まっている」規格=1kg×6(冷凍)

 ●C氏おすすめ

 千興ファーム「鮮馬刺し 赤身スライス」 生肉提供で高級感

 馬肉をスライスし刺し身にして、真空パック後に冷凍。「生食用食肉の衛生基準を満たした馬肉は、まな板、包丁を使わず解凍して盛り付けるだけで高級感があり見栄えが良い。簡単に提供でき客単価をアップできる」規格=40g×15(冷凍)

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