北海道情報大学がSIPに参加し「すこやか健康調査」を実施、終了後のデータ利活用を期待【PR】

北海道情報大学は、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)[スマートバイオ産業・農業基盤技術]」の試験研究で、「食を通じた健康システムの確立による健康寿命の延伸への貢献(平成30~令和4年度、管理法人:生研支援センター)」の中で、同試験研究を実施する「食によるヘルスケア産業創出コンソーシアム」に同大学健康情報科学研究センターが参加し、「すこやか健康調査」を実施した。北海道情報大学と国の研究機関や民間企業が共同で実施した取り組みで、健常人1000人を対象に、身体状況、食習慣などの調査、運動・睡眠計測や糞便メタゲノム解析を実施し、軽度不調の指標と、食品・食材の健康増進効果を見出した。また、SIPによる研究成果や取得したデータベースなどを社会実装するための橋渡しを行う機関としてセルフケアフード協議会(https://scfc.or.jp/)が設立された。
今回の試験研究で取得した多くのデータは、後日、NBDCを通じて公開される予定。

北海道情報大学とは

1989年、江別市に開学した。北海道の大自然が保存される原始の森「野幌森林公園」に隣接する緑豊かな環境で「教育と知識と情報」「食と健康と情報」「宇宙と環境と情報」の3つの教育・研究方針を軸に情報のプロフェッショナル人材を育成している。

健康情報科学研究センターとは

北海道情報大学内に15年ほど前に設立、医師、看護師、管理栄養士などで構成され、食品の機能性の評価を行うことができる「食の臨床試験システム」を構築して活動している。将来的な疾病の予防に生かせる高付加価値や機能性のある食品づくりにおいて「食品の安全性と機能性についての科学的根拠」を実証することができるシステムだ。

「高付加価値」「機能性表示」商品を開発するため、食品メーカー、製薬会社、研究機関などから、特定の成分にどのような機能があるか根拠を提示してほしいといった依頼に応じ、同研究センターが試験を実施している。

実際に人に食べてもらう「ヒト介入試験」では、研究対象の食品に含まれる栄養素や素材を、選出された人々に一定期間食べてもらい企業が想定した機能が実際に現れたかなどを調査している。

特定の品種の野菜を提供し調理方法と1日摂取量を指定する方法、カプセル入りの粉末素材を服用してもらう方法、素材がわからないように加工した食品を食べてもらう方法など食品や栄養素によって調査方法は異なる。

同研究センターには全国から調査依頼が入る。特定の素材や成分を科学的根拠に基づいて評価し、証明するためには「ヒト介入試験」が必要不可欠だが、そのためのコストと人材の負担が大きく、特に中小企業が独自で取り組むのは難しかったが、北海道情報大学は他に類を見ない地域発信型モデル「江別モデル」を構築した。

江別モデルとは

江別市、北海道情報大学、地域住民ボランティア、医療機関、臨床検査センターなどが連携して臨床試験の計画、実施、データ解析をワンストップで行うことができる食の臨床試験システム。

研究側には、地域住民ボランティアが被験者として臨床試験に継続的に協力するため、質の高い試験を行うことができるというメリットがある。一方、被験者となる地域住民ボランティアには自身の健康がチェックでき健康増進につながるというメリットがある。

ヒト介入試験での科学的証明を低コストで効果的に実施することが可能となっている。

食の臨床試験を行う研究センターは、2018(平成30)年から2022(令和4)年までの5年間、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」に参加した。

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)とは

内閣府の総合科学技術・イノベーション会議を中心に、社会的課題・経済再生に寄与する課題に取り組み、科学技術イノベーションを実現するために創設された国家プロジェクト。

取り組むべきミッション(課題)を設定し、各ミッションについて産学官から幅広く研究開発テーマのアイディアを集めて、技術面・事業面のインパクトを評価し、省庁連携で取り組むべきテーマを見極めて計画や体制を具体化した。

府省、従来の業界の枠や分野にとらわれることなく連携することができた。

これまでの成果として「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」「自動運転(システムとサービスの拡張)」などがある。

各課題についてプログラムディレクターを選定し、研究、実施に向けた大学、国立研究開発法人、企業などでコンソーシアムを形成してそれぞれが活動する。

SIPへの参加

北海道情報大学健康情報科学研究センターは、2018年に食によるヘルスケア産業創出コンソーシアムに参加した。研究代表機関は、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構。

SIPでの取り組みは、「食を通じた健康システムの確立による健康寿命の延伸への貢献」。超高齢化社会を迎えている日本は、労働力が減少する中、質の悪い睡眠、ストレス、腸内環境の乱れ、食生活の乱れから引き起こされる軽度不調(生産性低下を招く心身不調)が社会問題となっている。この問題を解決するため、研究課題では日本人に特徴的な「食・腸内マイクロバイオーム・健康情報統合データベース構築に向けた網羅的研究調査(すこやか健康調査)」を行うことで、 体調評価と改善に関わるメカニズムの解明と高付加価値な機能性農産物、食品の創造を目指している。また、食を通じた国民の健康寿命延伸に寄与し、生産性向上に貢献する。

同調査では一般の健康診断のほか腸内細菌の種類や割合(腸内フローラ)、睡眠の質、食事などの得られたデータを食と健康との関係性の解明などを目的とした研究に使用した。

北海道・東京850人、京都50人、長崎50人、宮崎50人の健常人を対象に調査しデータを収集した。体調、生活習慣、身体的要素(腸内細菌など)、属性(遺伝子、性別など)の系列に分けて研究を行い、その調査結果から軽度不調の指標と、特定の食品のもつ健康増進効果を見出す活動を行った。また、すこやか健康調査で得られたデータを基に複数の食材・食品を選定し、ストレスや不眠など軽度不調の改善につながる効果を評価するため、ヒト介入試験を実施。北海道情報大学が数多く取り組んできた食の臨床試験のノウハウが生かされ、計24種の食材・食品について臨床試験を実施した結果、一例として北海道生まれの紫色のジャガイモ「シャドークイーン」についてはストレスの緩和に寄与する効果が確認され、既に論文として発表されている(Nutrients, 2022, 14:2446)。

西平順 北海道情報大学学長ごあいさつ

SIPプロジェクトは、本学がこれまで行ってきた食の臨床試験「江別モデル」の強みを生かせる大規模な「食と健康」の戦略的プログラムです。健康情報科学研究センターのこれまでの知識と技術を生かすことができました。国立研究機関や複数の大学、また多くの食品関連企業と連携したこの壮大な経験は我が国における食研究の技術の進展と人材育成の強化につながったと感じています。引き続き、2022年春に設立されたセルフケアフード協議会と協働することにより、本プロジェクトの貴重な経験がさらに深化し、「食による健康増進イノベーション」を実現できるものと確信しています。

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