将来を見据えた脱炭素化がもたらすビジネスの継続と拡大 食農分野でもサステナビリティ実現へのプラットフォーム活用を【PR】

Terrascope Japan(以下、テラスコープ)は6月27日、「将来を見据えた脱炭素化がもたらすビジネスの継続と拡大~国内外の動向と事例に学ぶ:GHG排出量の測定・分析・削減をビジネスへつなげる~」のテーマで、富士通・日本食糧新聞社の協力の下オンラインセミナーを開催。150人以上が申し込んだ。基調講演では、農林水産省大臣官房みどりの食料システム戦略グループ課長補佐小田雅幸氏から、同省のみどりの食料システム戦略について、その背景や課題と最新の施策の方向性について紹介があった。テラスコープから企業が取り組むべき課題について問題提起と同社が提供するサービスの紹介があり、富士通による講演のほか、日本テトラパック、三菱食品・ローソンによる生産と卸・小売のそれぞれの立場からの2つの事例セッションが行われた。

サステナビリティ実現に向けたプラットフォームを提供

Terrascopeシンガポール本社CEOのMaya Hari(マヤ・ハリ)氏はビデオメッセージで同社の事業について、脱炭素のSaaSプラットフォームで、食品、農業、小売の大企業がGHG排出量を正確に測定し削減するためのデジタルツールを提供していると述べた。日本では1年前に事業を開始した。排出量データの収集と測定はビジネスにおいて必要不可欠なニーズとなり、実現には同社のようなテクノロジー企業が貴重な存在になるとあいさつした。

フェリペ・ダギラ氏

同社CCOのFelipe Daguila(フェリペ・ダギラ)氏は「世界的な脱炭素化の流れと企業が取り組むべき課題」のテーマでオープニング講演した。世界中の企業を取り巻く環境は、情報開示の要求、ステークホルダーからの排出削減要求と、規制と圧力が高まる時期を迎えているという。先進的な企業は脱炭素を焦点にした価値創造にすでに取り組んでいる。

1つめのトレンドとして、ネット・ゼロに向け、データ化、脱炭素、グリーンイノベーションの3つの関連した旅を計画する必要がある。製品開発の段階から排出量を考慮すれば大きなインパクトが得られる。2つめは、ESGレポーティングが変貌していることから投資整合性を高める必要がある。3つめは、これらを数値化し損益計算書にどう影響するか理解すること。4つめは、ESGに取り組む企業には3つの異なるプラットフォームがあり、ESGのプラットフォームを探す場合、環境、ソーシャル、ガバナンスを報告してくれるプラットフォームが有効だ。脱炭素化にはカーボンプラットフォームを見ていく必要があり、水、廃棄、生物多様性については環境プラットフォームと、状況に応じて最適なものを選ぶ必要がある。5つめは、データの旅のきっかけとして支出ベース、活動量、ハイブリッドと深化していくことが重要。サステナビリティは完璧を求めがちだが、前に進むことが大事だと述べた。

消費者向け「みえるらべる」始動

小田雅幸氏

小田氏は、みどりの食料システム戦略を策定した背景や課題として、気候変動・大規模自然災害の増加、生産基盤の脆弱化、サプライチェーンの脆弱性などを挙げた。日本の農林水産分野のGHG排出量は、CO2換算で総排出量の4.2%と、世界と比べてその割合は小さいものの、その7割が水田や家畜、肥料など農業特有の活動に由来している。

同戦略の特徴として、食料システムの考えを取り込み、資材・エネルギー、生産、加工・流通、消費の各段階で生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する。直近の動きとしては、食料・農業・農村基本法の一部を改正し、農林水産業が環境に負荷を与えることを認識し、基本理念として環境と調和のとれた食料システムの確立を新たに位置付けた。

脱炭素を含めた環境負荷低減の施策として、同省の全ての事業において最低限行うべき取り組みの実践を要件とするクロスコンプライアンスの導入、「みえるらべる」の愛称で、生産者等の努力を消費者等に伝えていく「見える化」の取り組み、温室効果ガスの排出削減・吸収量をクレジットとして国が認証し、民間資金を呼び込む取引を可能とするJ-クレジット制度の農林水産分野における推進事例の紹介が報告された。

企業間連携でSX経営にチャレンジ

古川淳一氏

富士通Uvance Sustainable transformation Division古川淳一氏は、ビジネスセッションとして「富士通のサステナ経営を支えるESGマネージメントプラットフォームとその有用性」のテーマで講演。企業はSX人材の育成が急務だと述べた。

同社がグローバル企業の経営層にアンケート調査を実施したSXレポートによれば、80%がサステナビリティを経営におけるトップ5の優先課題に位置付けながら、サステナビリティ戦略を立案し実行している企業は42%、さらに具体的な成果が出ている企業は26%にとどまる。これはSX進捗が困難との表れだが、同社が目指すSX経営は、社内外のあらゆるデータを集約、デジタルリハーサルによる経営の迅速な意思決定を可能とし、企業価値向上にチャレンジしている。こうした活動を通じて同社グループはGHG排出量について13年から、SCOPE1・2・3を開示、順調に下がっている。30年までに事業活動によるSCOPE1・2はゼロを目指し再エネの100%化、SCOPE3を含むバリューチェーン全体では、40年までにネット・ゼロを目指す。社内実践のノウハウはオファリングとして提供し企業のESG経営に貢献している。テラスコープのデータ収集システムからさらにデータを収集し、社内外のデータとブレンディングすることでデジタルリハーサルを加速させ、ESG経営の高度化を行っていく。

食品業界の事例紹介として、ビールメーカーでは原材料、生産者までのトレースで顧客の信頼を獲得し手に取った商品の生産農家から出荷状態までトラッキングを可能にしてブランド価値向上を証明している。また、不透明で非効率だった国際コメ取引のプラットフォームでは富士通のデジタル技術を導入してトレーサビリティを確保している。

製造・卸・小売それぞれの削減策

1つめの事例セッションは、日本テトラパックマーケティング本部執行役員マーケティングディレクター鍜治葉子氏とTerrascopeサステナビリティアドバイザー小木曽麻里氏による「GHG排出量の把握と削減がもたらすビジネスへのインパクト」のテーマで行われた。

●日本テトラパック「CO2削減はコスト削減」

日本テトラパックは、飲料・食品用紙容器の充填包装システムだけでなく、中身製品の製造、殺菌、調合などに関わる食品加工処理機器、アイスクリームやチーズなどの製造機器やサービスまで幅広く扱うトータルシステムサプライヤーである。世界の食料システムではサステナビリティに対する課題も多く、GHG排出量の削減は重要な項目。

左から小木曽麻里氏、鍜治葉子氏

同社では、さまざまな取り組みの結果、ビジネスの成長とGHG排出量削減を両立している。2010年~20年で16%成長しつつ、バリューチェーン全体で19%のGHG排出量削減を実現した。同社が関わるバリューチェーン全体のGHG排出量削減に重要なのは、「素材の脱炭素化」と「顧客の製造工場の脱炭素化」。日本における自社包材工場では、23年から植物由来ポリエチレンによるコーティングを開始し、ほぼ100%再生可能資源でできた包材が学校給食の牛乳用紙容器に使用されている。キャップについても、販売数量の40%は植物由来ポリエチレンを使用したものになっている。顧客の製造工場では、使用する機器のCO2削減はコスト削減にもつながり、電力や水の使用量が下がるコストインパクトをどのように顧客に伝えるかが重要だ。

容器に関しては、リサイクルペットを100%使用したボトルも出てきているため、CO2排出量で見た場合の紙容器の位置付けついて、LCAを第三者機関と進めているものの、時間と労力がかかる。そこで今回、テラスコープとの戦略的パートナーシップを締結しテラスコープのプラットフォームを使用することにより、1ヵ月ほどでCO2換算値を計測でき助かっている。

計測結果からは、植物由来ポリエチレンを使用した包材とキャップの有効性が認められた。リサイクルペット100%の容器と比較し、40%程度のCO2削減が見られ、容器戦略の決定にもインパクトがある。中身製品も含めた場合、お茶や水など中身自体のCO2排出量が少ないものは、製品全体に占める容器のCO2排出量のインパクトが特に大きくなり、紙容器を使用した場合は、ペットと比較して43%削減できることがわかった。顧客は容器を変えるだけでSCOPE3を減らすことができ、お茶や水など紙容器があまり使われていないカテゴリーでの紙容器比率を上げる意義について、環境の観点からバックアップしてもらえた。

事例セッション2では、「サプライチェーンのGHG排出量の把握・課題・展望」をテーマに、三菱食品経営企画本部サステナビリティグループグループマネージャー橋本公尚氏とローソン理事執行役員SDGs推進室長鈴木一十三氏が、Terrascope Japanビジネスディベロップメントマネージャー小林正氏をモデレーターに、両社それぞれの立場からSCOPE1・2・3の取り組みを披露した。ローソンは13年、三菱食品は23年からSCOPE3を含めた排出量を公開している。

●三菱食品「卸初のSCOPE3開示」

橋本氏は、CO2排出量を30年までに16年比で60%削減という目標を掲げて順調に進んでいるという。中間流通の立場から、サプライチェーン全体の排出量を把握した上で、広く開示することによって問題提起ができると考えてSCOPE3の算出・開示に至った。テラスコープの協力で算出したが、取引先から仕入れた商品に基づくカテゴリー1が大きい結果となり、自助努力だけでは削減できないと認識しているため、今後サプライヤーと削減に向けてできることを考えていきたい。SCOPE3を算定し、開示したのは卸業界では初めてで、開示後は、取引先からどのように算出したのか等の質問が多く、一定の成果があったと考えている。

われわれは約2000社の小売業と取引があるので、今後三菱食品のサプライチェーンを使えば低炭素な商品が届けられるといった、選ばれる存在になりたいと考えている。

左から小林正氏、橋本公尚氏、鈴木一十三氏

●ローソン「GHG削減商品を開発」

鈴木氏は、数千社の取引先があり、共にやっていかなければと感じている。次世代のために13年からSCOPE3開示に取り組んでいる。

GHG排出が少ない商品を求める目的での来客はないものの、アップサイクルや、規格外の農産品使用、国産原料などを訴求していきたい。取引先1社1社と密接に取り組み、地産地消などにより輸送でのGHG削減にも寄与できる。サプライチェーンの中で自社の先や手前を見据えていかなければSCOPE3は成り立たないと感じている。

Think Global Act Local

廣田達樹氏

Terrascope Japan代表廣田達樹氏は全体のまとめを兼ねてクロージングのあいさつをした。バラク・オバマ氏の「私たちは気候変動の影響を感じる最初の世代であり、気候変動に対して何かできる最後の世代です」という言葉を引用し、昨今の異常気象は、食農においても収穫量、漁獲量、食品の品質などビジネスに直結していると述べた。炭素を減らす緩和策と高温耐性の品種開発などの適応策の2つがあり、企業がアクションしていく必要があり、さまざまな課題に対して総合的な対応を迫られている。

廣田氏は自身の家庭の脱炭素状況を示し、脱炭素はダイエットと同じで現状を理解してアクションを起こしていくことが重要だとし、各々の「小さい活動が大きな変化をもたらす。一緒に脱炭素のダイエットを進めて行ければ」と締めくくった。


Terrascope Japan株式会社

https://www.terrascope.com/ja/

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