〈GI産品でつなぐ、地域と未来〉伝統と革新が交わる制度の進化 登録で地域の宝の魅力や強みを見える化【PR】
地理的表示(GI)保護制度とは、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律に基づき、その土地の気候や風土と結びついた品質や歴史をもつ産品の名称を国が登録し保護する制度です。世界100ヵ国以上にこの制度があり、日本では2025年1月30日現在、全国で154の農林水産物や食品等が登録されています。(農林水産省輸出・国際局知的財産課)

GI登録された産品の名称(地理的表示)は、地域共有の財産として保護され、他者による利益の横取り(フリーライド)を防げることから、他産品との差別化、ブランド価値の向上に役立ちます。また模倣品や地理的表示の不正使用を国が取り締まるため、GI産品の生産者団体は、負担なく、自らのブランド価値を守ることができます。
GI登録時には、産品の名称とともに生産地や品質等の基準を登録します。この基準を満たす産品のみがGI産品として地理的表示を使用することが可能となるため、消費者は品質が保証された真正な産品を安心して購入することができます。
GI産品は、GIマークを使用することができます。マークは、GI産品そのものに限らず、GI産品を主な原料として使用した加工品、包装、広告、レストランのメニュー、チラシなどにも幅広く使用することができます。
GIマークを使用することで、一目で地域ならではの魅力や歴史のある産品であることが分かり、消費者にとって商品購入時の目安となります。販売する企業にとってもこだわりや地産地消をひと目でアピールすることができ商品の付加価値が高まるため、最近では、お歳暮のカタログやお土産品、ふるさと納税の商品などさまざまな産品にGIマークが付けられています。また、2022年11月に運用が変更され、GI産品を原材料とした加工食品にマークが使用しやすくなって以降、GI産品を原材料とした、スイーツや外食のメニュー、飲料やスナック、あめなどをはじめとした加工品の商品開発が進み、GIマークの活用が広がっています。
またGI産品の地域ならではの伝統や革新の「ものがたり」が、インバウンドも含めた観光客に産品の良さを理解してもらいやすいとして、GI産品を活用した収穫体験やガストロノミーツーリズムにより、観光ツアーの付加価値向上を図る取り組みも見られます。
GI保護制度がスタートしてまもなく10年、GI登録によって、地域の宝の魅力や強みを見える化し、ビジネスの拡大・地域活力の向上を図る輪が広がりつつあります。

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三輪素麺、ブランド価値向上を実感 地域一体の副次的効果 行政の支援でイベント増加
三輪素麺は16年3月29日に地理的表示(GI)保護制度登録第12号となった。登録生産者団体は奈良県三輪素麺工業協同組合と奈良県三輪素麺販売協議会となっている。

池側義嗣同組合前理事長の時代に「これからは製販・地域が一丸になる必要がある」と、三輪素麺の価値向上のため、両組織が本格的に手を携え活動を開始。その第一歩として同制度への登録申請を行った。 申請に当たっては両組織が綿密な連携をする傍ら、奈良県や同県桜井市など行政組織、地元の南都銀行三輪支店(現・桜井支店に統合)が支援に乗り出し、産官金のトライアングルが実現。「三輪素麺の深い歴史」といったストロングポイントをあらためて認識し、書類の作成に当たった。GI取得後は、池側前理事長や池田利一同協議会会長が同制度の登録を目指す団体などに「取得に向けての講演」を行うなどし、同制度の普及にも助力した。

池田会長は当時を振り返り、「奈良県主催のイベントに参加した時、同制度への登録は業界の一致団結が不可欠と感じた。今となってみれば、同制度への登録の動きが一つのきっかけとなり、現在の三輪素麺に至っている」と話す。
GIの効果として、ブランド価値の向上が挙げられる。それまでにも同組合が04年に作成した「三輪そうめんについての製造自主基準」などで品質の向上に努めてきた。とはいえ、これは組合の生産した商品に限ったものだったため、三輪素麺全体のブランド価値を担保するには至らなかった。しかし、GIであれば、三輪素麺の登録基準を満たす商品すべてにGI産品であることを証するGIマークを表示可能。原材料から製造方法まで厳しい規格を守って製造された商品であることを示すことができる。同時に地域に一体感が芽生え、「より良いそうめんを作ろう」との意識も共有された。小西理事長は「今後も高い品質の商品を供給できるよう努めたい」とする。
また、地域が一丸となったことで、副次的な成果も生まれた。その一つとして、行政が桜井市の名産として三輪素麺をこれまで以上にフォローアップ。さまざまな支援を今でも行っている。代表的なものは、16年7月30・31日のそうめん需要の最盛期にグランフロント大阪うめきた広場(大阪市北区)で開催された「三輪そうめん in グランフロント大阪」だ。主催は、三輪素麺の新たな需要とブランドを生かすために同組合と同協議会、南都銀行が結成した三輪素麺振興会で、行政の側も協力した。試食では呼び掛けを始めると同時に定員数に達するほどの好評ぶりだったという。

池田会長は当時の盛況に触れ、「夏休み期間かつ大阪・梅田の一等地でのイベントということもあり、想像をはるかに超える多くの人に三輪素麺をPRすることができた。会場を盛り上げるため奈良県の『せんとくん』や桜井市の『ひみこちゃん』も応援に駆け付けてくれ、初日には松井正剛桜井市長が飛び入りで来場された。サンプリングを手伝っていただく中、『市長! 市長! その線を出たら駄目です!』とスタッフに注意されるほど力を込めてくださり、会場が大変朗らかな空気になったのを今でも覚えている」と懐かしんだ。
同イベント以降も数多くの行事を協力し行っており、この2月には桜井市市役所庁舎前(奈良県桜井市)で桜井市内のおいしいグルメな飲食店30店舗以上が集合するイベント「第6回 桜井市場(いちば)~んグルメフェス」で、三輪素麺をつかった「三輪にゅうめん」を制限時間内にどれだけたくさん食べられるかを競う競技「わんこnewめんカップ2025」を開催。多くの人が参加し、こちらも活況を呈した。
ほかにも、同組合が桜井市商工会の三輪にゅうめん推進委員会と協力し、冊子「三輪そうめんの里 奈良桜井 にゅうめんマップ」を作成している。桜井市でにゅうめんを提供する多くの飲食店を紹介しており、現在第3弾までを発行。掲載店舗数も22店、34店、39店と回を重ねるごとに着実に増えており、メニューもオーソドックスなものから洋風にアレンジしたものなど、豊富な内容となっている。持ち歩きに便利な冊子サイズである点も利用者に喜ばれている。小西理事長は「今は地域の皆が仲間となり、一方通行ではない相互の利益となる取り組みを行えている。確実に三輪素麺の可能性を引き出せている」と感想を述べた。
同制度への今後について、「一般消費者への知名度拡大」に期待が寄せられる。池田会長は「一般消費者の認知度が高まると、GIマークの魅力や効果がさらに高まり、私たちもより活用しやすくなる。残念ながらこの点は、私たちだけが頑張っても難しいところがある」とする。また、横のつながりにも着目。同マークの産品同士でのコラボも有効な手の一つだ。そうめんであれば、野菜などとのコラボが魅力的という。
農林水産省 輸出・国際局知的財産課