BIOVIAユーザーレポート「キリン」
決め手はフレキシビリティ 研究データを集合知へ
クラウド版電子実験ノート、データサイエンスツールを導入【PR】

キリン中央研究所は、研究開発活動のエビデンスに求められる社内コンセンサスがこれまでより重要性を増してきていることを背景に、昨年10月、ダッソー・システムズの電子実験ノート「BIOVIA Notebook」とデータサイエンスツール「BIOVIA Pipeline Pilot」を導入した。決め手となったのは、幅広い研究分野にフレキシブルに対応できる点。検索機能等を活用し適切な実験データに迅速にアクセス可能となることで、個々のデータが集合知に近い形に進化する兆しを見せ始めたという。

矢島宏昭氏
キリンホールディングスR&D本部キリン中央研究所所長 矢島宏昭氏
キリンホールディングスR&D本部キリン中央研究所主査 篠原裕之氏

中長期的な基礎・応用研究を実施

——まず、キリン中央研究所の生い立ち、役割についてお話しください。

矢島 キリン中央研究所は基盤技術研究所と健康技術研究所という2つの研究所を統合して誕生しました。現在、当社のR&D本部には、主に食領域(酒類・飲料)の研究を行う飲料未来研究所、食からヘルスサイエンスにわたる領域の容器包装に関する研究を中心に行うパッケージイノベーション研究所、そして、ヘルスサイエンス領域の研究開発を行う当研究所があります。キリン中央研究所では主にシーズ創出を目的とした基礎及び応用研究を実施しています。

矢島宏昭氏
キリンホールディングスR&D本部キリン中央研究所所長
矢島宏昭氏

エビデンスと社内コンセンサスがより重要に

——デジタルソリューション導入の背景をお話しください。

矢島 15年に「機能性表示食品制度」が始まりました。この制度を活用した商品開発を行うためには、食品メーカーは表示する機能性に関して、販売前に安全性や機能性の根拠に関する情報などを消費者庁へ届け出ることが必要です。制度運用に当たっては研究の進め方やエビデンスの取得等について、社内コンセンサスを強化することが重要です。コンセンサス形成には実験データや実験ノートの効率的な管理や運用が必須で、鍵となるのは従来のアナログ管理からの脱却とデジタル化への移行でした。そこで、デジタル化を加速するソリューション導入に舵を切りました。研究公正に対する考え方やエビデンスの重要性については、研究員が一定の理解を示してくれていたため、ルールや業務プロセスを含め、どのように研究公正のレベルと研究スピードの両方を落とさずにアウトプットできるかを意識しながら、ソリューションの検討を始めました。

篠原裕之氏
キリンホールディングスR&D本部キリン中央研究所主査
篠原裕之氏

幅広い研究分野や将来的な要求へ対応

——電子実験ノート「BIOVIA Notebook」導入の決め手は何ですか?

篠原 最大の決め手となったのは幅広い研究分野や将来的な要求への対応が可能な点です。我々のような基礎研究に近い領域で行われる実験は多岐にわたります。例えば、同一所内で化学合成を用いた実験と発酵の実験が行われるケースもありますし、マテリアルズインフォマティクスとバイオインフォマティクスなどの分野を跨ぐケースもあります。こうした場合にも、「BIOVIA Notebook」のテンプレート作成やコラボレーション機能を使いながら、最初にしっかりとした実験記録のフォーマットを作る事前準備を行えば、その両方の研究者から受け入れてもらえる運用を実現できると感じました。また、今後どういった研究が行われるかも予想できないところはありますので、こうした将来の研究への適用が可能であることも良かったと思います。

矢島 即時性、完全性、検索性は「BIOVIA Notebook」に限らず必須であり、むしろ重要となってくるのがこうした幅広い研究分野や将来的な要求にいかにフレキシブルに対応できるかという点です。この点で「BIOVIA Notebook」が一番良かったです。

——新規の研究の他に、これまでの研究への適用についても検討されていますか?

篠原 今まさに行っているところです。例えば我々のレポーティングフォーマットに合わせられるような拡張機能を「BIOVIA Pipeline Pilot」で作っています。将来的には社内の他システムとの連携や、残っているマニュアル作業の自動化も進めて、社内のデータをより有効活用したいと考えています。AIの活用がバイオの分野で当たりまえになるような未来が到来するとすれば、実験に付随して生じる振れのような外的要因さえも記録されたデータが必要になるのではと考えており、そのためには日々の実験データを蓄積、構造化して、必要に応じて必要なときに必要な形で出力できることが大事だと考えています。「BIOVIA Notebook」や「BIOVIA Pipeline Pilot」によって、こうしたデータの集約作業を自動化できればと期待しております。

図1 電子実験ノート「BIOVIA Notebook」
図1 電子実験ノート「BIOVIA Notebook」

個々のデータが進化

——導入後、何か効果が現れたりしましたか?

篠原 私は紙の実験ノートの時代には、他人のノートを参照しようとしても、どこに自分の必要な情報があるかわからないということが多かったので、ほとんど見ていませんでした。それが、今はデータベースに保存され、検索すれば必要な実験データを参照できます。そうすると、他人の研究に関して「実験ノートにどう書いているのだろう」という関心が生まれるようになりました。従来は関係者間でのみ通用する書き方が主流だったのですが、他人のデータを見ることによって「他の人が、この領域ではこういう内容を、こういう形式で書いているということが分かるようになった。さらにそれがベースとなって、自分たちのデータを第三者に伝えるのには何をどう書いたらよいかを考えるようになった」という話を、研究員から聞いたことがあります。これは個々のデータを集合知にできるような形に進化し始めたと考えることができ、非常に良いことです。

図2 データサイエンスツール「BIOVIA Pipeline Pilot」
図2 データサイエンスツール「BIOVIA Pipeline Pilot」

導入ソリューションを最大限活用へ

——今後の課題や展望についてお話しください

篠原 これまで各実験機器はインターネットにはほとんど接続していませんでした。今の業務プロセスでは機器で得たデータは一度、イントラネットから電子実験ノートに反映させているのですが、これを機器から電子実験ノートに直接反映させるにはどうすればよいかを考えなければならないでしょう。合わせて研究所全体のデジタライゼーションをどう進めていくかも大きな課題です。また、電子実験ノート「BIOVIA Notebook」は昨年10月に使用を開始した後、約3ヵ月間PoC検証を実施しました。その結果が良好だったため、今年、範囲を全所員に拡大する予定です。

矢島 試してみても上手く行かないことの方が多いのが研究というものの特徴です。そこにめげずに研究に散り組んでいけるように、研究員が今回導入したソリューションを最大限に活用しながら、よりイノベーティブな頭脳活動や、研究員本来の業務に集中できる状況になっていけば有意義であるので、大いに期待しています。

ユーザーニーズに合わせるさまざまなオプションを用意

ダッソー・システムズの電子実験ノートの正式名称は「BIOVIA Notebook」、データサイエンスツールの正式名称は「BIOVIA Pipeline Pilot」という。

導入の際にはユーザーニーズに合わせて、従来のオンプレミスでの導入からクラウドベースのサブスクリプションまでさまざまなオプションを用意している。オンプレミスでの導入の場合は、手早く簡単に作業できる標準的な「インストール・パッケージ」か、低コストで迅速に導入できる「リモート・インストール・オプション」のどちらか選ぶことができる。

クラウドで利用する場合に必要なのはインターネット接続と利用を開始するためのデスクトップコンピューターだけ。オンプレミスで導入する場合のデータベース・オプションは、Oracle DatabaseとMicrosoft SQL Serverを用意している。


「持続可能なイノベーション」を提唱
ダッソー・システムズ

ダッソー・システムズは3DEXPERIENCEカンパニーとして、人々の進歩を促す役割を担います。同社は持続可能なイノベーションの実現に向けて、企業や人々が利用する3Dのバーチャルコラボレーション環境を提供しています。同社の顧客は、患者、市民あるいは消費者のために世界の持続可能性を高めるべく、3DEXPERIENCEプラットフォームとアプリケーションを使って現実世界のバーチャルツイン・エクスペリエンスを生み出し、さらなるイノベーション、学び、生産活動を追求しています。ダッソー・システムズ・グループは150ヵ国以上、あらゆる規模、業種の30万社以上の顧客に価値を提供しています。 詳細な情報はホームページ 日本語 https://www.3ds.com/ja 英語 https://www.3ds.comでご覧いただけます。

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ダッソー・システムズ株式会社 マーケティング
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